【パスタロン(尿素)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:乾燥性・角化性皮膚疾患/保湿外用薬

パスタロン(一般名:尿素)は、乾燥した皮膚・硬く厚くなった角質に対して処方される尿素配合の外用薬です。皮膚科では「ただ保湿するだけ」ではなく、角質を溶かして柔らかくする(角質融解作用)という独自の働きが評価され、老人性乾皮症・魚鱗癬・掌蹠角化症・アトピー皮膚など、幅広い乾燥性・角化性疾患に長年処方されてきました。

実はパスタロンの主成分「尿素」は、私たちの皮膚の角質層に本来存在する天然保湿因子(NMF)の構成成分のひとつ。つまり、皮膚が本来持つ保湿機能を補う、”自然に近い保湿成分”です。本記事では、その作用機序から剤形の選び方、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。


1. パスタロン(尿素)とは

パスタロンは、佐藤製薬株式会社が製造販売する角化性・乾燥性皮膚疾患治療剤で、有効成分は尿素(urea)です。濃度によって10%製剤と20%製剤が存在し、剤形もクリーム・ソフト軟膏・ローションと複数あるため、部位や症状に合わせて選択できます。

尿素は濃度が低いほど保湿・角質水分保持に、高いほど角質融解(厚くなった角質を溶かす)作用が前面に出てきます。10%製剤が「しっとりうるおわせる」イメージなら、20%製剤は「硬く厚くなった角質をほぐして柔らかくする」イメージで、医師が病態に応じて使い分けます。

項目 内容
製品名 パスタロンクリーム10%/20%、パスタロンソフト軟膏10%/20%、パスタロンローション10%
一般名 尿素(Urea)
製造販売 佐藤製薬株式会社
分類 角化性・乾燥性皮膚疾患治療剤(保湿剤)
剤形 クリーム・軟膏・ローション
発売年 軟膏10%:1987年(承認)、クリーム・ソフト軟膏20%:薬価収載2007年
後発品 あり(尿素クリーム・軟膏「各社」)

名称の由来

パスタロン(Pastaron)」の語源は明確に公表されていませんが、「pasta(軟膏・ペースト)」に由来するとも言われており、クリーム・軟膏製剤としての特性を名前に込めたと考えられます。


2. パスタロンの特徴

パスタロン最大の特徴は、「保湿」と「角質融解」という二つの顔を持つ点です。ステロイドを含まない純粋な保湿・角質ケア薬であるため、長期使用しやすく、子どもからお年寄りまで幅広く使えます。

● 保湿作用(角質水分保持作用)

尿素はアミノ酸の代謝産物であり、正常な皮膚の角質層には天然保湿因子(NMF)として存在しています。外部から補充することで、角質細胞間の水分保有力を高め、乾燥・ひび割れを防ぎます。研究では、尿素クリームを塗布した皮膚は基剤のみと比べて水分保有力が有意に高かったことが示されています。

● 角質融解作用(20%製剤で特に顕著)

尿素は高濃度になると角質タンパク質の水素結合を切断し、肥厚した角質を柔らかくほぐす働きをします。かかとのガサガサ・魚の鱗のような皮膚(魚鱗癬)・手掌の角化症など、厚く硬くなった角質の改善に有効です。

● ノンステロイドで長期使用しやすい

ステロイド外用薬と異なり、皮膚萎縮・毛細血管拡張・感染症誘発などの副作用リスクがないため、顔以外の広範囲や長期的な保湿ケアに使用しやすいのが特徴です。

● 複数の剤形で部位に合わせて使える

  • クリーム・ソフト軟膏:手足・肘・膝・かかとなど皮膚が厚い部位や乾燥が強い部位に適しています。
  • ローション(10%のみ):頭部・広い部位や毛髪部位にも塗りやすく、頭部粃糠疹(あたまのふけ症状)にも適応があります。

● 3つの重要ポイント

  1. 濃度選択が重要:乾燥・かゆみが主体なら10%、角化・肥厚が主体なら20%が基本の選択軸。
  2. ステロイドとの併用も多い:炎症を伴う場合はステロイド外用薬と組み合わせて処方されることが多く、炎症が落ち着いたあとの維持保湿薬としても使われます。
  3. 塗布後によくすり込む:尿素が角質層に浸透してはじめて効果を発揮するため、「塗りっぱなし」でなくなじむまでやさしくすり込むのがポイントです。

3. 適応疾患と使用方法

適応疾患

パスタロンの効能・効果(添付文書記載)は以下のとおりです。

剤形 適応症
クリーム10%・ソフト軟膏10%・クリーム20%・ソフト軟膏20% 老人性乾皮症、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、足蹠部皸裂性皮膚炎、掌蹠角化症、毛孔性苔癬、魚鱗癬
ローション10% 上記に加えて頭部粃糠疹も適応

