【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:ニキビ/皮膚感染症
ゼビアックス(一般名:オゼノキサシン)は、赤ニキビ・黄ニキビ(化膿性炎症を伴うざ瘡)や表在性皮膚感染症の治療に用いるキノロン系の外用抗菌薬です。2016年のローション発売以来、皮膚科で広く処方されてきた塗り薬で、「1日1回塗るだけ」というシンプルな使い方と、耐性菌が生まれにくい特性が支持される理由です。
実はゼビアックスの最大の特徴は、細菌のDNA複製にかかわる2種類の酵素を同時にブロックする”二重鍵ロック”方式にあります。このユニークな作用機序が従来の外用抗菌薬にはない高い殺菌力と低耐性化率を実現しています。本記事では、その仕組みから剤形の選び方、使い方、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. ゼビアックス(オゼノキサシン)とは
ゼビアックス(一般名:オゼノキサシン)は、キノロン系に分類される外用合成抗菌薬です。マルホ株式会社が製造販売しており、富山化学工業株式会社が創製した国産発のキノロン系外用抗菌薬です。細菌を直接殺菌する「殺菌的」な作用を持ち、アクネ菌(Cutibacterium acnes)やブドウ球菌属に強い抗菌活性を示します。
皮膚科領域での主な適応疾患は次のとおりです。
- 化膿性炎症を伴うざ瘡(赤ニキビ・黄ニキビ)
- 毛包炎・毛瘡などの表在性皮膚感染症
- 伝染性膿痂疹(とびひ)を含む表在性皮膚感染症
「ゼビアックス(Zebiax)」という名称は、有効成分 Ozenoxacin(オゼノキサシン)のキノロン骨格に由来するブランド名です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | ゼビアックスローション2% / ゼビアックス油性クリーム2% |
| 一般名 | オゼノキサシン |
| 製造販売 | マルホ株式会社(創製:富山化学工業株式会社) |
| 分類 | キノロン系外用抗菌薬 |
| 剤形 | ローション剤(無色〜黄色澄明) / クリーム剤(白色〜淡黄白色) |
| 発売年 | ローション:2016年1月 / 油性クリーム:2021年6月 |
| 後発品 | なし(2026年5月時点) |
2. ゼビアックスの特徴
ゼビアックスの最大の特徴は、「2つのDNA複製酵素を同時に阻害する」という二重ロック方式の殺菌機構です。これにより、既存の外用抗菌薬よりも耐性菌が生まれにくく、かつ強力な殺菌効果を発揮します。
●二重ロック方式の作用機序
オゼノキサシンは、細菌が増殖するために欠かせないDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVという2種類の酵素の働きを同時にブロックします。いわば、細菌の”設計図コピー機”を2方向から同時に故障させるイメージです。どちらか一方の酵素だけに変異が起きても殺菌効果が維持されるため、耐性菌の発現率が極めて低く(自然耐性菌出現頻度:10⁻⁸未満)、他のキノロン系薬と比べても際立った特長です。
●1日1回塗布で続けやすい
他のニキビ治療用外用抗菌薬(アクアチム・ダラシンT)が1日2回の塗布を要するのに対し、ゼビアックスは1日1回のみ。洗顔後の朝または夜のケアにそのまま組み込めるシンプルさが、コンプライアンス(治療継続率)を高めます。
●ローションと油性クリームの2剤形
| 剤形 | 特徴 | こんな方・シーンに |
|---|---|---|
| ローション2% | 適度な粘性で垂れにくい、サラッとした使用感 | 背中・胸など広範囲、べたつきが気になる方、夏場 |
| 油性クリーム2% | しっとりとした軟膏様の使用感、アルコール無配合 | 乾燥肌・敏感肌、顔の局所塗布、冬場 |
どちらの剤形も有効成分・濃度・殺菌効果はまったく同一です。皮膚への浸透性(生物学的同等性)も確認されています。
●高い臨床有効率
添付文書の臨床試験データによれば、伝染性膿痂疹(とびひ)患者への7日間塗布で有効率97.6%、尋常性ざ瘡への12週間塗布では既存薬(ナジフロキサシン1日2回)と同等の炎症性皮疹数の改善が示されています。
●ゲンタマイシンなど従来薬への耐性菌にも有効
既存外用抗菌薬に耐性を示すMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を含むブドウ球菌属にも抗菌活性を持つため、難治性の皮膚感染症でも選択されることがあります。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
ゼビアックスの添付文書上の適応症は以下のとおりです。
- ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの) =炎症性ニキビ(赤ニキビ・黄ニキビ)
- 表在性皮膚感染症(毛包炎、毛瘡、伝染性膿痂疹〈とびひ〉など)
