目次
クラリチン(一般名:ロラタジン)は、蕁麻疹(じんましん)・アレルギー性鼻炎・皮膚のかゆみの治療に用いられる第2世代抗ヒスタミン薬です。「眠くなりにくい」「1日1回で効く」という特徴で広く知られており、2002年の発売以来、皮膚科・耳鼻科・内科を問わず多くの医師が選択してきた実績ある薬剤です。
「じんましんで体中がかゆい」「花粉症の時期に眠くならない薬が欲しい」「子どもにも使える抗アレルギー薬を知りたい」——そんなお悩みに、皮膚科専門医の視点でわかりやすく解説します。
1. クラリチン(ロラタジン)とは
クラリチン(一般名:ロラタジン)は、持続性選択的H1受容体拮抗薬に分類される経口抗ヒスタミン薬です。バイエル薬品株式会社が製造販売しており、アレルギー反応の引き金となるヒスタミンの受容体(H1受容体)を選択的にブロックすることで、かゆみ・発赤・膨疹・くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を鎮めます。
最大の特徴は、脳内への移行性が低い(非鎮静性)点です。第1世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンなど)では問題になりやすかった強い眠気や口渇が、クラリチンではほとんど起こりにくく設計されています。
皮膚科領域での主な適応疾患は次のとおりです。
- 蕁麻疹(じんましん)
- 皮膚疾患(湿疹・皮膚炎(アトピー性皮膚炎など)、皮膚そう痒症)に伴うかゆみ
- アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)
2. クラリチンの特徴
クラリチンの最大の特徴は、眠気が出にくい”非鎮静性”と1日1回服用の利便性を両立している点です。
●非鎮静性:眠くなりにくい理由
ロラタジンは脂溶性が低く、血液脳関門(BBB)を通過しにくい構造を持っています。第1世代の抗ヒスタミン薬は脳内のヒスタミン受容体も遮断してしまうため眠気が強く出ますが、クラリチンは末梢のH1受容体を選択的にブロックするため、中枢への影響が最小限です。「花粉症の季節も車の運転がある」「仕事中に集中力を落としたくない」という方に処方しやすい薬剤です。
●抗ヒスタミン作用+抗アレルギー作用のW効果
ロラタジンおよびその活性代謝物であるDCL(descarboethoxyloratadine)は、H1受容体拮抗作用に加え、ヒスタミンやロイコトリエンC4の遊離を抑制する抗アレルギー作用も持ちます。つまり「受容体への結合をブロックする盾」と「そもそもアレルギー物質を放出させない予防」の二重効果が期待できます。
●1日1回服用で生活リズムに合わせやすい
投与後、14時間以上にわたってヒスタミン誘発皮内反応(膨疹・紅斑)を抑制することが確認されています。そのため1日1回の服用で安定した効果が持続し、飲み忘れが少ないのもメリットです。
●3剤形で年齢・状況に対応
- クラリチン錠10mg:成人・7歳以上の小児が対象。水で飲む標準的な錠剤

- クラリチンレディタブ錠10mg:水なしで口の中で溶ける口腔内速溶錠(OD錠)。外出先や水が飲めない状況でも服用可

- クラリチンドライシロップ1%:3歳以上の小児対象。体重に応じた用量調整が可能
●スイッチOTCとして市販薬もある
医療用と同成分の市販薬「クラリチンEX」(ロラタジン10mg)が第一類医薬品として薬局で購入できます。ただし市販品はアレルギー性鼻炎(15歳以上)限定であり、蕁麻疹や皮膚のかゆみには使用できません。皮膚症状には必ず医師の処方を受けてください。
3. 適応疾患と服用方法
適応疾患
クラリチンの主な皮膚科関連の適応症は以下のとおりです。
- 蕁麻疹(じんましん):突然現れる膨疹・強いかゆみ・発赤。急性・慢性を問わず適応
- 皮膚疾患に伴うかゆみ:湿疹・皮膚炎・皮膚そう痒症に伴うかゆみ
- アレルギー性鼻炎:花粉症・通年性アレルギー性鼻炎
服用方法
3つの重要ポイント
- 成人・7歳以上の小児:ロラタジンとして1回10mgを1日1回、食後に経口投与
- 3歳以上7歳未満の小児:ドライシロップを使用。1回5mg(0.5g)を1日1回、食後に溶解して服用
- 季節性アレルギー(花粉症など)の場合:好発季節の直前から投与を開始し、好発季節終了まで継続することが望ましい
| 対象 | 剤形 | 1回量 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 成人 | 錠・レディタブ | ロラタジン10mg | 1日1回 食後 |
