【クラリス(クラリスロマイシン)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:皮膚感染症/ニキビ

クラリス(一般名:クラリスロマイシン)は、皮膚感染症や炎症性ニキビの治療に広く用いられるマクロライド系の内服抗生物質です。「とびひが治らない」「毛のう炎を繰り返す」「赤く腫れたニキビが長引く」といったお悩みに対し、皮膚科専門医が選択する代表的な飲み薬の一つです。

実はクラリスには、細菌を直接たたく「抗菌作用」に加え、炎症そのものを鎮める”抗炎症作用”も備わっています。さらに、一般的な抗生物質では対処しにくいマイコプラズマやクラミジアなどの非定型細菌にも効果を発揮できる点が、皮膚科領域での活躍を支えています。本記事では、その作用機序から使い方、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。


1. クラリス(クラリスロマイシン)とは

クラリス(一般名:クラリスロマイシン)は、マクロライド系に分類される経口抗菌薬です。大正製薬株式会社が製造販売しており、細菌のリボソーム(50Sサブユニット)に結合してタンパク質合成を阻害することで増殖を抑える「静菌的」な働きをします。細菌が増えるのに欠かせない”タンパク質の製造ライン”を止めてしまうイメージです。

同じマクロライド系の”先輩”であるエリスロマイシンを改良して開発されており、胃酸に対する安定性が大幅に向上しています。そのため体内への吸収が安定しており、1日2回の服用で確実な血中濃度を維持できます。

皮膚科領域での主な適応疾患は次のとおりです。

  • 表在性皮膚感染症(毛のう炎、伝染性膿痂疹=とびひ など)
  • 深在性皮膚感染症(せつ、よう、蜂巣炎 など)
  • リンパ管・リンパ節炎
  • 慢性膿皮症
  • 外傷・熱傷・手術創などの二次感染
  • 化膿性炎症を伴うざ瘡(炎症性ニキビ)

なお「クラリス(Claris)」という名称は、有効成分 Clarithromycin(クラリスロマイシン)の冒頭に由来します。

項目 内容
製品名 クラリス錠200
一般名 クラリスロマイシン
製造販売 大正製薬株式会社
分類 マクロライド系抗菌薬
剤形 錠剤(200mg)
発売年 1992年
後発品 あり(クラリスロマイシン錠200mg「各社」)

2. クラリスの特徴

クラリスの最大の特徴は、抗菌作用・抗炎症作用・非定型細菌への有効性という”三刀流”である点です。

●抗菌作用

細菌のリボソームに結合してタンパク質合成を阻害します。ブドウ球菌属・レンサ球菌属・肺炎球菌など皮膚感染症の主要な原因菌に加え、ニキビの原因となるアクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖も抑えます。

●抗炎症作用

マクロライド系抗菌薬は、炎症性サイトカインの産生抑制・好中球の集積抑制など、抗炎症的な働きを持つことが知られています。これが赤く腫れたニキビや皮膚感染症の炎症を鎮める効果につながります。

●非定型細菌にも有効

クラリスの大きな強みは、一般的な抗生物質(βラクタム系など)が効きにくいマイコプラズマ・クラミジア・マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効である点です。皮膚に治りにくい傷を作るマイコバクテリウム感染や、外陰部の症状を引き起こすクラミジア感染にも用いられます。

●胃酸に強く吸収が安定

前世代のエリスロマイシンが持っていた「胃酸で分解される」という弱点を克服し、食事の影響をほとんど受けずに安定した血中濃度を実現します。

●βラクタム系アレルギーの方にも使用可能

ペニシリン系・セフェム系などのβラクタム系抗生物質にアレルギーがある方でも、原則として使用できます。

●1日2回服用で続けやすい

1日2回、朝夕の食後服用というシンプルな用法で、生活リズムに組み込みやすい設計です。


3. 適応疾患と服用方法

適応疾患

クラリス錠200の主な適応症(皮膚科関連を抜粋)は次のとおりです。

  • 表在性皮膚感染症(毛のう炎、伝染性膿痂疹=とびひ など)
  • 深在性皮膚感染症(せつ、よう、蜂巣炎 など)
  • リンパ管・リンパ節炎
  • 慢性膿皮症
  • 外傷・熱傷・手術創などの二次感染
  • 化膿性炎症を伴うざ瘡(炎症性ニキビ)
  • 咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎
  • 歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
  • 非結核性抗酸菌症(MAC症など)
  • ヘリコバクター・ピロリ感染症(除菌治療)

なお、臨床試験では皮膚科領域感染症(表在性・深在性・リンパ管リンパ節炎・慢性膿皮症・外傷熱傷二次感染)に対する有効率は76.7%(355/463例)と報告されています。

