【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:皮膚感染症/湿疹・皮膚炎
テラ・コートリル軟膏(一般名:オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン軟膏)は、テトラサイクリン系抗生物質とステロイドを1本に配合した外用配合剤です。「かき壊してジュクジュクしてしまった湿疹」「とびひや毛のう炎などの化膿性皮膚疾患」「外傷・やけどの二次感染予防」など、炎症と細菌感染が同時に起きている皮膚トラブルに対して皮膚科で長く処方されてきた薬剤です。
実は、テラ・コートリルには「炎症を鎮める盾(ステロイド)」と「細菌をたたく矛(抗生物質)」の2つが同居しています。本記事では、その作用機序から適切な使い方・副作用・薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. テラ・コートリル軟膏とは
テラ・コートリル軟膏(一般名:オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン軟膏)は、テトラサイクリン系抗生物質「オキシテトラサイクリン塩酸塩」と、副腎皮質ステロイド「ヒドロコルチゾン」を配合した外用抗菌・抗炎症薬です。軟膏の色が淡黄〜黄色であることが特徴的で、外観でも識別しやすい薬剤です。
1g中にオキシテトラサイクリン塩酸塩30mg(力価)・ヒドロコルチゾン10mgを含有し、基剤はワセリン+流動パラフィンです。製造販売は陽進堂ホールディングス株式会社(旧:陽進堂)が担っています。
市販薬として「テラ・コートリル軟膏a」(指定第2類医薬品)も存在します。処方薬の医療用医薬品「テラ・コートリル軟膏」と有効成分・含量は同一ですが、効能・効果の記載範囲が異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | テラ・コートリル軟膏 |
| 一般名 | オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン軟膏 |
| 製造販売 | 陽進堂ホールディングス株式会社 |
| 分類 | 抗生物質・副腎皮質ホルモン配合外用剤 |
| 剤形 | 軟膏(淡黄〜黄色) |
| 規格 | 5g / 25g |
| 後発品 | なし(2026年5月時点) |
| 市販薬 | あり(テラ・コートリル軟膏a) |
2. テラ・コートリル軟膏の特徴
テラ・コートリル軟膏の最大の特徴は、抗菌作用と抗炎症作用を”一剤”で発揮できる点です。ステロイドだけでは細菌感染の悪化を招く恐れがあり、抗生物質だけでは炎症の鎮静が不十分なことがあります。この「盾と矛」を1本の軟膏に封じ込めた設計が、ジュクジュクした感染性皮膚炎に高い適合性をもたらしています。
●オキシテトラサイクリン塩酸塩(抗生物質成分)の働き
オキシテトラサイクリンは、細菌のリボソームに結合してタンパク質合成を阻害し、増殖を抑える静菌的な抗菌薬です。グラム陽性菌・グラム陰性菌・スピロヘータ・リケッチア・クラミジアなど幅広い微生物に対して抗菌作用を示すため、化膿した皮膚病変に広くカバーをかけることができます。
●ヒドロコルチゾン(ステロイド成分)の働き
ヒドロコルチゾンは、ステロイドの強さ(ランク)が5段階中最も弱い「ウィーク(Weak)」に分類される副腎皮質ホルモンです。皮膚の炎症反応を抑制し、熱感・発赤・腫脹・かゆみを軽減します。作用が穏やかなため、比較的使用部位を選ばずに処方できますが、顔・陰部などへの長期使用は注意が必要です。
●3つの重要ポイント
- 感染+炎症を同時に攻略:化膿を伴う皮膚炎に対し、1剤で抗菌と抗炎症の両面に対応できる
- 広域スペクトラム:グラム陽性・陰性菌両方に有効。皮膚常在菌による二次感染を幅広くカバー
- スイッチOTCあり:処方薬と同成分の市販薬が存在し、受診前の一時的な使用選択肢がある(ただし自己判断の長期使用は避けること)
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
テラ・コートリル軟膏の主な適応症(添付文書準拠)は以下のとおりです。
適応菌種:オキシテトラサイクリン感性菌
- 深在性皮膚感染症・慢性膿皮症(せつ、よう、蜂巣炎など)
- 湿潤・びらん・結痂を伴うか、二次感染を併発している湿疹・皮膚炎群
- 進行性指掌角皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎 を含む