| 7歳以上の小児 | 錠・レディタブ・ドライシロップ | ロラタジン10mg | 1日1回 食後 |
| 3〜7歳未満の小児 | ドライシロップ1%のみ | ロラタジン5mg(0.5g) | 1日1回 食後 |
効果の実感には個人差がありますが、蕁麻疹では数日以内に、花粉症では1〜2週間で徐々に症状の改善が現れることが多いです。効果が見られない場合は漫然と長期投与せず、医師に相談してください。
4. 使用上の注意点
比較的安全性の高い薬剤ですが、以下の点に注意が必要です。
●主な副作用
- 眠気、倦怠感、めまい、頭痛
- 口渇、吐き気、腹痛、便秘
- AST・ALT・γ-GTP・Al-P上昇などの肝機能検査値の変動
- 鼻乾燥感、咽頭痛、発疹
副作用の頻度は概ね10〜15%程度とされており、眠気の頻度は第1世代に比べて著しく低いものの、ゼロではありません。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- ショック、アナフィラキシー(チアノーゼ・呼吸困難・血圧低下・血管浮腫)
- てんかん、痙攣
- 肝機能障害、黄疸
服用中に激しいかゆみや発疹・呼吸困難・顔や唇の腫れ・意識障害・けいれん・皮膚や目が黄色くなるなどの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し医療機関を受診してください。
●禁忌(服用してはいけない方)
- 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
●こんな方は事前に医師にご相談を
- てんかんの既往歴のある方:てんかん発作が現れたとの報告があるため、事前に必ず申告を
- 腎機能障害のある方:ロラタジン及び活性代謝物DCLの血漿中濃度が上昇するおそれがある
- 肝機能障害のある方:ロラタジンの血漿中濃度が上昇するおそれがある
- 高齢の方:高い血中濃度が持続するおそれがある
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方:動物試験でラットへの胎仔移行が報告されており、投与しないことが望ましい
- 授乳中の方:母乳中への移行が報告されているため、授乳継続か中止かを医師と相談
●併用注意
- エリスロマイシン(マクロライド系抗生物質):ロラタジン・DCLの血中濃度が上昇するおそれあり
- シメチジン(H2受容体拮抗薬:胃薬):同様に血中濃度上昇のおそれあり
- 中枢神経抑制剤・アルコール:眠気・注意力低下が増強される可能性
- CYP3A4・CYP2D6を阻害する薬剤:ロラタジンの代謝に関与するため、血中濃度に影響する可能性
他の医療機関で処方されている薬やサプリメントを常用している場合は、必ず医師・薬剤師にお伝えください。
●日常生活での注意
- アルコール:添付文書上、中枢神経抑制剤との併用に注意が求められており、服用中は飲酒を控えることを推奨します
- 自動車運転:クラリチンは非鎮静性に分類されますが、眠気がゼロではないため、服用後に眠気やめまいを感じた場合は運転を避けてください
- 市販薬との重複:市販の「クラリチンEX」と処方されたクラリチンを同時に使用しないこと
5. 薬価と費用
クラリチン錠10mgの薬価は1錠あたり25.9円(2026年度薬価基準(2026年4月改定))です。後発品(ロラタジン錠10mg)は1錠あたり14.8円となっています。
30日分の費用目安
| 薬剤名 | 1錠薬価 | 30日分薬価(1日1錠) | 30日分自己負担(3割) |
|---|---|---|---|
| クラリチン錠10mg(先発品) | 25.9円 | 777円 | 約233円 |
| ロラタジン錠10mg(後発品) | 14.8円 | 444円 | 約133円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づく計算です。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: クラリチンは蕁麻疹(じんましん)にどれくらいで効きますか?
A1: 個人差はありますが、蕁麻疹に対しては服用後数時間〜数日以内にかゆみや膨疹の改善を実感する方が多いです。慢性蕁麻疹では、症状を安定させるために数週間〜数か月の継続服用が必要になる場合があります。効果が認められない場合は漫然と服用を続けず、医師にご相談ください。
Q2: 眠くなりにくいとはいえ、車の運転はしてもよいですか?
