【アズノール軟膏(ジメチルイソプロピルアズレン)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:塗り薬/皮膚感染症・湿疹・創傷

アズノール軟膏(一般名:ジメチルイソプロピルアズレン)は、湿疹・やけど・びらんなどの皮膚疾患に用いられる非ステロイド性の外用抗炎症薬です。1958年の発売以来、約70年にわたり皮膚科・小児科・内科など幅広い診療科で処方され続けてきた、信頼性の高い歴史ある塗り薬です。

「ステロイドは避けたい」「赤ちゃんのデリケートな肌にも使えるやさしい薬が欲しい」──そんな患者さんの声に、皮膚科専門医が真っ先に挙げる選択肢の一つが、このアズノール軟膏です。実は、その鮮やかな青紫色の外観はただの彩りではなく、有効成分そのものの色。カモミールに由来する天然由来成分が、炎症を鎮め、傷の治りを促す「抗炎症+創傷治癒」の二刀流の働きをします。


1. アズノール軟膏(ジメチルイソプロピルアズレン)とは

アズノール軟膏の正式名称は「アズノール軟膏0.033%」。日本新薬株式会社が製造販売する医療用外用薬で、一般名はジメチルイソプロピルアズレン(別名:グアイアズレン)です。

アズノール(Azunol)」という名称は、有効成分のAzulene(アズレン)に由来します。アズレンとは、ヨーロッパ原産のキク科の薬用植物「カミツレ(カモミール)」を水蒸気蒸留して得られる特有の七員環構造をもつ化合物で、古来から民間薬として炎症性疾患の治療に用いられてきました。アズノール軟膏はそのアズレンを化学的に安定させた「ジメチルイソプロピルアズレン」を有効成分とし、基剤に精製ラノリン・白色ワセリンを用いた軟膏剤です。

項目 内容
製品名 アズノール軟膏0.033%
一般名 ジメチルイソプロピルアズレン
製造販売 日本新薬株式会社
分類 非ステロイド性抗炎症外用薬(炎症性皮膚疾患治療剤)
剤形 軟膏(0.033%)20gチューブ、500g瓶
発売年 1958年
後発品 なし(薬価が低廉なため後発品は存在しない)

2. アズノール軟膏の特徴

アズノール軟膏の最大の特徴は、植物由来の天然成分でありながら、抗炎症と創傷治癒促進という二つの薬理作用を併せ持つ点です。ステロイドほど強力ではありませんが、その分副作用が非常に少なく、赤ちゃんからご高齢の方まで、全身のほぼあらゆる部位に使用できます。

●非ステロイド性の穏やかな抗炎症作用

ジメチルイソプロピルアズレンは、白血球の遊走(炎症部位への集積)を阻害し、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制することで抗炎症作用を発揮します。ステロイドのように視床下部-下垂体-副腎軸を介さず、またプロスタグランジンE2(PGE2)合成阻害作用も示さないため、炎症組織への直接的な局所作用にとどまります。他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs外用薬)と比べても皮膚への刺激が少なく、長期・広範囲使用にも向いています。

●創傷治癒促進作用

有効成分は傷ついた皮膚組織の修復を助ける働きも持ちます。やけど後のただれ(びらん)や皮膚潰瘍などに塗布することで、組織の再生・回復をサポートします。「炎症を鎮めながら傷を治す」という一石二鳥の作用が、アズノール軟膏が長く愛用されてきた理由の一つです。

●保湿・保護作用を持つ基剤

基剤の精製ラノリンと白色ワセリンは、皮膚に油性の保護膜を形成し、水分の蒸散を防ぎます。有効成分の薬理作用に加えて、皮膚のバリア機能を物理的に守るという意味でも有効です。入浴直後の湿潤した皮膚に塗布すると、保湿効果が高まります。

●幅広い年齢・部位に使える安全性の高さ

赤ちゃんのおむつかぶれから高齢者の褥瘡まで、年齢を問わず処方しやすい薬剤です。顔・唇・陰部・肛門周囲などのデリケートな部位にも使用できます(眼球への直接使用は禁忌)。また、ステロイドに抵抗感のある患者さんにとっても受け入れやすい薬剤です。

●鮮やかな青紫色が目印

軟膏の色はアズレン成分由来の淡青色〜青紫色。塗布した部位が一目でわかるため、塗り忘れや塗り直しの確認にも役立ちます。ただし、衣服や布団への色移りには注意が必要です。


3. 適応疾患と使用方法

適応疾患

アズノール軟膏0.033%の添付文書に記載された効能・効果は以下のとおりです。

  • 湿疹(アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎・脂漏性皮膚炎など)
  • 熱傷(やけど)・その他の疾患によるびらん及び潰瘍

