【消風散(しょうふうさん)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:アトピー性皮膚炎/湿疹・皮膚炎/蕁麻疹

消風散(しょうふうさん)は、「かゆみが強い」「患部がジュクジュクしている」「触ると熱っぽい」——この三拍子がそろった慢性皮膚疾患に対して、皮膚科で処方される代表的な漢方薬です。湿疹・皮膚炎から蕁麻疹・水虫・あせも・アトピー性皮膚炎まで幅広く活用されており、西洋薬との組み合わせで使われることも少なくありません。

実は「消風散」という名称には、漢方的な治療哲学が凝縮されています。その思想から作用機序・使い方・注意点まで、皮膚科専門医の視点でわかりやすく解説します。


1. 消風散(しょうふうさん)とは

消風散は、13種類の生薬から構成される漢方エキス製剤です。医療用ではツムラ消風散エキス顆粒(医療用)(ツムラ22番)をはじめ、コタロー消風散エキス細粒、オースギ消風散エキスGなどが流通しています。

名称の由来

漢方では「風邪(ふうじゃ)がなければかゆみは生じない(無風不痒)」という考え方があります。つまりかゆみの根本原因は「風邪」であり、これを”消(しょう)し散(さん)ずる”ことこそが治療の本質——それが「消風散」の名の由来です。

項目 内容
製品名(代表) ツムラ消風散エキス顆粒(医療用)(ツムラ22番)
一般名 消風散エキス顆粒
製造販売 株式会社ツムラ(他:コタロー、オースギなど)
分類 漢方製剤(生薬・漢方)
剤形 顆粒(エキス剤)
後発品 なし(漢方製剤に先発・後発の区別はない)
保険適用 あり(医療用)
市販品 あり(第2類医薬品)

構成生薬(13味)

消風散は以下の13種類の生薬で構成されています。

役割 生薬名 主な働き
君薬(主役) 荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ)、牛蒡子(ゴボウシ)、蝉退(センタイ) 体表の風邪を散らし、かゆみを止める(疏風止痒)
臣薬(補佐) 蒼朮(ソウジュツ)、苦参(クジン)、木通(モクツウ) 熱を冷まし、湿邪を乾かして取り去る(清熱燥湿)
佐薬(調整) 石膏(セッコウ)、知母(チモ) 炎症の熱をさらに冷ます
佐薬(潤す) 当帰(トウキ)、地黄(ジオウ)、胡麻仁(ゴマニン) 血流を整え、皮膚を潤す
使薬(調和) 甘草(カンゾウ) 諸薬を調和する

2. 消風散の特徴

消風散の最大の特徴は、「かゆみを止める」「炎症の熱を冷ます」「湿気(ジュクジュク)を取り去る」「皮膚を潤す」という4つの働きを一剤で担う点です。

●「熱・風・湿」の三悪を同時に攻める

漢方では、かゆみを伴う皮膚炎は「風邪(ふうじゃ)+湿邪(しつじゃ)+熱邪(ねつじゃ)」が皮膚に侵入・蓄積した状態と捉えます。消風散はこの三者を同時に処理できる、皮膚疾患のための専用設計ともいえる処方です。

●疏風止痒(そふうしようよう)——風を散らしかゆみを止める

君薬である荊芥・防風・牛蒡子・蝉退は、体表部に存在する風邪を発散させ、かゆみを鎮める働きをします。蝉退(せみの抜け殻)は特に止痒(かゆみ止め)効果が知られ、漢方の皮膚科処方に欠かせない生薬の一つです。

●清熱燥湿(せいねつそうしつ)——熱を冷まし湿を乾かす

苦参・石膏・知母・木通が患部の熱感・赤み・ジュクジュクした分泌物に作用します。苦参(クジン)には抗炎症作用・抗真菌作用も報告されており、水虫の炎症にも有効とされる理由の一つです。

●養血潤燥(ようけつじゅんそう)——血を養い皮膚を潤す

当帰・地黄・胡麻仁が血流を整え、皮膚への栄養補給と保湿をサポートします。単に炎症を抑えるだけでなく、かゆみを繰り返しやすい皮膚体質そのものの改善も期待できる点が、この処方の奥深さです。

●適応する「証(しょう)」

消風散が合いやすい方には以下の傾向があります。

  • 体力が中等度以上で比較的丈夫な方
  • 夏場や汗をかいたあとにかゆみが増悪する
  • 患部が赤く熱感があり、ジュクジュクした浸出液を伴う
  • 夜間の掻痒(かゆみ)が強く、睡眠が妨げられる
  • 体質的に湿気がこもりやすく、汗かきの傾向がある