- 外傷・熱傷および手術創等の二次感染
- 歯周組織炎・感染性口内炎・舌炎(口腔内疾患)
⚠️ 使えない疾患について:水虫(白癬)・カンジダ症などの真菌症、水痘・単純疱疹などのウイルス感染症には使用できません。ステロイドの免疫抑制作用により、これらの感染症を増悪させる恐れがあります。
使用方法
| 部位 | 用法 |
|---|---|
| 皮膚病変 | 1日1〜数回、患部に直接塗布・塗擦するか、無菌ガーゼ等にのばして貼付 |
| 口腔内(歯周炎など) | 毎日または隔日に少量を患部に注入または塗擦 |
3つの重要ポイント(使い方編)
- 塗る前に患部を清潔に:シャワーや洗浄後、患部が清潔な状態で使用すると効果が安定します
- ラップフィルムで密封しない:密封法(ODT)を行うとステロイドの吸収が著しく増大し、予期せぬ副作用が出る恐れがあります
- 衣服汚染に注意:軟膏は黄色いため衣服につくと落ちにくくなります。通気性のよいガーゼで覆うと安心です
4. 使用する上の注意点
●禁忌(使用してはいけない場合)
以下に該当する場合は使用できません。必ず医師にご相談ください。
- オキシテトラサイクリン耐性菌・非感性菌による皮膚感染(感染症を増悪させる恐れ)
- 真菌症(白癬・カンジダ症など)・皮膚結核・単純疱疹・水痘・種痘疹(感染症増悪)
- 本剤の成分またはテトラサイクリン系抗生物質に対して過敏症の既往歴がある方
- 潰瘍(ベーチェット病を除く)・第2度深在性以上の熱傷・凍傷(治癒を妨げる恐れ)
●主な副作用
| 副作用の種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 過敏症・感作 | そう痒、発赤、腫脹、丘疹、小水疱 |
| ステロイド局所副作用 | ステロイド痤瘡(ニキビ様皮疹)、皮膚萎縮、毛細血管拡張、多毛、色素脱失 |
| 二次感染 | 真菌・細菌による日和見感染 |
| 眼部 | 眼圧亢進、緑内障、後嚢白内障(まぶた周囲への使用時) |
過敏症の兆候(かゆみ・発赤・腫脹・丘疹・小水疱)が現れた場合は、ただちに使用を中止して医師に相談してください。
●重大な注意(長期・広範囲使用)
大量または長期にわたる広範囲の使用や密封法(ODT)を行うと、副腎皮質ステロイドを全身投与した場合と同様な症状(副腎抑制など)が現れることがあります。また、まぶたへの長期使用は眼圧亢進・緑内障のリスクとなるため注意が必要です。
●顔・陰部・乳幼児への使用
顔面や陰部は皮膚が薄く、ステロイドの吸収率が高いため副作用が出やすい部位です。これらの部位への使用は短期間・最小範囲に限り、長期連用は避けてください。乳幼児に使用する際は、保護者が管理し医師の指示に従ってください。
●こんな方は事前に医師にご相談を
- テトラサイクリン系抗生物質でアレルギー歴のある方(禁忌)
- 感染が広範囲・深部に及んでいる方
- 妊娠中・授乳中の方
- 乳幼児・小児(保護者の管理のもとで使用)
- 他のステロイド外用薬や抗生物質配合外用薬を使用中の方(過剰投与のリスク)
●日常生活での注意
- アルコール:外用薬のため直接の飲み合わせ問題はありませんが、内服薬の有無と合わせて確認を
- 自動車運転:外用薬のため運転制限はありません
- 市販薬(OTC):「テラ・コートリル軟膏a」として薬局・ドラッグストアで購入可能。ただし5〜6日使用しても改善しない場合は必ず受診してください
5. 薬価と費用
テラ・コートリル軟膏の薬価は1gあたり25.1円(2026年度薬価基準(2026年4月改定))です。規格は5gと25gの2種類があります。後発品(ジェネリック)は2026年5月時点で販売されていません。
処方量の目安と費用
皮膚科では病変の面積・程度に応じて処方量が決まります。下記は一般的な処方例です。
| 規格 | 薬価 | 3割負担の場合(薬剤費のみ) |
|---|---|---|
| 5g × 1本 | 125.5円 | 約38円 |
| 5g × 2本(10g) | 251円 | 約75円 |
| 25g × 1本 | 627.5円 | 約188円 |
| 25g × 2本(50g) | 1,255円 | 約377円 |
※薬剤費のみの目安です。診察料・処方箋料・調剤料・薬局での調剤技術料などは別途加算されます。後発品はありません。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: テラ・コートリル軟膏はどんな時に処方されますか?