代表的な疾患・症状解説

  • 老人性乾皮症(皮脂欠乏症):加齢とともに皮脂や汗の分泌が減り、全身の皮膚が乾燥してかゆくなる状態。冬に悪化しやすい。
  • アトピー皮膚:アトピー性皮膚炎のバリア機能が低下した乾燥皮膚への保湿補助として使用される。
  • 足蹠部皸裂性皮膚炎:かかとが硬く厚くなり、深いひび割れ(皸裂)が生じる状態。20%製剤が特に適する。
  • 掌蹠角化症・毛孔性苔癬・魚鱗癬:遺伝的・体質的な角化異常により皮膚が硬くゴワゴワ・ザラザラになる疾患群。

使用方法(用法・用量)

クリーム・ソフト軟膏(10%・20%)

1日2〜3回、患部を清浄にしたのち塗布し、よくすり込む。症状により適宜増減する。

ソフト軟膏20% / クリーム20%(一部製品)

1日1〜数回、患部に塗擦する。

ローション10%

1日2〜3回、患部を清浄にしたのち塗布し、よくすり込む。

使用のポイント

  1. 入浴後の使用が効果的:入浴後は角質が水分を含んで柔らかくなっており、尿素の浸透が良くなります。入浴後できるだけ早く(5〜10分以内)塗布するのが理想です。
  2. 患部をきれいにしてから塗る:汚れた皮膚への塗布では薬剤の浸透が妨げられます。
  3. 角化・肥厚が強い部位は多めに塗ってよくすり込む:かかとなどは厚いラップや靴下で保護する「密封療法(ODT)」を医師に勧められることもあります。

4. 使用する上の注意点

比較的安全性の高い外用薬ですが、以下の点に注意して使用してください。

● 主な副作用

尿素製剤の副作用として以下が報告されています(頻度不明)。

  • 皮膚ぴりぴり感・灼熱感・疼痛(塗布直後に生じることがある)
  • 紅斑(赤み)
  • 皮膚そう痒感(かゆみ)
  • 丘疹、落屑(皮膚の剥落)

臨床試験では、刺激感が最も多く報告されており、これは尿素が角質に浸透する際の反応と考えられます。ひどくしみる場合や悪化する場合は使用を中止し、医師にご相談ください

● 重大な副作用

特に重大な副作用の報告はありませんが、塗布部位に強い刺激・接触性皮膚炎様の反応が続く場合は使用を中止してください。

● 使用してはいけない部位

  • 眼・口などの粘膜には使用しない(眼粘膜等の粘膜への適用は禁忌)
  • 傷・びらん(皮膚がただれている部位)への直接塗布は刺激が強くなる可能性があります

● 併用注意

尿素外用薬自体に重大な薬物相互作用の報告はありませんが、ステロイド外用薬との混合・重ね塗りについては医師・薬剤師の指示に従ってください。混合によって両剤の効果が変化することがあります。

● こんな方は事前に医師にご相談を

  • 皮膚の傷・びらん・湿疹が強く炎症を起こしている方
  • 妊娠中・授乳中の方、または妊娠の可能性がある方(治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用)
  • 小児(特に乳幼児)への使用は医師の指示のもとで

● 日常生活での注意

  • 外用薬であるため、眠気など全身への影響はほとんどなく、自動車運転への制限はありません
  • アルコールとの相互作用はありませんが、飲酒後の入浴で皮膚が敏感になっている際は刺激を感じやすくなることがあります
  • 市販品(パスタロンM20αなど)も存在しますが、医療用製剤(処方薬)とは規格・適応が異なります。医師の診断のもと処方されるものを使用してください

5. 薬価と費用

パスタロンの薬価は以下のとおりです(2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づく)。

外用保湿薬であるため、通常は100g〜250g程度をまとめて処方されることが多く、処方期間・処方量に応じて費用が変動します。

パスタロン 10%製剤(ソフト軟膏・クリーム)

薬剤名 1gあたりの薬価 100g処方時の薬価 100g処方時の自己負担(3割)
パスタロンソフト軟膏10%(先発品) 4.0円 400円 約120円
パスタロンクリーム10%(先発品) 4.0円 400円 約120円
尿素軟膏・クリーム10%(後発品) 約2.6〜3.4円 約260〜340円 約78〜102円

パスタロン 20%製剤(ソフト軟膏・クリーム)

薬剤名 1gあたりの薬価 100g処方時の薬価 100g処方時の自己負担(3割)
パスタロンソフト軟膏20%(先発品) 4.2円 420円 約126円
パスタロンクリーム20%(先発品) 4.2円 420円 約126円
尿素軟膏・クリーム20%(後発品) 約2.6〜3.5円 約260〜350円 約78〜105円

※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。後発品の薬価はメーカーにより異なります。処方量・剤形により費用は変動します。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: パスタロン10%と20%はどう使い分けますか?