逆に、乾燥が主体の皮膚炎や体力が著しく低下している方、冷え症が強い方(寒証)には向かないことがあります。


3. 適応疾患と服用方法

適応疾患

消風散の公式添付文書に記載された効能・効果は以下のとおりです。

分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)

皮膚科臨床では、これらに加えてアトピー性皮膚炎の炎症期・湿潤期への補助療法として用いられることも多くあります。ただし、アトピーへの適用は添付文書上の効能外使用となるため、必ず医師の判断のもとで使用してください。

疾患 消風散が有効な状態像
湿疹・皮膚炎 赤みが強く浸出液を伴う急性期~亜急性期
蕁麻疹(じんましん) 熱感・かゆみが強い急性・慢性蕁麻疹
アトピー性皮膚炎 湿潤・渗出傾向が強い時期(補助療法)
水虫(足白癬) 趾間型でジュクジュクし、かゆみが強い状態
あせも(汗疹) 熱がこもって全体的にかゆい状態
皮膚そう痒症 熱感・湿感を伴う頑固なかゆみ

服用方法

通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に温湯で溶かして服用します。年齢・体重・症状に応じて適宜増減します。

3つの重要ポイント

  1. 食前または食間に服用:空腹時に服用することで生薬成分の吸収が高まります。食後服用では効果が落ちる場合があります。
  2. 温湯(ぬるま湯〜お湯)で溶いて飲む:顆粒をそのまま飲み込まず、温かいお湯に溶いて服用すると吸収が促進され、胃腸への負担も軽減します。
  3. 効果判定は4週間を目安に:漢方薬は即効性よりも体質改善を目指す側面があります。2〜4週間で効果を評価し、改善がみられない場合は処方の見直しを医師に相談してください。

4. 使用する上の注意点

比較的安全性の高い漢方薬ですが、甘草(カンゾウ)を含む処方であることに注意が必要です。

●主な副作用

  • 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、軟便、下痢
  • 発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹(過敏症)

消化器症状は特に胃腸が弱い方(虚証の方)に出やすい傾向があります。

●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)

副作用 症状 原因生薬
偽アルドステロン症 浮腫、体重増加、血圧上昇、低カリウム血症 甘草(カンゾウ)
ミオパチー 脱力感、四肢痙攣・四肢麻痺 低カリウム血症の結果
肝機能障害・黄疸 倦怠感、食欲低下、黄疸、肝機能値上昇

服用中にむくみの急激な増加・体重増加・体に力が入らない・黄疸などの症状が現れた場合は、ただちに服用を中止し医療機関を受診してください。

●甘草(カンゾウ)含有に関する重要な注意

消風散にはカンゾウが含まれています。偽アルドステロン症のリスクがあるため、以下の点に留意が必要です。

  • 他の漢方薬(芍薬甘草湯・補中益気湯・抑肝散など多数)とのカンゾウ重複に注意
  • グリチルリチン酸含有製剤(グリチロン®配合錠など)との併用注意
  • 定期的な血清カリウム値・血圧のモニタリングが推奨されます

●こんな方は事前に医師にご相談を

  • 本剤の成分に対してアレルギー歴のある方
  • 胃腸虚弱な方(消化器副作用が出やすい)
  • 著しく体力が低下している方
  • 高血圧・心疾患・むくみのある方(偽アルドステロン症のリスク)
  • 肝機能障害のある方
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある方(有益性が危険性を上回る場合のみ投与)
  • 授乳中の方
  • 高齢者(一般に生理機能が低下しているため減量を考慮)
  • 小児(小児を対象とした臨床試験は実施されていない)

●日常生活での注意

  • アルコール:肝臓への負担が増すため、服用中は控えめにしてください。
  • 自動車運転:眠気を生じさせる成分は含まれていないため、運転への制限はありません。
  • 市販品について:第2類医薬品として市販品も存在しますが、証(体質・症状)に合わないと効果が出にくいだけでなく副作用のリスクもあります。自己判断での長期使用は避け、皮膚科専門医への相談を推奨します。

5. 薬価と費用

消風散エキス顆粒の薬価は、1gあたり12.1円(2026年度薬価基準・2026年4月改定)です。なお、漢方エキス製剤には先発品・後発品の区別がないため、薬価は1種類のみです。

通常の1日用量(7.5g)で計算すると、1日薬価は90.75円となります。

薬剤名 1gあたり薬価 14日分の薬価(1日7.5g) 14日分の自己負担額(3割負担)
ツムラ消風散エキス顆粒(医療用) 12.1円 1,270.5円 約381円
薬剤名 1gあたり薬価 30日分の薬価(1日7.5g) 30日分の自己負担額(3割負担)
ツムラ消風散エキス顆粒(医療用) 12.1円 2,722.5円 約817円

※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)。漢方製剤に先発品・後発品の区別はありません。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: 消風散はどれくらいで効きますか?