さらに、臨床現場では以下のような疾患・症状に幅広く処方されています。

疾患・症状カテゴリ 具体例
皮膚炎・湿疹類 アトピー性皮膚炎(軽症)、接触皮膚炎(かぶれ)、脂漏性皮膚炎、虫さされ、あせも
外傷・びらん おむつかぶれ、擦り傷後びらん、薬疹・中毒疹によるびらん
熱傷・凍傷 軽度のやけど、日焼け、凍傷・凍瘡
慢性皮膚病変 褥瘡(軽症〜中等症)、皮膚潰瘍
放射線・薬剤による皮膚障害 抗がん剤・放射線治療による皮膚炎

使用方法(用法・用量)

通常、症状に応じて適量を1日数回(症状や部位によって1〜数回)、患部に直接塗布します。

3つの重要ポイント

  1. 手を清潔にしてから塗布する:感染予防のため、使用前に必ず手を洗いましょう。
  2. 炎症部位はやさしく塗る:ただれや傷のある皮膚は刺激に弱いため、こすらず軽く押さえるように塗布してください。
  3. 炎症のない部位への漫然使用は避ける:保湿目的での長期単独使用には適していません。保湿のみが目的であれば保湿剤(ヘパリン類似物質など)をご使用ください。

4. 使用する上の注意点

安全性の高い薬剤ですが、正しく使うために以下の点を確認してください。

●主な副作用

アズノール軟膏は重大な副作用の記載がない、非常に安全性の高い外用薬です。ただし、まれに以下の局所症状が現れることがあります。

  • 熱感・かゆみ・ヒリヒリ感などの皮膚刺激症状(頻度:0.1〜1%未満)
  • 発疹・発赤(過敏症)
  • 接触性皮膚炎(頻度不明):特に基剤の精製ラノリンが原因となる場合があります。びらん面に長期使用する際は特に注意してください。

これらの症状が現れた場合は使用を中止し、医師・薬剤師にご相談ください。

●重大な副作用

添付文書に「重大な副作用」の記載はありません。これは全身への影響がほぼなく、局所への直接作用にとどまる薬剤であることを反映しています。

●併用禁忌・併用注意

区分 詳細
併用禁忌 特になし
併用注意 他の外用薬と重ねて使用する場合は医師・薬剤師に相談

塗り薬のため、内服薬との相互作用は基本的にありません。ただし、他の外用薬と同時に使用する場合は、医師・薬剤師にご相談ください。

●使用禁忌

  • 本剤の成分(ジメチルイソプロピルアズレン・精製ラノリン・白色ワセリン)に対してアレルギーの前歴がある方

●眼への使用は禁忌

眼科用として使用してはいけません。 目や目の周囲への使用は避け、誤って目に入った場合はすぐに流水で洗い流してください。

●事前に医師にご相談を

  • 妊娠中・授乳中の方(血液-胎盤関門通過性はないとされていますが、有益性が危険性を上回る場合にのみ使用)
  • 授乳中の方(母乳移行性はないとされていますが、授乳継続・中止を医師が判断します)
  • 乳幼児・小児(処方しやすい薬剤ですが、医師の指示のもとで使用)

●日常生活での注意

  • 衣服・寝具への色移り:青紫色の軟膏のため、布製品への色移りに注意してください。
  • アルコール:塗り薬のため飲酒との直接的な相互作用はありません。
  • 自動車運転:眠気を起こす成分は含まれないため制限はありません。
  • 市販薬の有無:アズノール軟膏と全く同一成分の市販薬はありません。類似成分を含む「タナールAZ軟膏」(第三類医薬品)が市販されていますが、配合成分が異なります。処方薬が必要な場合は必ず医師の診察を受けてください。

5. 薬価と費用

アズノール軟膏0.033%の薬価は10gあたり80.30円(日本新薬)
です。
薬価が非常に安いため、現在ジェネリック医薬品(後発品)は存在しません。

以下の薬価表は、処方量の目安として20g(1チューブ)および50g(2.5チューブ相当)を基準に算出しています(2026年度薬価基準・2026年4月改定)。

規格・処方量 薬価(計算額) 3割負担の自己負担額(目安)
10g(小チューブ半量) 80.30円 約24円
20g(1チューブ) 160.60円 約48円
50g 401.50円 約120円
100g 803.00円 約241円

※薬価は1g=8.03円で計算。後発品なし。
※上記は薬剤費のみの目安です。別途、初診料・再診料・処方箋料・調剤技術料などが加算されます。
※実際の処方量・自己負担額は診察内容により異なります。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: アズノール軟膏はステロイドですか?

A1: ステロイドではありません。 アズノール軟膏は植物由来の非ステロイド性抗炎症外用薬です。ステロイドと比べると抗炎症作用は穏やかですが、副作用も非常に少なく、ステロイドを使いたくない方や広範囲・長期使用が必要な方に適した薬剤です。

Q2: 赤ちゃんや子供にも使えますか?

