蕁麻疹とは
蕁麻疹とは、赤く、くっきりとした皮膚のふくらみ(膨疹)が突然現れ、
しばらくすると跡も残さずに消えてしまう病気です。
「蕁麻(じんま)」と難しい漢字ですが、これは「イラクサ」とも読み、イラクサという植物に触れると、同じような皮膚の症状が現れることから、「蕁麻疹(じんましん)」という名前がつきました。痒みを伴うことが多く、体のあちこちに現れては数時間以内(長くても1日)には消えるということを繰り返します。数ミリ程度のブツブツや地図状や円形のものなど、形は様々です。また、重症の場合は、のどの粘膜が腫れ、呼吸困難になる場合もあります。
症状が現れてから6週間以内のものを急性じんましん、6週間以上のものを慢性じんましんと呼びます。急性じんましんは、細菌やウイルス感染、薬剤、食べ物などが原因として考えられますが、慢性じんましんの約70~80%が原因不明です。
このページでは皮膚科専門医が、蕁麻疹の治し方について解説します。
江坂駅前花ふさ皮ふ科では、皮膚科専門医が蕁麻疹の治療を行っています。お困りの方はお気軽にご相談ください。
蕁麻疹について動画でも解説しています!
原因
じんましんの症状は、ヒスタミンという物質によって生じます。ヒスタミンは、血管に作用することで皮膚の赤みやふくらみを、神経に作用することで痒みを引き起こします。ヒスタミンは、何らかの刺激によって皮膚のマスト細胞から放出されます。
じんましんは、特別な原因なく発症するタイプ(特発性)と、特定の刺激に反応して発症するタイプ(刺激誘発型)に大きく分かれます。じんましんの患者さんの7割以上が、特発性(原因不明)のタイプと言われています。
刺激誘発型のタイプには、以下のような種類があります。
- 物理性蕁麻疹:
機械的な摩擦や圧迫、寒冷、温熱、日光、水などの物理的刺激により起こります。多くは、数分~数時間で消えます。 - コリン性蕁麻疹:
入浴や運動などで汗をかく刺激で現れます。一つ一つの膨疹の大きさが1~4mm程度と小さく、ピリピリ・チクチクとした痛みを伴うことがあります。小児から若者に多くみられます。 - アレルギー性蕁麻疹:
食べ物や薬剤、植物、昆虫の毒素などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こります。 - アスピリン蕁麻疹:
アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)、造影剤、食品添加物(防腐剤、人口色素)、食品中のサリチル酸などにより起こるもののことをいいます。 - 血管性浮腫:
唇やまぶたなどが突然腫れあがり、2~3日して消えます。痒みを伴いません。まれに遺伝が関係している場合があります。
検査
特定の食物、薬品、植物、動物、昆虫の毒素などに対するアレルギーが原因のじんましんを疑う場合、採血や皮膚を用いた検査(プリックテスト、皮内テスト)を行うことがあります。プリックテスト、皮内テストが必要な場合は、総合病院へご紹介させていただきます。
機械的な摩擦や圧迫、寒冷、温熱、日光、水などの物理的刺激が原因のじんましんでは、それぞれの刺激を与えて実際にじんましんが誘発されるか確認するテストを行うこともあります。誘発テストが必要な場合は、総合病院へご紹介させていただきます。
皮膚以外にも症状(倦怠感、発熱、関節痛など)があり、甲状腺疾患や膠原病、血管炎など全身の病気が疑われる場合は、それらの血液検査を行うことがあります。蕁麻疹は内臓の病気からくるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、そのような方はごく少数です。
長期間継続している特発性じんましんの場合は、血液検査などでは原因を特定することは難しいです。
治療
特定の刺激や負荷により誘発されている場合、その原因となる刺激を回避することが最も大切です。特発性じんましんの場合は、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(じんましんを引き起こすヒスタミンの働きを抑える薬)などの飲み薬による治療が中心となります。原因不明だからといって、諦めずに根気よく治療することが大切です。
じんましんの治療では、第一目標を「抗ヒスタミン薬などの飲み薬により、じんましんの出現を完全に抑える」、最終目標を「無治療でじんましんが出ない状態」とします。
抗ヒスタミン薬を1~2週間継続し、通常用量で効果が不十分であった場合は、内服量を増やしたり、別の抗ヒスタミン薬に変更したりして、一人一人に適した治療法を模索します。
抗ヒスタミン薬のみで不十分な場合は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)や抗ロイコトリエン薬、免疫抑制薬、ステロイド薬などを使用することがありますが、保険適応ではない場合もあります。最近では、重症の難治性じんましんにオマリズマブ(注射薬)という注射薬が発売になりました。0、4、8、12週と4回投与する抗IgE抗体製剤です。効果は高いですが、1回約17,500円程度(3割負担)する高価な薬剤になります。オマリズマブの注射が必要な場合は総合病院にご紹介します。
飲み薬によりじんましんの出現を抑えることができたら、お薬の量や回数を少しずつ減らしていきます。特発性のじんましんでは、症状が出なくなっても、しばらくは抗ヒスタミン薬を継続した方が再燃しにくいと言われています。自己判断で急にお薬をやめないようにしましょう。
注意点
原因不明のじんましんでも、睡眠不足やストレス、疲労が悪化因子となることがあります。ストレスや過労を避けることも大切です。
食物が原因のじんましんにも、アレルギー性と非アレルギー性のものがあります。疑われる食品を食べた時に、毎回症状が出るのかどうか確認してみましょう。
原因として多い食物 | 機序 | 検査 | 症状 | |
---|---|---|---|---|
アレルギー性 | エビ、カニ、果物 |
食品中のアレルゲンが、IgEを介してマスト細胞を活性化 |
血液検査や皮膚検査で調べられる |
原因の食物を食べた時に毎回出る |
非アレルギー性 | 青魚(アジ、サバ) |
食品中のヒスタミン様物質が直接血管に働く |
血液検査や皮膚検査では陽性反応が出ない |
食品の食べ方や量、その日の体調などによって毎回出るわけではない |
ヒスタミンは、皮膚や鼻ではアレルギーを引き起こす物質ですが、脳内では日中眠くならないようにする、活動量を増やす、記憶力を高めるなどの重要な働きをしています。
抗ヒスタミン薬は脳に移行して脳内でのヒスタミンの働きをブロックするので、人によっては眠くなることがあります。また、自分でも気付かないうちに仕事や勉強のパフォーマンスが落ちていることがあります(インペアード・パフォーマンス)。このような副作用を防ぐためには、脳に移行しにくい抗ヒスタミン薬を選ぶことが大切です。しかし、人によって一番効く薬や副作用の出やすい薬が違いますので、最も合ったお薬を一緒に選んでいきましょう。
個人差はありますが、原因不明のじんましんの場合、発症から治癒までに平均2年かかるというデータがありますが、完治するまでに何年もかかることも少なくありません。不安に思われる方もいらっしゃると思いますが、治療を続けることで薬がなくても症状が出なくなることが期待できます。焦らず、じっくり治療していきましょう。