A1: 症状の重さや体質によって異なりますが、急性のかゆみ・炎症には数日〜1〜2週間で改善を実感する方もいます。慢性の湿疹やアトピーの体質改善を目的とする場合は4〜8週間以上の継続が必要なことが多いです。2〜4週間服用しても改善がみられない場合は、医師に相談して処方を見直すことが大切です。

Q2: アトピー性皮膚炎に消風散は使えますか?

A2: 添付文書上はアトピー性皮膚炎の記載はありませんが、かゆみが強く湿潤・浸出傾向のある時期には皮膚科専門医の判断のもとで使用されることがあります。ステロイド外用薬や保湿剤などと組み合わせた補助療法として活用されるケースが多く、自己判断での使用は避けてください。

Q3: 乾燥タイプの湿疹にも効きますか?

A3: 消風散は分泌物(浸出液)があり湿潤している状態に適した処方です。皮膚が乾燥してかさかさしている、熱感がない、体が冷えやすいというタイプの湿疹には不向きで、この場合は当帰飲子(とうきいんし)などの別処方が選ばれます。

Q4: 他の漢方薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

A4: 消風散には甘草(カンゾウ)が含まれているため、他の甘草含有漢方薬(芍薬甘草湯・補中益気湯・抑肝散など)と重複服用すると偽アルドステロン症のリスクが高まります。必ず医師・薬剤師に服用中のすべての薬を伝えてください。

Q5: 市販の消風散と処方薬は何が違いますか?

A5: 有効成分(生薬の種類・量)は基本的に同じですが、医療用は医師が患者の証(体質)を確認した上で処方するため、より適切な使用が期待できます。また医療機関で処方される場合は保険が適用され費用が抑えられます。市販品で効果を実感できない場合や症状が重い場合は、皮膚科への受診をお勧めします。

Q6: 妊娠中・授乳中でも飲めますか?

A6: 妊婦または妊娠の可能性がある方への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとされています。自己判断での使用は避け、必ず担当医にご相談ください。

Q7: 飲み忘れたときはどうすればよいですか?

A7: 気づいた時点でできるだけ早く服用してください。ただし次の服用時間が近い場合は1回飛ばし、次の通常の時間に服用します。2回分を一度に服用することは避けてください。


7. 皮膚科専門医解説 消風散の要点まとめ

  • 適応:かゆみが強く、浸出液を伴う湿疹・蕁麻疹・水虫・あせも・皮膚そう痒症などの慢性皮膚病。アトピー性皮膚炎の湿潤期補助にも
  • 特徴:13種の生薬が「かゆみ(風)・ジュクジュク(湿)・熱感(熱)」の三悪を同時に処理する
  • 飲み方:1日7.5gを2〜3回に分け、食前または食間に温湯で溶いて服用
  • 合う方:体力中等度以上、夏悪化・汗かき・熱感・浸出液あり
  • 合わない方:乾燥型皮膚炎、体力低下・冷え症(寒証)の方
  • 注意点:カンゾウ含有のため、他の甘草含有漢方薬との重複や偽アルドステロン症に要注意。むくみ・体重増加・脱力感が出たら即受診
  • 費用:30日分(3割負担)で約817円(薬剤費のみ)

消風散は「病名」ではなく「証(体質・症状のパターン)」に合わせて使うことが重要です。「かゆい湿疹だから全員に消風散」ではなく、患者さんの体質・症状を丁寧に見極めた上で処方することが、漢方治療の本質です。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルと体質に合わせた最適な湿疹・アトピー・かゆみ治療をご提案しています。「かゆみがなかなか取れない」「ジュクジュクした湿疹が繰り返す」「漢方で体質から改善したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会


参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 湿疹診療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(4).
    ▶ 国内の湿疹・皮膚炎治療における標準的指針。漢方薬は外用ステロイドなどとの補完療法として位置付けられており、かゆみのコントロールを目的とした活用が記載されている。

  2. 株式会社ツムラ. ツムラ消風散エキス顆粒(医療用)添付文書(2023年12月改訂). PMDA.
    ▶ 製造販売元による公式情報。効能・効果(分泌物が多くかゆみの強い慢性皮膚病)、用法・用量(1日7.5gを食前または食間)、重大な副作用(偽アルドステロン症・ミオパチー)などが詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  3. Ito T, et al. Effectiveness of traditional Japanese Kampo medicine in dermatology: review of the literature. Journal of Dermatology 2014;41(2):113-122.
    ▶ 皮膚科領域における漢方薬(消風散を含む)のエビデンスをレビューした論文。止痒・抗炎症作用のメカニズムと臨床上の位置付けを整理している。


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