A2: クラリチンは第2世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬に分類されており、第1世代に比べて眠気は格段に少ないです。ただし、人によっては眠気が全く生じないわけではないため、服用後に自身で眠気やめまいを感じた場合は運転を控えてください。
Q3: 子どもにも使えますか?
A3: はい。クラリチンドライシロップ1%は3歳以上から使用可能で、小児のアレルギー疾患(アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・湿疹など)に幅広く使われています。3歳未満(乳幼児・新生児)への使用は臨床試験が実施されておらず、安全性が確立されていないため、医師に相談が必要です。
Q4: 市販のクラリチンEXと処方薬のクラリチンは同じですか?
A4: 有効成分(ロラタジン10mg)は同一ですが、使用できる疾患が異なります。市販品(クラリチンEX)はアレルギー性鼻炎(15歳以上)限定であり、蕁麻疹・皮膚のかゆみには使用できません。皮膚症状には必ず医療機関を受診して処方薬をお使いください。
Q5: 妊娠中・授乳中でも飲めますか?
A5: 妊婦または妊娠している可能性のある方への投与は「望ましくない」とされています。授乳中の方は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して医師が判断します。自己判断での服用は避け、必ず医師にご相談ください。
Q6: 他のアレルギーの薬(アレグラ・アレロックなど)と何が違いますか?
A6: クラリチン(ロラタジン)・デザレックス(デスロラタジン)・アレグラ(フェキソフェナジン)はいずれも「眠くなりにくい」非鎮静性ですが、効き目の速さや個人ごとの反応性に差があります。アレロック(オロパタジン)はやや鎮静性がある(眠気が出やすい)ものの、かゆみへの即効性が高い傾向があります。どの薬が最適かは症状・生活スタイルによって異なるため、医師とご相談ください。
Q7: 飲み忘れたときはどうすればよいですか?
A7: 気づいた時点で1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合(次の服用予定時間まで12時間を切っている場合など)は飲み忘れた分を飛ばして、次の通常の時間に服用してください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。
7. 皮膚科専門医解説 クラリチンの要点まとめ
- 適応:蕁麻疹・皮膚疾患(湿疹・皮膚炎・皮膚そう痒症)に伴うかゆみ・アレルギー性鼻炎に適応する第2世代抗ヒスタミン薬
- 作用:H1受容体拮抗作用+ヒスタミン・ロイコトリエンC4の遊離抑制作用の”W効果”
- 服用法:成人・7歳以上の小児は10mg1日1回食後。3〜7歳未満はドライシロップ5mg
- 最大のメリット:脳内移行が低く眠くなりにくい。仕事中・運転が多い方にも処方しやすい
- 注意点:エリスロマイシン・シメチジンとの併用で血中濃度が上昇するおそれ。てんかん既往者・腎肝機能障害のある方は事前に申告が必要
- 費用:先発品 30日分 約233円(3割負担)/後発品はさらに安価
蕁麻疹や皮膚のかゆみは、原因や重症度によって最適な治療薬が異なります。市販薬でのセルフケアには限界がある場合も多く、慢性化・悪化の前に専門医への相談をお勧めします。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な蕁麻疹・アレルギー性皮膚疾患治療をご提案しています。 「じんましんが繰り返し出る」「かゆみが長引いている」「眠くならないアレルギー薬を使いたい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
参考文献
- 日本皮膚科学会. 蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日本皮膚科学会雑誌 2018;128(12):2503-2624.
▶ 国内における蕁麻疹治療の標準を定めるガイドライン。第2世代抗ヒスタミン薬(ロラタジンを含む)を第一選択薬として推奨しており、症状コントロールが不十分な場合の増量・併用・変更の指針も示す。 - バイエル薬品株式会社. クラリチン錠10mg・クラリチンレディタブ錠10mg・クラリチンドライシロップ1% 添付文書(最新改訂版).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌・副作用・相互作用(エリスロマイシン・シメチジン等との併用注意)・特定の背景を有する患者への注意(妊婦・授乳婦・小児・腎肝機能障害患者)が詳細に記載。本記事の薬学的記述の主要な根拠。 - 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). クラリチンレディタブ錠10mg 審査報告書. 2004年2月.
▶ 小児(3〜14歳)を対象とした国内第III相比較試験(対照薬:ケトチフェンフマル酸塩)において、ロラタジンの通年性アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎への有効性・安全性が確認されたことが示されている。


