【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:皮膚感染症/日光角化症
ベセルナクリーム(一般名:イミキモド)は、尖圭コンジローマ(外性器・肛門周囲のイボ)や日光角化症(顔面・頭部の前がん病変)の治療に用いられる、国内唯一の免疫賦活型外用薬です。2007年に日本で承認・発売されて以来、抗ウイルス剤でも抗腫瘍剤でもない”第三の選択肢”として皮膚科臨床に定着してきました。
「コンジローマと診断されたが、どんな薬を塗るの?」「日光角化症にクリームで治療できるの?」——そうした疑問を持つ患者さんに向けて、作用の仕組みから正しい使い方、費用まで皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. ベセルナクリーム(イミキモド)とは
ベセルナクリーム(一般名:イミキモドクリーム)は、免疫賦活薬(TLR7アゴニスト) に分類される外用クリームです。持田製薬株式会社が製造販売しており、日本では初の尖圭コンジローマ治療薬として薬価収載されました。
一般的な抗ウイルス薬がウイルスを直接攻撃するのとは異なり、イミキモドは自分の免疫を”起動”させることで病変を内側から排除するという、まったく新しいアプローチをとります。いわば、体の中に眠っている”免疫スイッチ”を押して、ウイルス感染細胞や前がん細胞を免疫細胞に見つけさせ、排除させるイメージです。
なお「ベセルナ(Beselna)」という名称は、次の3つのコンセプトの頭文字に由来します。
– Best(開発当時、最適な治療であること)
– self-administered(患者自身が自宅で塗布できること)
– natural healing(局所の免疫力を活性化し、自己治癒力を高めること)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | ベセルナクリーム5% |
| 一般名 | イミキモドクリーム |
| 製造販売 | 持田製薬株式会社 |
| 分類 | 免疫賦活薬(TLR7アゴニスト) |
| 剤形 | クリーム(1包250mg中、イミキモド12.5mg含有) |
| 薬価収載 | 2007年9月21日 |
| 後発品 | なし(2026年5月時点) |
2. ベセルナクリームの特徴
ベセルナクリームの最大の特徴は、薬が直接ウイルスや腫瘍細胞を殺すのではなく、自分の免疫システムを使って病変を排除させる点です。外科的処置(液体窒素・レーザー・切除)が「外から病変を取り除く」アプローチなのに対し、ベセルナは「内側から免疫で消す」アプローチといえます。
● TLR7を介した免疫活性化という独自機序
有効成分イミキモドは、免疫細胞(単球・樹状細胞)の表面にあるToll様受容体7(TLR7)に結合し、これをアゴニストとして活性化します。その結果、インターフェロン-α(IFN-α)・腫瘍壊死因子-α(TNF-α)・インターロイキン-12(IL-12)などのサイトカインが産生され、細胞性免疫応答が高まります。ウイルス感染細胞や前がん細胞がナチュラルキラー細胞・細胞傷害性T細胞に認識・攻撃されやすくなるわけです。
● 1包使い切りの個包装で衛生的
ベセルナクリームは通常の塗り薬のようにチューブや多回使用容器ではなく、1回分(250mg)ずつアルミ小袋に個包装されています。開封後の残薬は再使用せず廃棄するのがルールです。1回分の使用量は米粒1〜2個分(イボとその周囲5mm程度に薄く広げる量)で十分です。
● 傷跡・瘢痕が残りにくい
液体窒素や外科的切除では治療後に瘢痕(傷跡)が残ることがありますが、ベセルナクリームは免疫で病変を消失させるため瘢痕が残りにくいのが利点です。ただし、治療経過中に強い炎症(紅斑・びらん)が生じることがあり、これは薬が効いているサインでもあります。
● 自宅で使用できる(通院回数が少なくて済む)
就寝前に自分で塗布し、翌朝洗い流すだけの操作で完結します。定期的な通院は受診・経過確認のみで済む場合が多く、忙しい患者さんや遠方の患者さんにも続けやすい治療法です。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
ベセルナクリーム5%の承認適応症(皮膚科領域)は以下の通りです。
- 尖圭コンジローマ(外性器または肛門周囲に限る)
- 日光角化症(顔面または禿頭部〈はげた頭部〉に限る)
なお、尿道内・腟内・子宮頸部・直腸・肛門内への使用は禁忌です。粘膜への塗布は重篤な炎症反応を起こすため、絶対に行ってはいけません。
使用方法
疾患別の外用スケジュール(添付文書準拠)
| 疾患 | 塗布タイミング | 洗い流し時間 | 最大使用期間 |
|---|---|---|---|
