ヘルペスは小さな水ぶくれが集まり、急速に広がる炎症性の皮膚の病気です。
単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することで起こります。
全身のどこにでも出現する可能性がありますが、主に口唇ヘルペス、性器ヘルペス、角膜ヘルペスが挙げらえます。
特に頻度の多い口唇ヘルペスは唇やその周りにピリピリ、チクチクするような違和感や痒みを生じ、その後、軽い痛みを伴う水ぶくれができます。
ヘルペスの原因
単純ヘルペスウイルスの主な感染は接触感染です。
- ・症状が出ている人の水ぶくれ、唾液、涙液
- ・症状が出ている人のくしゃみや咳、飛沫
- ・ウイルスの付着したタオル、コップなどの物を介した間接的な感染
症状がでていない場合でも、唾液や精液等にウイルスが含まれることがあります。キスやほおづり、性行為で感染することもあります。
単純ヘルペスウイルスは一度感染すると、体の中の神経(神経節)に潜み生き続けます。元気な時は潜伏しているウイルスは免疫によって抑えられ症状はでません。発熱や紫外線、ストレス、疲労などによって免疫が低下すると、ウイルスが活動し神経を伝わって皮膚や唇に症状がでます。
初めて症状が出るときには、水ぶくれが多くできることがあります。再発の場合には水ぶくれは少なくなり、症状がでる範囲も狭くなります。症状の出る頻度は、数年に1回から1年に数回と様々です。
ヘルペスの症状
口唇ヘルペス
口唇ヘルペスは、4つの段階を経て2週間程度で治っていことが多いですが、初めての感染か再発なのか、体調などによっても程度は異なります。
前駆症状
ピリピリ・チクチク・ムズムズ感
水ぶくれが出現する前に皮膚に熱感・違和感・痒みなどがある
初期症状
赤く腫れる
自覚症状から半日程度で赤く腫れる
患部でウイルスの増殖が活発になる
2.3日後
水ぶくれができる
赤く腫れた上に水ぶくれができる
初感染では水ぶくれが大きく、再発を繰り返すと小さくなる
ウイルスがたくさん存在しているため水ぶくれが破れた患部にさわると感染する
回復期
かさぶたができる
患部がかさぶたになり治っていきます。
性器ヘルペス
水ぶくれだけでなく、赤いブツブツや皮膚がただれることもあります。
初感染の時は、歩行や排尿が困難になるほど強い痛みや発熱を伴うことがあります。
カポジ水痘発疹症
アトピー性皮膚炎や湿疹に単純ヘルペスウイルスが感染することで起こります。
0~5歳の乳幼児に多く発症します。大人のアトピー性皮膚炎の増加に伴い、大人での発症も見られます。
顔や上半身に多く、湿疹の上に水ぶくれが多発しやがてかさぶたになります。
突然の高熱と全身のリンパ節の腫れを伴うこともあり、眼に及ぶと角膜ヘルペスになることもあるので、注意が必要です。
大人は繰り返すことも多いので、アトピー性皮膚炎や湿疹の治療を適切に行うことが、予防のためにも大切です。
ヘルペスの治療
ウイルスの増殖を抑える、抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬や塗り薬、重症な時は点滴を使います。
抗ウイルス薬はウイルスを殺す作用や、神経節に潜んでいるウイルスを追い出す効果はなく、根本的な治療法は今のところありません。
症状が出始めるタイミングの早い時期に治療を始めることでウイルスの増殖を抑えることがで、治りも早くなります。
外用薬
外用薬は発症から5日以内に使用を開始する
アラセナ軟膏
1日1~4回、患部に塗布
アシクロビル軟膏
1日数回、患部に塗布
内服薬
内服薬は腎機能に応じて適宜減量が必要
バルトレックス
1日2回、1回1錠を5日間
ファムビル
1日3回、1回1錠を5日間
PIT(Patient Initiated Therapy)/保険適用
単純ヘルペスの再発の患者様にあらかじめ処方されたお薬を患者様の判断で服用を開始する治療法です。
再発の初期症状が出たらすぐに服用できるように、あらかじめお薬を処方します。※保険適用はファムシクロビルのみ
再発頻度が年に2回以上、再発の初期症状を正確に判断できる方が対象となります。ご相談ください。
【特徴】
すぐに服用ができる
通常5日間服用が2回の服用で治療が完結する
【服用方法】
1回目:初期症状が出てすぐ(6時間以内)に4錠内服
2回目:1回目の服用から12時間後を目安に4錠内服
再発抑制療法/保険適用
一定量の抗ウイルス薬を毎日内服することで、再発を抑える治療法。
※保険適用はバラシクロビルのみ再発頻度が年6回以上の性器ヘルペスに適応。
【服用方法】
バラシクロビルを1日1回(500㎎)、1年間継続して毎日服用します。
中止後に再発が2回見られた場合は、さらに継続するかを検討します。
抑制療法中に再発した場合
通常の治療法(1日2回、1回1錠を5日間)を行い、その後、1日1回に戻します。
日常生活での注意点
- ・口唇ヘルペスは、精神的・肉体的ストレスにより免疫が落ちている時に再発するので、バランスの取れた食事と十分な睡眠をとり、疲れやストレスを溜めないことが大切です。
- ・疲れている時や体調が良くない時は、強い紫外線を浴びるようなレジャーなどは控えましょう。
- ・水ぶくれにはウイルスが入っているので、触らないようにしましょう。水ぶくれに触れた指で眼やコンタクトを触ると、角膜ヘルペス(失明する危険性もあります)になることもあります。触れたら、石鹸を使ってしっかり手を洗いましょう。
- ・他の人にうつさないように、タオルやコップは共用しないようにしましょう。
- ・赤ちゃんとの接触はできるだけ避けましょう。免疫の働きが未発達なので、重い症状になることがあります。赤ちゃんのお世話をする時は、手を洗いましょう。
文責:みのお花ふさ皮ふ科 院長 角村 由紀子(皮膚科専門医)
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