服用方法

〈一般感染症・皮膚感染症〉

通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)(200mg錠を2錠)を、朝・夕の2回に分けて食後に経口投与します。年齢・症状により適宜増減します。

〈非結核性抗酸菌症〉

通常、成人には1日800mg(力価)を2回に分けて経口投与します。

3つの重要ポイント

  1. 食後服用が推奨:胃腸への負担を軽減し、吸収が安定します。
  2. 症状改善後も自己判断で中断しない:耐性菌の発生を防ぐため、医師の指示通りに飲み切ります。
  3. ニキビでは原則3か月以内:日本皮膚科学会ガイドライン2023では、漫然とした長期投与は避けるとされています。

効果の実感までの期間は、細菌感染症では2〜5日、ニキビでは2〜4週間程度かけて徐々に現れます。


4. 使用する上の注意点

幅広い適応を持つクラリスですが、薬物相互作用が非常に多い点が最大の注意事項です。服用中の薬が多い方は必ず医師・薬剤師に申告してください。

●主な副作用

  • 下痢、軟便、腹痛、吐き気、胃部不快感
  • 味覚異常(苦味・金属味など)
  • 発疹、かゆみ
  • AST・ALTなど肝機能検査値の上昇

最も多い副作用は消化器症状と味覚異常です。味覚異常はクラリスに特徴的な副作用で、服用終了とともに改善するのが一般的です。

●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)

  • ショック、アナフィラキシー(全身のかゆみを伴う発赤・息苦しさなど)
  • 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全
  • 偽膜性大腸炎(血便を伴う激しい下痢)
  • Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死融解症(TEN)
  • 血小板減少、汎血球減少、溶血性貧血、無顆粒球症
  • QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、心室細動
  • 間質性肺炎
  • 横紋筋融解症
  • 低血糖

服用中に激しい下痢・血便・黄疸・皮膚の広い範囲の発疹・水ぶくれ・呼吸困難・動悸・強い倦怠感などが現れた場合は、ただちに服用を中止し医療機関を受診してください。

●併用禁忌(一緒に飲んではいけない薬)

禁忌薬剤 理由
エルゴタミン製剤(クリアミン® など) 血管攣縮による重篤な末梢虚血・虚血性心疾患
ジヒドロエルゴタミン製剤 同上
アスナプレビル、バニプレビル 高度な肝機能障害のリスク
チカグレロル 出血リスクの増大
ロミタピド 横紋筋融解症などのリスク
コルヒチン(腎・肝機能障害患者) コルヒチンの血中濃度上昇による中毒
スボレキサント 過度の鎮静・精神運動機能障害
ルラシドン塩酸塩 重篤な副作用のリスク

これらとの絶対に併用してはいけません

●主な併用注意薬

  • ワルファリン:抗凝固作用が増強される可能性
  • スタチン系薬剤(シンバスタチンなど):横紋筋融解症のリスク増加
  • テオフィリン:血中濃度上昇のリスク
  • ジゴキシン、シクロスポリン、タクロリムス:血中濃度上昇に注意
  • カルバマゼピン、フェニトイン:血中濃度変動
  • QT延長を起こす薬剤:不整脈リスク増加

クラリスは肝臓のCYP3A4(薬物代謝酵素)を強く阻害するため、この酵素で代謝される多くの薬と相互作用を起こします。「よく効くが、飲み合わせに要注意」な薬と覚えておいてください。

●こんな方は事前に医師にご相談を

  • マクロライド系抗生物質でアレルギー歴のある方(禁忌
  • 肝機能障害のある方
  • 不整脈・QT延長の既往がある方
  • 腎機能障害のある方
  • 妊娠中・授乳中、妊娠の可能性がある方(動物実験で胎児毒性の報告あり)
  • 高齢の方

●日常生活での注意

  • アルコール:肝臓への負担が増すため、服用中は控えめに
  • 自動車運転:眠気を直接引き起こす成分は含まれませんが、副作用のめまい・頭痛に注意
  • クラリスは医療用医薬品のため、必ず医師の処方が必要です(市販なし)

5. 薬価と費用

クラリス錠200の薬価は以下のとおりです(2026年度薬価基準(2026年4月改定))。

薬剤名 1錠あたりの薬価 14日分の薬価(1日2錠) 14日分の自己負担額(3割負担)
クラリス錠200(先発品) 41.3円 1,156.4円 約347円
クラリスロマイシン錠200mg(後発品) 22.8円 638.4円 約192円
薬剤名 1錠あたりの薬価 30日分の薬価(1日2錠) 30日分の自己負担額(3割負担)
クラリス錠200(先発品) 41.3円 2,478円 約743円
クラリスロマイシン錠200mg(後発品) 22.8円 1,368円 約410円

※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。先発品薬価は2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づきます。後発品は沢井製薬など複数社品を参照。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: クラリスはどれくらいで効きますか?