A2: 使用できます。 おむつかぶれやあせもなど乳幼児のデリケートな肌にも処方されることが多い薬剤です。ただし、乳幼児への使用は必ず医師の指示のもとで行ってください。自己判断での使用はお控えください。

Q3: 顔や陰部などデリケートな部分にも使えますか?

A3: 基本的に使用できます。 顔・唇・陰部・肛門周囲などの皮膚が薄くデリケートな部位にも使用できます。ただし眼球・目の周囲への使用は禁忌です。また、炎症の原因が感染症(カンジダ症・細菌感染など)の場合は、アズノール軟膏単独では改善しないことがありますので、医師による正確な診断が必要です。

Q4: 市販薬で同じ成分のものはありますか?

A4: アズノール軟膏と全く同一成分の市販薬はありません。 類似成分(ジメチルイソプロピルアズレン)を含む市販薬として「タナールAZ軟膏」がありますが、アラントインやグリチルリチンなどの配合成分が異なり、同一製品ではありません。アズノール軟膏は医療用医薬品のため、使用には医師の診察が必要です。

Q5: 妊娠中・授乳中でも使えますか?

A5: 血液-胎盤関門通過性・母乳移行性はないとされていますが、添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用」とされています。妊娠中・授乳中の方は必ず医師にご相談のうえ、指示に従って使用してください。

Q6: 服用中(内服薬)との飲み合わせは大丈夫ですか?

A6: 特に問題となる飲み合わせはありません。 塗り薬のため、全身に吸収される量が微量であり、内服薬との相互作用はほぼないとされています。ただし、複数の外用薬を使用している場合は医師・薬剤師にお伝えください。

Q7: 衣服に青色が付いてしまいました。洗えば落ちますか?

A7: アズノール軟膏の青紫色はアズレン成分由来の色素で、衣服や寝具に付着すると落ちにくい場合があります。 塗布後は乾いたガーゼや包帯で保護するか、衣服への色移りが気になる場合は着古した衣服を使用するなど工夫してください。塗布直後は素材への浸透前のため、速やかに汚れを拭い流すと落ちやすくなることがあります。


7. 皮膚科専門医解説 アズノール軟膏の要点まとめ

  • 成分:カミツレ(カモミール)由来のアズレン誘導体・ジメチルイソプロピルアズレンを主成分とする非ステロイド性外用薬
  • 適応:湿疹・やけど・びらん・潰瘍など。おむつかぶれ・あせも・アトピー性皮膚炎(軽症)・褥瘡などにも幅広く使用
  • 作用:抗炎症作用(白血球遊走阻害・ヒスタミン遊離抑制)+創傷治癒促進作用の「二刀流」
  • 安全性:重大な副作用の記載なし。赤ちゃん・妊婦(医師判断)・高齢者・デリケートゾーンにも使用可能
  • 注意点:眼科用としての使用は禁忌。精製ラノリンによる接触性皮膚炎に注意。衣服への色移りに注意
  • 費用:10g あたり薬価80.30円(2026年度薬価基準)、後発品なし

アズノール軟膏は「穏やかだが確実」な抗炎症・創傷治癒作用で、皮膚科における守備範囲の広い優秀な外用薬です。一方で、感染症(細菌・真菌)が原因の皮膚病変には抗菌薬・抗真菌薬が必要であり、自己判断での使用継続は症状悪化を招く場合があります。皮膚症状が改善しない、悪化する場合は速やかに皮膚科を受診してください。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な湿疹・皮膚炎・創傷ケア治療をご提案しています。 「ステロイドを使わずに皮膚炎を治したい」「やけどやただれがなかなか治らない」「赤ちゃんのおむつかぶれが繰り返す」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会


参考文献

  1. 日本新薬株式会社. アズノール軟膏0.033% 添付文書(2023年6月改訂).
    ▶ 製造販売元による公式情報。効能・効果(湿疹、熱傷・その他の疾患によるびらん及び潰瘍)、用法・用量、禁忌、副作用(過敏症:0.1〜1%未満)が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). アズノール軟膏0.033% 審査報告書・添付文書情報.
    ▶ 有効成分ジメチルイソプロピルアズレンの白血球遊走阻害作用・肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用・創傷治癒促進作用について、再評価に基づく薬効薬理情報を掲載。安全性プロファイルの科学的裏付けとなる公的情報源。

  3. 日本皮膚科学会. 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン-3:褥瘡診療ガイドライン(第2版). 日本皮膚科学会雑誌 2022;132(5):1041-1094.
    ▶ 褥瘡治療における外用薬の位置づけを示すガイドライン。非ステロイド性抗炎症外用薬(ジメチルイソプロピルアズレン含む)は、炎症を伴うびらん・浅い潰瘍に対して保護・抗炎症を目的として使用される旨が整理されている。


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