乾癬

乾癬

乾癬

乾癬は皮膚の炎症として、毛細血管の拡張により赤い紅斑がみられ、ターンオーバーの異常によって皮膚の細胞が過剰に作られ、厚く盛り上がり銀白色のフケのような鱗屑がみられます。

免疫バランスの異常によって起こる病気であり、ほかの人にうつることはありません。

日本では、約1000人に4~5人の患者さんがおり、男女比は2:1で男性の方が多い傾向にあります。

乾癬の原因

乾癬の原因は完全には解明されていませんが、乾癬を発症しやすい素因を持つ人(遺伝的な要因)に、ストレスや感染症、生活習慣や食習慣などの発症要因(環境的な要因)が加わることで発症すると考えられています。

また、肥満、糖尿病、脂質異常症なども乾癬の発症リスクのひとつと考えられています。

乾癬の原因

乾癬の症状

皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織と呼ばれ、表皮はさらに角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層構造になっています。
基底層では常に新しい細胞が作られており、性質を変えながら角層へ押し上げられ、垢となってはがれ落ちていきます。
この過程を「ターンオーバー」といい、通常は28〜40日で繰り返されています。
しかし、乾癬の患者さんでは、ターンオーバーの周期が4〜5日と極端に速くなっているため、細胞が過剰に増殖し、皮膚は厚く盛り上がり鱗屑となってはがれ落ちていきます。

乾癬の症状

乾癬は、全身どこでも発症します。

外部からの圧によって新しい皮膚に乾癬の皮疹が現れることがあり肘や膝、ベルトで圧迫される腹部や、体圧のかかるおしりなどに乾癬の皮疹がよく見られます。このような外部からの圧によって乾癬の皮疹が現れることをケネブル現象といいます。

半数くらいの方は、多少のかゆみを感じることがあります。また、爪が先端から浮き上がり白く見える、爪の表面にポツポツとした凹凸ができたりと爪にも異常をきたすことがあります。

乾癬の症状別5つの分類

尋常性乾癬

  • ・感染の80%以上を占める
  • ・全身に数センチ大の鱗屑を伴う紅斑が出現
  • ・痒みの程度には個人差がある

滴状乾癬

  • ・風邪(特に扁桃腺炎)などの感染症がきっかけで発症
  • ・1㎝くらいの小さな水滴大の皮疹が全身に出現
  • ・小児や若者に多く、感染症が治まると収束する

関節症性乾癬

  • ・皮膚症状以外に強い関節痛を伴う
  • ・手足の関節、背骨、アキレス腱、足の裏などに痛みや腫れ、こわばりを感じる
  • ・関節症状が進行すると戻らなくなることがあるため、早期発見、早期治療が重要

乾癬性紅皮症

  • ・乾癬の治療が不十分、もしくは治療をしなかった場合に発症することがある
  • ・皮膚炎、感染症、薬剤などが誘引となる
  • ・乾癬の皮疹が全身の90%以上に広がった状態
  • ・発熱や倦怠感を伴う

膿疱性乾癬

  • ・遺伝子変異が関係している
  • ・乾癬の皮疹に黄色や白色の膿疱をもち、高熱や倦怠感を伴う
  • ・乾癬の中では重症で、日本では難病の一つに指定されている

乾癬の治療

根本的な治療はみつかっていません。そのため、治療は乾癬の症状があらわれないようにコントロールするために、皮膚の炎症による紅斑の抑制とターンオーバーの異常による鱗屑の抑制の2つからアプローチを行います。

乾癬の治療

外用療法

皮膚症状に対する基本的な治療として、塗り薬による外用療法を行います。関節症状には効果がないため、関節に痛みがある場合はご相談ください。

外用剤は症状の程度や効果に応じて選びます。

即効性のある配合薬やステロイド外用薬で症状を抑え、ステロイド外用薬の量を減らすために配合剤からビタミンD3外用薬のみに切り替えていきます。

軟膏やゲル、ローション、フォーム、シャンプー様外用剤などいろいろなタイプから使いやすいものを選んでいきましょう。

外用療法

ステロイド外用薬

炎症を抑えて、皮膚の炎症(特に紅斑)を改善します。比較的早く効果が得られますが、長期にわたる外用は皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張し赤くなるため注意が必要です。