| 尖圭コンジローマ | 週3回・就寝前(連日不可、例:月・水・金) | 起床後(塗布後6〜10時間) | 最大16週間(合計48回) |
| 日光角化症 | 週3回・就寝前(連日不可) | 起床後(塗布後8時間) | 4週塗布→4週休薬(2クール、合計24回) |
3つの重要ポイント
- 連日使用は厳禁:免疫刺激が強すぎる副作用(過度の紅斑・びらん)を防ぐため、必ず塗布しない日を設けます。
- テープ・絆創膏で密封しない:密封することで皮膚反応が過度に強くなる恐れがあります。
- 開封後の残薬は廃棄:使い切りのパッケージです。余っても次回に使いまわさないでください。
塗布後は治療部位の炎症(赤み・むくみ・表皮剥離など)が高頻度に生じますが、これは薬が免疫を活性化している証拠でもあります。あらかじめ医師から説明を受けておくと不安なく継続できます。
4. 使用する上の注意点
● 主な副作用
ベセルナクリームの副作用は、ほぼ塗布部位の局所反応です。
| 副作用 | 主な症状 |
|---|---|
| 皮膚反応(高頻度) | 紅斑、びらん、表皮剥離、落屑、皮膚乾燥、皮膚小水疱、皮膚亀裂、かゆみ |
| 全身症状(稀) | 悪寒、発熱、筋肉痛などインフルエンザ様症状 |
局所の強い炎症反応と並行して、悪寒・発熱・筋肉痛などのインフルエンザ様症状が現れることがあります。このような場合は使用を中止し、速やかに医師へご相談ください。
● 重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- 重篤な皮膚障害:重度の潰瘍・びらん・紅斑・浮腫・表皮剥離
- 過敏症(アナフィラキシー):蕁麻疹・浮腫・呼吸困難
副作用の兆候として塗布部位に強い潰瘍・ただれ・腫れが現れた場合は、石鹸と水で洗い流してから医療機関を受診してください。
● 禁忌(使用してはいけない場合)
- イミキモドなど、本剤成分に対して過敏症の既往歴のある方
- 尿道・腟内・子宮頸部・直腸・肛門内への塗布(粘膜への使用は禁忌)
● 併用注意・日常生活での注意
- コンドームへの影響:ベセルナクリームの基剤(油脂性成分)はラテックスゴム製品(コンドームなど)を劣化・破損させる可能性があります。塗布した部位はコンドームと接触させないよう指導されています。
- 日焼けに注意:塗布部位は日光に対して敏感になります。治療期間中(休薬期間含む)は日焼けを避けてください。
- 他の塗り薬との併用:塗布部位への他の外用薬の同時使用は避けてください。他の治療(液体窒素など)直後の炎症が残っている状態での使用も避けます。
- 自動車運転:眠気を催す成分は含まれていないため制限はありません。
- 市販品はありません:医療用医薬品であり、必ず医師の処方が必要です。個人輸入品には品質・安全性の保証がなく、推奨されません。
● 使用前に医師にご相談を
- 妊娠中・授乳中、または妊娠の可能性がある方
- 自己免疫疾患(全身性エリテマトーデスなど)のある方
- 免疫抑制状態にある方
- 未成年者(小児への安全性は確立されていません)
5. 薬価と費用
ベセルナクリーム5%の薬価は1包(250mg)あたり652.6円です(2026年度薬価基準・2026年4月改定)。現時点で後発品(ジェネリック)は存在しません。
尖圭コンジローマでは週3回使用が基本のため、1か月(4週)で約12包が目安です。
尖圭コンジローマ(週3回)の費用目安
| 期間 | 包数(週3回使用) | 薬価合計 | 3割負担の自己負担額目安 |
|---|---|---|---|
| 2週間 | 6包 | 3,915.6円 | 約1,175円 |
| 4週間(1か月) | 12包 | 7,831.2円 | 約2,350円 |
| 8週間(2か月) | 24包 | 15,662.4円 | 約4,699円 |
日光角化症(4週塗布+4週休薬の1クール)の費用目安
| 期間 | 包数(塗布4週分) | 薬価合計 | 3割負担の自己負担額目安 |
|---|---|---|---|
| 1クール(塗布4週) | 12包 | 7,831.2円 | 約2,350円 |
| 2クール(塗布計8週) | 24包 | 15,662.4円 | 約4,699円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づきます。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: ベセルナクリームはどのくらいの期間で効果が出ますか?
A1: 個人差がありますが、尖圭コンジローマの場合は使用開始から数週間〜2か月程度でイボの縮小・消失が見られることが多いです。最大16週間(約4か月)使用できます。治療が長くかかることを理解した上で、焦らず継続することが大切です。
Q2: 「週3回」とは具体的にいつ塗ればよいですか?
