「脂漏」とは、皮脂の分泌が過剰になった状態のことをいいます。
脂漏性皮膚炎は、頭や鼻の周囲、眉間など皮脂の多い場所で慢性に経過する皮膚炎です。
中年男性や生後間もない乳幼児に多く見られますが、10代~20代の方でも脂漏性湿疹が発生することがあります。
頭皮のかゆみやフケなどにお困りの方はお気軽にご相談ください。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因については、まだ分かっていないことが多いのですが、
皮膚の常在菌である、マラセチアというカビ(真菌)が関係していると言われています。
しかし、マラセチア自体が炎症を引き起こしているというわけでなく、マラセチアが皮膚を分解することで産生された脂肪酸が炎症を引き起こすと考えらえています。
また、加齢やストレス、生活習慣などの理由によって常在菌のバランスが変化することも発症の一因と考えられています。
体質や肌質、生活習慣、食事内容、年齢など、様々な要因が組み合わさって発症します。
一度発症すると、長引くことが多く、改善後も再発することがよくあります。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎は主に、30~70歳の男性、生後3ヶ月未満の乳児によくみられます。
乳児の場合は、母親から受け継いだホルモンによる影響で、生後数ヶ月は皮脂の分泌が盛んになることが原因と言われています。
成人
30歳~70歳の男性に多くみられる
できやすい部位
頭や髪の生え際、眉間、眉毛、鼻の周囲、耳の中や後ろ、胸、腋、背中などの皮脂分泌が盛んな箇所
症状
赤みやかゆみ、頭にフケを伴うこともある
乳児
生後3ヶ月以内の乳児に多くみられる
できやすい部位
頭やおでこ
症状
赤いブツブツや黄色いカサブタができる
赤くなりカサカサする
脂漏性皮膚炎の治療
カビ(真菌)抑える効果のある抗真菌剤と炎症を抑える効果のあるステロイドの塗り薬を使って治療を行います。
乳児の場合は、生後6ヵ月~1歳までに自然に治ることが多いため、症状が軽い場合には治療を行わない場合もあります。
症状が強い場合には、大人と同じように抗真菌剤や弱めのステロイドを外用することがあります。
ケトコナゾールクリームなどの抗真菌剤外用薬
マラセチア菌の働きを弱めます。塗り始めてから効果を感じられるまでに多少の時間がかかることが多いですが、毎日塗ってもステロイドのような副作用はありません。
症状が落ち着いた後も続けておくことで再発予防になります。
ステロイド外用薬
かゆみや赤みなど、皮膚炎の症状が強い場合に短期間だけ使用します。
漫然と使用すると、ニキビや毛穴の炎症、赤ら顔などの副作用が出る場合がありますので、注意が必要です。
内服薬
状況に応じて、内服薬を併用することがあります。
<かゆみが強い場合>抗アレルギー薬を併用することがあります。
<ビタミンの欠乏が影響している場合>皮脂分泌をコントロールするために、ビタミンB2、B6製剤を処方することがあります。
日常生活の注意点
清潔を保ちながら必要以上に洗いすぎない
毎日入浴し、低刺激性の石けんやシャンプーを使って、優しく洗い、清潔を保ちましょう。ただし、必要以上に洗い過ぎると、皮脂が取れすぎたり、乾燥によってかさかさが進行する場合があります。
よほど汚れたという場合ではない限り、洗顔は1日に朝晩の2回、洗髪は1日1回で十分です。
洗髪後の頭皮は濡れたままにせず、ドライヤーを使用して、根元から頭皮を素早く乾燥させてください。
市販の抗真菌剤含有シャンプーが効果的なこともあります。
また、乳幼児の頭にこびりついてしまったかさぶたは、オイルでふやかしてからシャンプーで洗うと落ちやすくなります。
生活習慣を意識する
喫煙や飲酒、高カロリー食や高脂肪色は控えて、バランスのとれた食事を心がけましょう。
特に、ビタミンB群を多く含む食物(レバー、しじみ、牛乳、卵、ほうれん草など)を積極的にとるようにしましょう。
また、ストレスや過労は悪化の原因になることがあります。規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠を確保するようにしましょう。
文責:みのお花ふさ皮ふ科 院長 角村 由紀子(皮膚科専門医)