A1: 主に「炎症+細菌感染が同時に起きている皮膚トラブル」に処方されます。具体的には、湿疹をかき壊してジュクジュクした状態、とびひや毛のう炎などの化膿性皮膚疾患、外傷・軽いやけどの二次感染予防などです。純粋な湿疹(感染なし)には通常ステロイド単剤が使われます。
Q2: ニキビに使えますか?
A2: ニキビへの適応はなく、原則として使用できません。ステロイド成分(ヒドロコルチゾン)の免疫抑制作用がアクネ菌の増殖を助長し、「ステロイド痤瘡」としてかえってニキビが悪化する可能性があります。炎症性ニキビには適切なニキビ治療薬(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど)をご使用ください。
Q3: 水虫・たむしに使えますか?
A3: 使用できません(禁忌)。 水虫・たむしは真菌(カビ)が原因であり、テラ・コートリルに含まれる抗生物質に抗真菌作用はありません。加えてステロイドが真菌の増殖を助長し、症状を著しく悪化させる可能性があります。必ず抗真菌薬を使用してください。
Q4: 顔に塗っても大丈夫ですか?
A4: 顔は皮膚が薄くステロイドの吸収率が高い部位です。医師の指示に従い短期間・最小範囲に限って使用することは可能ですが、長期にわたる連用は酒さ様皮膚炎(赤ら顔)・皮膚萎縮・ニキビ様皮疹などの副作用リスクがあるため、自己判断での継続使用は避けてください。
Q5: ジェネリックはありますか?
A5: 2026年5月時点では、テラ・コートリル軟膏の後発品(ジェネリック医薬品)は販売されていません。
Q6: 市販薬(テラ・コートリル軟膏a)と処方薬の違いは何ですか?
A6: 有効成分の種類・含量は同一です。主な違いは効能・効果の記載範囲で、市販薬は「化膿を伴う湿疹・皮膚炎、化膿性皮膚疾患(とびひ・毛のう炎など)」が中心です。外傷・熱傷の二次感染など、より幅広い用途には処方薬が対応します。また、5〜6日使用しても改善しない場合は必ず医師を受診してください。
Q7: やけどに使えますか?
A7: 軽微な外傷・熱傷の二次感染予防の目的で処方されることがあります。ただし、第2度深在性以上(皮膚の深層まで損傷した)やけどは禁忌です。重症のやけどは医療機関を受診してください。
7. 皮膚科専門医解説 テラ・コートリル軟膏の要点まとめ
- 成分:テトラサイクリン系抗生物質(オキシテトラサイクリン塩酸塩)+最弱ランクのステロイド(ヒドロコルチゾン)の配合外用剤
- 適応:化膿を伴う湿疹・皮膚炎、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷の二次感染、歯周組織炎など
- 使い方:1日1〜数回、患部に直接塗布。密封(ラップ等)は厳禁
- 禁忌:水虫・カンジダなどの真菌症、ウイルス感染症(水痘・単純疱疹)、第2度深在性以上のやけど、テトラサイクリン過敏症
- 副作用:過敏症の兆候、長期使用によるステロイド局所副作用(皮膚萎縮・ニキビ様皮疹など)、眼圧亢進に注意
- 費用:5gチューブ1本 約38円(3割負担、薬剤費のみ)。後発品なし
- ニキビへの使用は原則不可:ステロイド成分でかえって悪化する恐れあり
皮膚の感染と炎症が複合している場面では、適切な薬剤の選択が回復の速さに直結します。「かき壊してジュクジュクが止まらない」「とびひが広がっている」といった状態での自己判断は、かえって治癒を遅らせることがあります。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な皮膚感染症・湿疹治療をご提案しています。 「化膿した皮膚炎が繰り返す」「とびひや毛のう炎をしっかり治したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
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陽進堂ホールディングス株式会社. テラ・コートリル軟膏 添付文書(2023年10月改訂).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・適応菌種・用法用量・禁忌・副作用・使用上の注意が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要根拠。 -
陽進堂株式会社. テラ・コートリル軟膏 インタビューフォーム(2007年11月 第1版).
▶ 有効成分の薬理作用(オキシテトラサイクリンの蛋白合成阻害・ヒドロコルチゾンの抗炎症作用)に関するデータを含む基礎的資料。 -
日本皮膚科学会. 皮膚感染症ガイドライン. 日本皮膚科学会雑誌 2009;119(9).
▶ 細菌性皮膚感染症に対する外用抗菌薬・ステロイド配合剤の使用原則と使用期間に関する指針が示されている。
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