A2: 連日は避け、月・水・金や火・木・土などのスケジュールで塗布します。就寝前に塗り、翌朝(塗布後6〜10時間後を目安)に石鹸と水で洗い流します。日光角化症の洗い流しは8時間後が目安です。
Q3: 塗布部位が赤くなったり、ただれてきました。使い続けて大丈夫ですか?
A3: 軽度〜中程度の紅斑・落屑・びらんは多くの方に生じる局所反応です。免疫が活性化されているサインとも言えます。ただし、重度の潰瘍や強い痛み・インフルエンザ様症状(発熱・悪寒・筋肉痛)を伴う場合は、いったん使用を中止し医師に相談してください。
Q4: 尖圭コンジローマの液体窒素治療とどう違いますか?
A4: 液体窒素(凍結療法)はその場で病変を物理的に破壊する即効性がある一方、通院が必要で疼痛も伴います。ベセルナクリームは自宅で使用でき瘢痕が残りにくい一方、効果が出るまでに時間がかかります。病変の大きさや部位・患者さんの希望によって最適な治療法が異なります。液体窒素でボリュームを減らした後にベセルナで再発予防を図るなど、組み合わせることもあります。
Q5: 日光角化症の治療でベセルナを塗り始めたら、治療していない部位にも赤みが広がりました。
A5: これは日光角化症でしばしばみられる現象で、塗布によってこれまで見えていなかった潜在的な病変が顕在化した可能性があります。「field cancerization(野のがん化)」に対する効果ともいわれます。副作用による赤みとの区別が難しい場合は担当医に相談してください。
Q6: コンドームを使っていますが問題ありませんか?
A6: ベセルナクリームの基剤(油脂成分)がラテックスゴム製のコンドームを劣化・破損させる可能性があります。塗布した部位にコンドームが接触しないよう注意してください。治療期間中の性交渉については医師にご相談ください。
Q7: 市販薬や個人輸入で購入できますか?
A7: ベセルナクリームは医療用医薬品であり、医師の処方箋なしに購入することはできません。海外では同成分の製品が市販されている場合もありますが、個人輸入品は品質・安全性の保証がなく、誤診・副作用対応の遅れにつながるリスクがあります。必ず皮膚科を受診し、医師の診断と処方を受けてください。
7. 皮膚科専門医解説 ベセルナクリームの要点まとめ
- 適応:外性器・肛門周囲の尖圭コンジローマ、顔面・禿頭部の日光角化症(どちらも適応部位が限定)
- 作用機序:TLR7アゴニストとして免疫を活性化。IFN-α・TNF-αなどのサイトカイン誘導により、ウイルス感染細胞・前がん細胞を免疫細胞が排除する
- 使い方:週3回・就寝前に塗布、起床後に洗い流す。連日不可。テープで密封しない
- 治療期間:尖圭コンジローマ最大16週、日光角化症は4週塗布+4週休薬×2クールまで
- メリット:自宅治療可・瘢痕が残りにくい・免疫で「根本から」排除するアプローチ
- 注意点:粘膜(尿道・腟内など)への使用は禁忌。コンドームとの接触を避ける。強い皮膚反応・インフルエンザ様症状が出たら即受診
- 費用:週3回使用で1か月あたり約2,350円(3割負担・薬剤費のみ)。後発品なし
ベセルナクリームは”塗るだけで免疫が働く”という画期的な薬剤ですが、適応部位の制限や使用スケジュールの厳守など、正しい知識が必要です。自己判断での使用は症状を悪化させることがあります。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な皮膚感染症・日光角化症治療をご提案しています。 「尖圭コンジローマのイボを治したい」「顔のざらつきが気になる(日光角化症が心配)」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
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持田製薬株式会社. ベセルナクリーム5% 添付文書(第1版, 2023年2月改訂).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症(尖圭コンジローマ・日光角化症)・用法用量・禁忌・重要な基本的注意・副作用・相互作用が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。 -
横関博雄ほか. イミキモド・クリーム剤(ベセルナクリーム5%)の薬理作用と臨床効果. 日本薬理学雑誌 2008;131(2):107-113.
▶ イミキモドがTLR7に結合してIFN-α・TNF-α・IL-12等のサイトカイン産生を促進し、細胞性免疫応答を活性化する機序を詳細に解説した基礎・臨床薬理研究。ベセルナの作用機序の科学的裏付けとなる。 -
日本皮膚科学会. 日光角化症診療ガイドライン2020. 日本皮膚科学会雑誌 2020;130(13):2759-2796.
▶ 日光角化症(前がん病変)の標準的な治療法を示すガイドライン。イミキモド外用がエビデンスに基づく治療選択肢の一つとして推奨されている。
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