活性型ビタミンD3外用薬

皮膚のターンオーバーを正常化し、厚くなった角質(鱗屑や肥厚)を元に戻す働きをします。ステロイド外用薬のような副作用がなく長期間使用しやすいですが、ステロイド外用薬と比較すると効果を感じられるまでに少し時間がかかります。

活性化ビタミンD3はカルシウム代謝に関係することから、規定量以上に外用するとカリウム濃度があがり、のどの渇き、脱力感、食欲不振などの副作用が起こることがあります。
特に、腎機能が低下している方やご高齢の方は注意が必要です。

ステロイドとビタミンD3の配合外用薬

ステロイドとビタミンD3の2つの成分を配合した塗り薬です。
1日1回の外用で良いことや、ステロイド外用薬、活性化ビタミンD3外用薬を単独で使うより効果は高いです。

内服治療

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

かゆくて掻いてしまうことで、皮疹が悪化してしまいます。かゆみを軽減し、炎症を抑えるために外用薬と併用することがあります。

ビタミンA誘導体(エトレチナート)

皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えるお薬です。
精子を作る機能に影響を与えることがあるため、内服中だけでなく内服中止後も男性は6ヶ月、女性は2年間の避妊が必要です。また、肝機能異常や中性脂肪が上昇する可能性があるため、定期的な血液検査が必要です。
<副作用>
唇の荒れ、手のひらや足の裏の皮膚がフケ状にはがれる

免疫抑制剤(シクロスポリン)

過剰な免疫の働きを抑えるお薬です。副作用が出る可能性があるため、血圧測定や血液検査が定期的に必要です。副作用のほとんどはお薬を中止することで、戻ります。
<副作用>
血圧上昇、腎機能障害、多毛、歯肉炎など

PDE4阻害薬(アプレミラスト)

免疫細胞の酵素の働きを抑えることで、免疫バランスの乱れを整えて炎症を抑えるお薬です。妊娠中は服用できません。
<副作用>
飲み始めの頃に、吐き気や下痢、頭痛などの副作用がでることがありますが、1ヶ月以内に収まることがほとんどです。

光線(紫外線)療法

紫外線のもつ、免疫の過剰な反応を抑える作用を利用して、皮疹に直接紫外線を照射する治療です。

紫外線の中でも、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)のみ効果があると言われています。

光線療法としてよく使用されるものは、全身に紫外線を照射できる「ナローバンドUVB療法」と皮疹のみに照射する「ターゲット型エキシマライト」です。

UVBに含まれる有害な波長を取り除いて、治療効果の高い波長だけを照射することができます。効果を上げるために、週1~2回以上通院する必要があります。

当院では「ターゲット型エキシマライト」の治療が可能です。塗り薬だけで改善しない場合は、この治療法も併用します。

UVAは光に対する感受性を高めるお薬を飲んだり塗ったりしてから照射する「PUVA療法」に用いられます。

<主な副作用>日焼け、色素沈着など

生物学製剤(注射)

外用や内服、紫外線療法で皮膚や関節症状の改善が認められない場合に使用します。

免疫細胞の情報伝達を行うタンパク質の働きを抑制することで、炎症を抑えます。

他の治療法と比較すると効果が高く、関節症状にも効果がありますが、開始前には様々な検査が必要です。

また、医療費も高額になります。

この治療を検討する場合は、近隣の総合病院や大学病院へご紹介させていただきます。

日常生活の注意点

  • ・肥満や糖尿病、脂質異常症などの病気は乾癬の悪化因子となります。これらの病気がある方はきちんと治療を行っていきましょう。
  • ・洋服や下着は、こすれにくくゆったりとしたデザインや、綿素材などを選ぶようにしましょう。
    特に、直接肌に触れる下着類は素材を確認してください。
  • ・風邪や虫歯など、菌やウイルスに感染することで乾癬が悪化することがあります。手洗いやうがいで予防しましょう。たばこは喉を痛めやすくなるため控えましょう。
  • ・辛い食事やお酒によってかゆみが増すことがありますので、控えるようにしてください。
  • ・入浴時は手や綿のやわらかいタオルを使用し、ゴシゴシとこすらないようにしましょう。

文責:みのお花ふさ皮ふ科 院長 角村 由紀子(皮膚科専門医)

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