掌蹠膿疱症とは
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に、左右対称性に水疱(水ぶくれ)、
膿疱(膿をもったプツプツ)、鱗屑(フケのようなカサカサ)が
繰り返しできる病気です。
膿疱の中に菌やウイルスなどの病原体は入っていないため(これを無菌性膿疱と言います)、直接触れても他の人にうつることはありません。
江坂駅前花ふさ皮ふ科では、皮膚科専門医による掌蹠膿疱症の治療を実施しております。 お悩みの方はお気軽にご相談下さい。
原因
掌蹠膿疱症の原因は、はっきり分かっていませんが、以下の要因が発症に関わっていると言われています。
感染
(扁桃炎、虫歯、副鼻腔炎、中耳炎など喫煙
金属アレルギー
(歯科金属など)
症状
40~50歳代に多く発症しますが、20~30歳代でも発症します。
掌蹠膿疱症は、手のひら(中央、母指球、小指球など)や足の裏(土踏まず、かかと、足の縁)に以下のような症状が出ます。
紅斑
炎症によって、早期に赤み(紅斑)が出現。
小水疱、膿疱
1~5mm程度の、透明な小水疱や黄色い小膿疱ができる。
膿疱の中に菌は存在しない(無菌性膿疱)。痒みを伴うこともある。
痂皮、鱗屑、落屑
膿疱が茶色く濁ってカサブタ(痂皮)になり、白いカサカサ(鱗屑)や皮むけ(落屑)が出現。 これらの症状が繰り返され、混在してみられます。
手の平や足の裏以外に、肘や膝、頭、お尻などにカサカサした紅斑が出ることもあります。
爪の下にも膿疱ができたり、凹みや変形、爪の下が分厚くなったりすることもあります。
掌蹠膿疱症の患者さんの約10~45%で、関節や骨に炎症が生じて痛むことがあります(掌蹠膿疱症性骨関節炎)。多くみられるのは胸骨と鎖骨をつなぐ関節(胸肋鎖関節)、胸骨同士をつなぐ関節(胸骨結合)で、他にも首や腰、手足のなどの関節でも痛みを生じることがあります。
糖尿病や高血圧、高脂血症、高血圧、甲状腺疾患、下痢や便秘などの合併症があります。気になる症状があれば、ご相談下さい。
治療
薬物療法(塗り薬、飲み薬、注射薬)や紫外線による治療と、悪化因子の除去があります。
外用療法
掌蹠膿疱症に対する基本的な治療法は外用療法(塗り薬)です。
ステロイド外用薬
炎症を抑える効果があります。痒みや皮疹の重症度に応じて、ステロイドの強さを選びます。
活性型ビタミンD3外用薬
皮膚のターンオーバーを正常化し、厚くなった角質(鱗屑や肥厚)を元に戻す働きをします。膿疱や水疱を抑える効果もあります。
保湿剤
手のひらや足の裏は、毛穴がなく皮脂が乏しいため乾燥しやすい部分です。その上、角層が厚くてひび割れを起こしやすいため、保湿剤でしっとりさせておくことも大切です。
内服治療
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬
痒みが強い場合は、外用薬と併用することがあります。
ビタミンA誘導体(エトレチナート)
皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えるお薬です。副作用として、唇がカサカサして荒れたり、手のひらや足の裏の皮膚がフケ状にはがれたりすることがあります。
また、精子を作る機能や胎児に影響を与えることがあるため、内服中だけでなく、内服中止後も男性は6ヶ月間、女性は2年間の避妊が必要です。他に、肝機能異常や中性脂肪の上昇などをきたすことがあるので、定期的な血液検査が必要です。
ステロイド内服薬
過炎症を抑えるお薬です。副作用もあるので、短期間のみ使用を検討します。
ビオチン
ビオチン(ビタミンB7)欠乏が疑われる場合は、ビオチン補充療法を併用することもあります。
光線(紫外線)療法
紫外線は免疫の過剰な働きを抑える作用があります。この作用を利用し、皮疹に直接紫外線を照射することで皮膚症状を改善させます。紫外線の中でも、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)のみ効果があると言われています。
UVBに含まれる有害な波長を取り除いて、治療効果の高い波長だけを照射することができるのが、「ナローバンドUVB療法」と「ターゲット型エキシマライト」です。効果を上げるためには、週1~2回以上通院する必要があります。当院でも「ターゲット型エキシマライト」の治療が可能です。塗り薬だけで改善しない場合は、この治療法の併用も検討します。
UVAは、光に対する感受性を高めるお薬を飲んだり塗ったりしてから照射する「PUVA療法」に用いられます。光線療法の主な副作用としては、日焼けや色素沈着などがあります。
生物学的製剤(注射薬)
外用や内服、紫外線療法で症状の改善が認められない場合に使用します。免疫細胞の情報伝達をしているタンパク質(サイトカイン:細胞同士が出し合うシグナル)の働きを抑制することで、炎症を抑えます。Il-23というサイトカインを抑えるグセルクマブの注射が2018年に掌蹠膿疱症に保険適応になりました。開始前には様々な検査が必要で、医療費も高額になります。この治療を検討する場合は、近隣の総合病院や大学病院へご紹介させていただきます。
(悪化因子の除去-1)病巣感染
掌蹠膿疱症の中には、「病巣感染」をきっかけに発症することがあります。この病巣感染とは、体のどこかの慢性的な炎症が引き金となって、体の別の部位で何らかの病気が引き起こされることを言います。
扁桃炎や虫歯、中耳炎、副鼻腔炎などの関与が疑われる場合、これらの治療を行います。これらの炎症は自覚症状がないことも多く、治療の対象にならないこともありますが、風邪をひくと掌蹠膿疱症の症状が悪化することなどがあれば、病巣感染が原因の可能性も考えられます。扁桃炎の関与が疑われれば扁桃腺を摘出することで、虫歯があれば歯科治療を行うことで、掌蹠膿疱症が改善することがあります。必要に応じて、耳鼻科や歯科にご紹介させていただきます。
(悪化因子の除去-2)歯科金属の除去
金属アレルギーがある場合、歯の詰め物(歯科用金属)を除去することで、掌蹠膿疱症の症状が改善されることがあると言われてきました。しかし、実際に歯科金属を除去しただけで良くなった例は少ないようです。歯科金属を除去することで掌蹠膿疱症の症状の改善が見込めるかどうかは、パッチテストで陽性になった金属が歯の詰め物に使われているかどうか、金属を含む食べ物を摂取して悪化するかなど、総合的に判断する必要があります。
(悪化因子の除去-3)禁煙
掌蹠膿疱症の患者さんの喫煙率は約80%と多いこと、禁煙によって症状が軽減することから、喫煙は掌蹠膿疱症と関係があると考えられています。禁煙すると、掌蹠膿疱症が絶対に改善するとは言い切れませんが、健康のためにも禁煙にチャレンジしましょう。
注意点
個人差がありますが、掌蹠膿疱症は平均3~7年で軽快すると言われています。焦らずに治療にしっかり取り組んでいきましょう。
悪化因子と言われている、扁桃炎、副鼻腔炎、歯周炎などの感染症を予防するために、うがいや手洗いをして、歯磨きも丁寧に行いましょう。