アトピー性皮膚炎の治療において、ステロイド外用薬と並んで重要な役割を担うのが「プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)」です。
ステロイド特有の副作用を避けつつ、高い炎症抑制効果を発揮するこのお薬について、正しい使用方法や注意点を詳しく解説します。
1. プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)とは
プロトピック軟膏(一般名:タクロリムス水和物)は、世界で初めて開発された「カルシニューリン阻害薬」という分類の非ステロイド性外用薬です。
1999年に成人用、2003年に小児用が日本で承認され、現在ではアトピー性皮膚炎治療における「脱ステロイド」や「ステロイドとの併用療法」の大きな柱となっています。
【名称の由来】
「Protopic」は、Progressive Topical therapy(進歩した外用療法)を略したものです。従来のステロイドとは全く異なるアプローチで皮膚症状を改善する、次世代の薬としての期待が込められています。
2. プロトピック軟膏の特徴
プロトピック軟膏は、皮膚の中にある免疫細胞(Tリンパ球)の過剰な働きをピンポイントで抑え、炎症やかゆみを鎮めます。
- 基剤の種類: 本剤は「軟膏」タイプのみとなります。カサカサした部位にも適しています。
- 副作用が少ない: ステロイド外用薬で懸念される「皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)」や「毛細血管の拡張」といった副作用がほとんどありません。
- 顔・首に最適: 皮膚が薄く、ステロイドの副作用が出やすいデリケートな部位にも安心して使用できます。
- 濃度別の種類:
- 0.1%製剤: 主に16歳以上の成人用。
- 0.03%製剤: 2歳〜15歳の小児用(成人の敏感な部位に使用することもあります)。

3. プロトピック軟膏の使用方法、使う疾患
適応となる疾患
「アトピー性皮膚炎」が主な適応です。ステロイドで効果が不十分な場合や、副作用を避けたい場合に用いられます。
正しい使い方(用法・用量)
- 回数: 通常1日1〜2回塗布します。1日2回の場合は約12時間の間隔(朝の洗顔後と夜の入浴後など)をあけてください。
- 塗布量の上限: 1回あたりの最大量は5g(チューブ1本分)までです。
- 小児の上限: 年齢や体重により厳密に設定されています(2〜5歳は1g、6〜12歳は2〜4gなど)。必ず主治医の指示を守りましょう。
4. プロトピック軟膏を使用する上の注意点
専門医の指導のもと、以下の特有の性質を理解して使用することが治療成功の鍵です。
⚠️ 特有の刺激感について
使い始めの数日間、塗った部位に「ヒリヒリ感」「ほてり」「かゆみ」を感じることが非常に多い(成人の約8割)です。
しかし、これは皮膚が改善するにつれて通常1週間程度で自然に治まります。先に保湿剤(ヒルドイド等)を塗ることで刺激を和らげることが可能です。
- 紫外線への注意: 使用中は強い日光(海水浴や屋外スポーツなど)や日焼けランプ(マシン)を避けてください 。
- 塗ってはいけない部位: 粘膜(口・鼻の中)、じゅくじゅくした傷口、ニキビ・ヘルペス等の感染部位には使用できません。
- 妊娠中:主治医と相談の上、治療のメリットがリスクより大きいと判断された場合、にのみ使用します 。
- 授乳中:本剤投与中は授乳しないことが望ましい。母乳中へ移行することが報告されている。
5. プロトピック軟膏の薬価・費用目安
※2024年の薬価に基づきます。実際の請求額は再診料や処方料、調剤料等により変動します。
| 薬剤名 | 1gあたりの薬価 | 1本(5g)の費用(3割負担) |
|---|---|---|
| プロトピック軟膏0.1% | 58.4円 | 約88円 |
| プロトピック軟膏0.03%小児用 | 72.6円 | 約109円 |
6. よくあるご質問(FAQ)
Q1. プロトピック軟膏はステロイド剤ですか?
Q2. 塗るとヒリヒリしますが、使い続けて大丈夫ですか?
Q3. プロトピックを塗った後にお化粧はできますか?
Q4. 子供に大人用の0.1%を使ってもいいですか?
プロトピック軟膏の重要ポイントまとめ
- 非ステロイド剤: 皮膚が薄くなる等の副作用が少なく、顔などの使用に最適。
- 使用法: 1日1〜2回。1回の上限は5g。2歳以上から使用可能。
- 副作用への理解: 特有の刺激感は継続使用(約1週間)で軽減することが多い。
- 日常生活の注意: 強い紫外線を避け、粘膜やニキビ等の感染部位には塗らない。
本記事は日本皮膚科学会の診療ガイドラインおよび国際医学論文に基づき、
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士の花房崇明が監修しています。
参考文献
- Alomar A, Berth-Jones J, Bos JD, et al. The role of topical calcineurin inhibitors in atopic dermatitis. Br J Dermatol. 2004;151.
▶アトピー性皮膚炎における外用カルシニューリン阻害薬の役割 - Reitamo S, Ortonne JP, Sand C, et al. A multicentre, randomized, double-blind, controlled study of long-term treatment with 0.1% tacrolimus ointment in adults with moderate to severe atopic dermatitis. Br J Dermatol. 2005;152.
▶中等症から重症のアトピー性皮膚炎成人患者に対するタクロリムス軟膏0.1%の長期治療に関する多施設無作為化二重盲検比較試験 - Cury Martins J, Martins C, Aoki V, et al. Topical tacrolimus for atopic dermatitis. Cochrane Database Syst Rev. 2015;7:CD009864.
▶アトピー性皮膚炎に対する外用タクロリムスの有効性と安全性