⚠️ 結節・嚢腫には他の適切な治療を行うこと(添付文書注意事項)。白ニキビ・黒ニキビ(非炎症性)・ニキビ跡への使用は適応外です。
使用方法
3つの重要ポイント
- 1日1回、適量を患部のみに塗布する:ざ瘡の場合は必ず洗顔後に塗布します。
- 必要最小限の範囲・期間にとどめる:表在性皮膚感染症は1週間、ざ瘡は4週間で効果を評価し、改善がなければ中止を検討します(添付文書)。ざ瘡の炎症性皮疹が消失したら継続しないこと。
- 他のニキビ外用薬と同時重ね塗りする時は注意が必要:特に過酸化ベンゾイル製剤(ベピオ・デュアックなど)と重ねると黄色く変色するので注意が必要です。朝夕で使い分けるか、医師の指示に従ってください。
正しい塗り方(ざ瘡の場合)
- 洗顔後、清潔なタオルで水分を押さえる
- 化粧水・乳液などのスキンケアをすませる
- 人差し指に適量(米粒大)を取り、炎症のある患部だけにやさしく重ね置きするように塗布する
- こすらず、そっと患部を覆うように馴染ませる
効果が出るまでの目安
- 皮膚感染症(とびひなど):3〜5日で症状改善が期待できます
- ざ瘡(赤ニキビ):2〜4週間かけて徐々に炎症が鎮まります。4週間後に効果を評価します
4. 使用する上の注意点
比較的安全性の高い外用薬ですが、以下の点に注意が必要です。
●主な副作用
- 皮膚乾燥、乾皮症
- 皮膚刺激感、皮膚そう痒、皮膚ほてり
- 鱗屑・落屑(皮むけ)
- 紅斑
- 血中ビリルビン増加(臨床試験での発現頻度:0.5%程度)
皮膚の乾燥・刺激感が最も多い副作用であり、保湿ケアを並行して行うことが勧められます。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- ショック、アナフィラキシー(本剤またはキノロン系薬に過敏症歴がある場合は禁忌)
- 接触皮膚炎
使用中に強いかゆみ・発疹・腫れ・呼吸困難など過敏症状が現れた場合は、ただちに使用を中止し医療機関を受診してください。
●禁忌(使用できない方)
- 本剤の成分またはキノロン系薬に過敏症の既往歴がある方
●要相談の方・使用上の注意
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方:動物実験での催奇形性は認められていないが、ヒトでの安全性は確立されていないため、原則使用しないことが望ましい
- 授乳中の方:ラットでの乳汁移行が確認されているため、継続か中止かを医師と相談
- ゼビアックスローション・13歳未満の小児:臨床試験データなし(ゼビアックス油性クリームは1歳以上でのとびひ治療実績あり)
- 低出生体重児・新生児・乳児:油性クリームの安全性データなし
●日常生活での注意
- 眼への使用は禁忌:誤って眼に入った場合はすみやかに水で洗い流す
- 過酸化ベンゾイル製剤(ベピオ、デュアック、エピデュオ等)との同時重ね塗りは変色の原因になるため、使用時間をずらす
- スクラブ入り洗顔料やピーリング化粧品との併用は刺激が強くなる場合があるため控える
- 衣服・タオル・枕カバーへの着色に注意(ローションは特に注意)
- 直射日光・高温を避け、室温保存(有効期間36か月)
- 市販薬はなし。必ず医師の処方が必要
5. 薬価と費用
2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づく薬価は以下のとおりです。
ゼビアックスローション2%:51.4円/g
ゼビアックス油性クリーム2%:51.4円/g
ニキビ治療では10〜15gのチューブが処方されることが多く、以下は1本(10g)あたりの目安です。
| 製品名 | 薬価(1g) | 10g(1本)あたりの薬価 | 3割負担の自己負担額(目安) |
|---|---|---|---|
| ゼビアックスローション2%(先発品) | 51.4円 | 514円 | 約155円 |
| ゼビアックス油性クリーム2%(先発品) | 51.4円 | 514円 | 約155円 |
| 製品名 | 薬価(1g) | 15g(1本)あたりの薬価 | 3割負担の自己負担額(目安) |
|---|---|---|---|
| ゼビアックスローション2%(先発品) | 51.4円 | 771円 | 約232円 |
| ゼビアックス油性クリーム2%(先発品) | 51.4円 | 771円 | 約232円 |
※2026年5月時点でゼビアックスの後発品(ジェネリック)は発売されていません。
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づく計算値。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: ゼビアックスはどれくらいで効きますか?
A1: 皮膚感染症(とびひ・毛包炎など)には3〜5日程度で改善を実感することが多いです。ニキビ(赤ニキビ・黄ニキビ)への効果は2〜4週間かけて徐々に現れます。添付文書では4週間で効果を評価し、改善がない場合は使用を中止するよう定められています。
Q2: ローションと油性クリーム、どちらを選べばよいですか?