A1: 細菌性の皮膚感染症(とびひ・毛のう炎など)に対しては服用開始から2〜5日で症状の改善を実感することが多いです。ニキビへの効果は2〜4週間程度かけて徐々に現れます。効果を感じても自己判断で中止せず、医師の指示に従って飲み切ることが大切です。

Q2: ルリッド(ロキシスロマイシン)とどう違いますか?

A2: どちらもマクロライド系抗菌薬で、ニキビや皮膚感染症に使われる点は同じです。クラリスは非定型細菌(マイコプラズマ・クラミジアなど)への有効性が高い一方、薬物相互作用の対象となる薬が多い点が特徴です。ルリッドは相互作用が比較的少ない傾向があります。どちらが適するかは症状や服用中の薬によって異なるため、医師にご相談ください。

Q3: 味覚が変わった気がするのですが大丈夫ですか?

A3: クラリスでは苦味・金属味などの味覚異常が比較的起こりやすい副作用として知られています。多くの場合、服用終了後に改善しますが、症状が気になる場合は医師・薬剤師にご相談ください。

Q4: 市販されていますか?

A4: クラリスおよびクラリスロマイシン製剤は医療用医薬品であり、医師の処方箋がなければ購入できません。

Q5: お酒は飲んでも大丈夫ですか?

A5: 直接的な飲み合わせの禁忌はありませんが、クラリスは肝臓で代謝される薬のため、内服期間中の飲酒は控えめにしてください。

Q6: 妊娠中・授乳中でも飲めますか?

A6: 動物実験で高用量において胎児毒性(心血管系異常・口蓋裂・発育遅延など)が報告されており、妊娠中・授乳中または妊娠の可能性がある方は自己判断での使用を避け、必ず医師にご相談ください。

Q7: 飲み忘れたときはどうすればよいですか?

A7: 気づいた時点でできるだけ早く1回分を服用してください。ただし次の服用時間が近い場合は1回飛ばして次の通常の時間に服用します。決して2回分を一度に飲まないでください。


7. 皮膚科専門医解説 クラリスの要点まとめ

  • 適応:皮膚感染症(毛のう炎・とびひ・蜂巣炎など)、炎症性ニキビ、非定型細菌感染症に用いられるマクロライド系内服抗生物質
  • 作用:抗菌作用+抗炎症作用+非定型細菌への有効性という”三刀流”
  • 飲み方:通常 1日400mg(2錠)を朝夕食後。ニキビでは原則3か月以内
  • メリット:胃酸に強く吸収が安定、βラクタム系アレルギーの方にも使用可能、幅広い菌種に対応
  • 注意点CYP3A4を強く阻害するため薬物相互作用が非常に多い。エルゴタミン製剤などとは併用禁忌。味覚異常・消化器症状に注意。激しい下痢・黄疸・動悸が出たら即受診
  • 費用:先発品 14日分 約347円(3割負担)/後発品なら約192円

皮膚感染症やニキビの治療では、原因菌・重症度・服用中の薬に応じて適切な抗菌薬を選択する必要があります。自己判断での服用継続は耐性菌の発生や重篤な相互作用の原因となりかねません。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な皮膚感染症・ニキビ治療をご提案しています。 「とびひ・毛のう炎が繰り返しできる」「赤ニキビをしっかり治したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会

参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 尋常性ざ瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(3):407-450.
    ▶ 国内ニキビ治療の標準ガイドライン。マクロライド系内服は中等症以上の炎症性皮疹に対して推奨され、耐性菌抑制の観点から原則3か月以内の使用が望ましいとされる。

  2. 大正製薬株式会社. クラリス錠200 添付文書(最新改訂版, 2024年改訂).
    ▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌(エルゴタミン製剤など)・副作用・薬物相互作用(CYP3A4阻害)が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  3. Amsden GW. Anti-inflammatory effects of macrolides–an underappreciated benefit in the treatment of community-acquired respiratory tract infections and chronic inflammatory pulmonary conditions? J Antimicrob Chemother 2005;55(1):10-21. DOI:10.1093/jac/dkh519
    ▶ マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンを含む)が炎症性サイトカイン産生や好中球遊走を抑制するという抗炎症作用の科学的根拠を論じた総説。皮膚炎症病変への応用の理論的裏付けの一つ。


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