A1: 10%製剤は主に保湿・水分補給が目的で、老人性乾皮症・アトピー皮膚などの「乾燥・かゆみ」に用いられます。20%製剤は角質融解作用が強く、かかとのひび割れ・魚鱗癬・掌蹠角化症など「硬く肥厚した角質」に適しています。医師が病態に応じて選択しますので、自己判断での変更は避けてください。

Q2: 塗るとひりひりするのですが、使い続けていいですか?

A2: 塗布直後の軽いぴりぴり感・灼熱感は尿素製剤では比較的多く経験されます。特に傷・ひび割れがある部位では刺激を強く感じます。軽度で徐々に慣れる場合は様子を見ても構いませんが、強い痛みや赤み・湿疹化が続く場合は使用を中止して医師に相談してください。

Q3: ステロイド外用薬と一緒に使えますか?

A3: 使える場合がほとんどですが、混合や同じタイミングでの重ね塗りについては医師・薬剤師の指示に従ってください。一般的に、炎症が強い急性期はステロイド外用薬を先に使い、落ち着いてからパスタロンで保湿維持する、という流れが皮膚科診療ではよく行われます。

Q4: 顔にも使えますか?

A4: 添付文書では顔への使用を禁止してはいませんが、顔は皮膚が薄く刺激を受けやすいため、刺激症状が出やすい部位です。特に20%製剤は顔への使用には十分な注意が必要で、医師の指示なく自己判断で顔に使用するのは避けてください。

Q5: 子どもに使っても大丈夫ですか?

A5: 小児への使用は医師の判断のもとで行われています。乳幼児の皮膚は特にデリケートなため、使用部位・量・頻度については必ず医師の指示に従ってください。

Q6: 市販のパスタロン(M20αなど)と処方薬は何が違いますか?

A6: 佐藤製薬から市販の「パスタロンM20α」なども販売されていますが、医療用処方薬とは添加物や規格が異なります。医療用製剤は診断に基づいて処方されるもので、医師が適応・用量を判断して処方します。「どれでも同じ」と考えず、診察を受けて適切なものを使用しましょう。

Q7: どれくらいで効果が出ますか?

A7: 保湿効果は使用開始後比較的早期(数日〜1〜2週間)から実感できることが多いです。角化症・肥厚した角質の改善には2〜4週間以上の継続使用が必要なことが多く、焦らず継続することが大切です。乾燥が再発しやすい季節には継続的なケアが推奨されます。


7. 皮膚科専門医解説 パスタロンの要点まとめ

  • 適応:老人性乾皮症・アトピー皮膚・進行性指掌角皮症・足蹠部皸裂性皮膚炎・掌蹠角化症・毛孔性苔癬・魚鱗癬などの乾燥性・角化性皮膚疾患
  • 有効成分:尿素(天然保湿因子の構成成分)。10%は保湿主体、20%は角質融解主体
  • 剤形:クリーム・ソフト軟膏・ローション(10%/20%)。部位・症状で使い分け
  • 使い方:1日2〜3回、清潔な皮膚によくすり込む。入浴後すぐの使用が効果的
  • メリット:ノンステロイドで長期使用しやすく、炎症のない乾燥・角化に広く対応
  • 注意点:粘膜・びらん部位への塗布は避ける。塗布後の強い刺激・悪化時は中止して受診
  • 費用:先発品100g処方で約120〜126円(3割負担)。後発品ならさらに安価

乾燥・角化した皮膚は、適切に保湿・ケアを続けることで症状の再発を抑えることができます。「市販の保湿クリームを塗っても改善しない」「かかとのひび割れが繰り返す」「全身がかゆくてしかたない」というお悩みには、皮膚科での正確な診断と適切な薬剤選択が重要です。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な乾燥・角化性皮膚疾患治療をご提案しています。 「皮膚の乾燥・かゆみ・角化が気になる」「市販品では改善しない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会


参考文献

  1. 佐藤製薬株式会社. パスタロンソフト軟膏10%・パスタロンクリーム10%・パスタロンローション10% 添付文書(第2版, 2025年4月改訂).
    ▶ 製造販売元による公式情報。効能・効果・用法用量・禁忌・副作用・相互作用が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  2. 佐藤製薬株式会社. パスタロンソフト軟膏20%・パスタロンクリーム20% 添付文書(第2版, 2025年4月改訂).
    ▶ 20%製剤の公式情報。臨床試験成績・薬効薬理(水分保有力増強・角質融解作用)の根拠資料を含む。

  3. 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日本皮膚科学会雑誌 2021;131(13):2691-2777.
    ▶ アトピー性皮膚炎のスキンケアにおける保湿外用薬の位置づけと使用推奨を記載。尿素製剤はバリア機能補助としての保湿外用薬として推奨される。


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