A2: 効果・殺菌力は全く同じです。べたつきが気になる方・背中や胸など広範囲に塗りたい方はローション、乾燥肌・敏感肌の方や顔の局所使用にはアルコール無配合の油性クリームが向いています。どちらが合っているか不安な場合は皮膚科医にご相談ください。
Q3: ベピオ(過酸化ベンゾイル)やディフェリン(アダパレン)と一緒に使えますか?
A3: アダパレン(ディフェリン)との併用は問題ありません。ただし過酸化ベンゾイル配合製剤(ベピオ・デュアック・エピデュオ等)と同時に重ね塗りすると黄色に変色することがあります。使用する場合は朝・夜で使い分けるなど、医師の指示に従いください。
Q4: 白ニキビや黒ニキビにも効きますか?
A4: いいえ。ゼビアックスは炎症を伴う赤ニキビ・黄ニキビにのみ有効な外用抗菌薬です。炎症のない白ニキビ・黒ニキビ(コメド)やニキビ跡には効果がありません。コメドにはアダパレンや過酸化ベンゾイルなどが適しています。
Q5: 市販されていますか?
A5: ゼビアックスは医療用医薬品であり、医師の処方箋なしに購入することはできません。同成分(オゼノキサシン)の市販薬も2026年5月時点では販売されていません。
Q6: 妊娠中・授乳中でも使えますか?
A6: 妊娠中の安全性はヒトでは確立されていないため、原則として使用しないことが望ましいとされています。授乳中の方は乳汁移行の可能性があるため、治療の必要性とリスクを医師と相談して判断します。
Q7: 塗り忘れた場合はどうすればよいですか?
A7: 気づいた時点でその日の1回分を塗布してください。ただし翌日の分を2回分まとめて塗ることはしないでください。1日1回の外用薬ですので、次の日からは通常どおり継続します。
7. 皮膚科専門医解説 ゼビアックスの要点まとめ
- 適応:赤ニキビ・黄ニキビ(化膿性炎症を伴うざ瘡)・とびひ・毛包炎などの表在性皮膚感染症
- 作用:DNAジャイレースとトポイソメラーゼIVを二重阻害する殺菌性の外用抗菌薬。耐性菌が極めて出にくい
- 塗り方:1日1回、洗顔後に炎症のある患部のみに塗布。ざ瘡は最長4週間で効果を評価
- 剤形:ローション(広範囲・べたつき嫌いな方向け)と油性クリーム(乾燥肌・アルコール刺激が気になる方向け)の2種類。効果は同等
- 注意点:過酸化ベンゾイル製剤との同時重ね塗りで黄色変色。白ニキビ・コメド・ニキビ跡には効果なし。長期漫然使用は耐性菌リスクあり
- 後発品:2026年5月時点でジェネリックなし(先発品のみ)
- 費用:10g(1本)あたり約155円(3割負担の目安)
ゼビアックスは「1日1回で続けやすく、耐性菌リスクが低い」という点でニキビ外用抗菌薬の中でも使い勝手に優れた選択肢です。ただし、赤ニキビ・黄ニキビが消失したら継続を避け、コメド治療薬(アダパレン・過酸化ベンゾイルなど)と組み合わせた包括的な治療計画が再発防止のカギになります。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適なニキビ・皮膚感染症治療をご提案しています。 「赤ニキビがなかなか治らない」「とびひを繰り返す」「どの塗り薬を選べばよいかわからない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
- 日本皮膚科学会. 尋常性ざ瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(3):407-450.
▶ 国内ニキビ治療の標準指針。炎症性皮疹(赤ニキビ)に対するオゼノキサシン外用は推奨度A(強く推奨)と位置づけられており、ゼビアックスの臨床的有用性の根拠となっている。 - マルホ株式会社. ゼビアックスローション2%・油性クリーム2% 電子添付文書(2025年5月改訂版).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌・副作用(皮膚乾燥・接触皮膚炎等)・臨床試験成績(とびひ有効率97.6%、ざ瘡12週比較試験)が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要根拠。 - Nakase K, et al. In vitro activity of ozenoxacin against clinical isolates of Staphylococcus aureus and Cutibacterium acnes from Japanese patients with skin infections. J Dermatol 2019;46(8):705-710. DOI:10.1111/1346-8138.14994
▶ 日本の皮膚感染症患者由来の黄色ブドウ球菌・アクネ菌に対するオゼノキサシンのin vitro抗菌活性を検討した研究。既存外用抗菌薬と比較して高い抗菌活性と低い耐性菌発現率が示された。
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