プレドニン(一般名:プレドニゾロン)は、体内の炎症・アレルギー・過剰な免疫反応を強力に抑える副腎皮質ステロイド内服薬です。1956年の国内発売から70年近く第一線で使われ続け、今も「ステロイドの基準薬」として他剤の換算基準になるほど信頼性の高い薬剤です。
皮膚科では、重症の蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・天疱瘡・類天疱瘡・薬疹・血管炎・膠原病など、外用薬だけでは対処しきれない疾患に対して処方されます。「なぜステロイドを飲むの?」「副作用が心配…」という患者さんの声に応えるべく、作用機序から正しい飲み方、注意すべき副作用まで、皮膚科専門医の視点で丁寧に解説します。
1. プレドニンとは
プレドニン(一般名:プレドニゾロン)は、副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド)を化学合成したステロイド剤です。製造販売はシオノギファーマ株式会社で、1956年に国内初上市されました。
私たちの体は、副腎という臓器から「コルチゾール」というステロイドホルモンを自然に分泌しています。プレドニゾロンはこのコルチゾールと似た構造を持ちながら、抗炎症作用はコルチゾールの約4倍に強化されています。一方で、塩類保持(ナトリウム貯留)作用はコルチゾールより弱く抑えられているのが特徴です。
作用機序としては、細胞質内のステロイド受容体と結合した後に核内へと移行し、炎症を引き起こすサイトカインやケミカルメディエーターの産生を遺伝子レベルで抑制します。さらに免疫応答の要であるT細胞・B細胞の機能を抑制することで、炎症・アレルギー・自己免疫反応の連鎖を断ち切ります。まさに「体の中から燃え広がる炎を消し止める消火器」のような薬剤です。

2. プレドニンの特徴
プレドニンの最大の特徴は、炎症・アレルギー・免疫異常という3つの異なる病態を同時に制御できる”万能型消火器”であることです。
● ステロイドの基準薬「プレドニゾロン換算」
他のステロイド薬(メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾンなど)の投与量は、すべて「プレドニゾロン換算(PSL換算)何mg」として表されます。これほど臨床・研究の両面で実績が豊富な薬剤は他になく、用量の設定・調整・他剤比較のすべてにおいて”ものさし”の役割を果たしています。
● 中時間型ステロイドで朝服用が基本
ステロイド薬は作用持続時間により短時間型・中間型・長時間型に分類されます。プレドニンは中間型(作用持続12〜36時間)に属し、1日1〜2回投与が基本です。人体では朝4〜8時にコルチゾール分泌がピークを迎えるため、プレドニンも朝食後にまとめて服用することで生体リズムに合わせ、副腎抑制を最小限にできます。
● 細かい規格で用量調節がしやすい
1mg・2.5mg・5mgの3規格があり、少量(5mg/日以下)から大量(1mg/kg/日以上)まで細かく調節できます。また粉砕しやすいため、小児や嚥下困難な方にも対応可能です。
● 幅広い疾患に対応できる「皮膚科の切り札」
重症の皮膚疾患において、外用ステロイドや抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合に、プレドニンは「切り札的内服薬」として機能します。特に水疱症・血管炎・重症薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)・膠原病皮膚症状などでは全身療法が不可欠であり、プレドニンが治療の軸になることがあります。
3. 適応疾患と服用方法
皮膚科領域の主な適応疾患
プレドニン添付文書(2026年3月改訂)に記載された皮膚科関連の主な適応症は以下のとおりです。
- 湿疹・皮膚炎(アトピー性皮膚炎の重症例、接触皮膚炎の急性期 など)
- 蕁麻疹(重症例)・血管性浮腫
- 天疱瘡・類天疱瘡などの水疱症
- 薬疹・中毒疹(スティーブンス・ジョンソン症候群 含む)
- 皮膚血管炎・結節性多発動脈炎
- 全身性エリテマトーデス(SLE)・皮膚筋炎・多発性筋炎などの膠原病
- 乾癬の重症型(膿疱性乾癬 など)
- 円形脱毛症(重症型)
服用方法
用法用量は疾患の種類・重症度によって大きく異なります。一般的な考え方を以下に示します。
| 投与区分 | 目安用量(プレドニゾロン換算) | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| 少量 | <7.5 mg/日 | 維持療法・漸減期 |
| 中等量 | 7.5〜30 mg/日 | 中等症の蕁麻疹・湿疹急性増悪 など |
| 大量 | 30〜100 mg/日(または1mg/kg/日) | 天疱瘡・SLE・重症薬疹 など |
| パルス療法 | 500〜1,000 mg/日×3日間(注射) | 急速進行する重篤疾患 |
※上記はあくまでも目安であり、実際の用量は医師が患者さんの状態に応じて決定します。
3つの重要ポイント
- 朝食後にまとめて服用:コルチゾールの日内変動リズムに合わせることで副腎抑制を最小化。
- 自己判断での急な中止は厳禁:急に中止すると副腎クリーゼ(副腎機能不全の急性増悪)を起こす危険があります。必ず医師の指示どおりに少しずつ減量します。
- 食後服用で胃への負担を軽減:プレドニンは胃粘膜保護作用を低下させるため、食後服用が原則です。必要に応じて胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)が併用されます。
4. 使用する上の注意点
● 主な副作用(頻度が比較的高いもの)
| 系統 | 主な副作用 |
|---|---|
| 代謝・内分泌 | 血糖上昇(ステロイド糖尿病)、体重増加、満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満、脂質異常症 |
| 消化器 | 胃潰瘍・消化管出血、食欲亢進 |
| 骨・筋肉 | 骨粗鬆症、圧迫骨折、筋力低下(ステロイドミオパチー) |
| 眼 | 後嚢白内障、緑内障 |
| 皮膚 | にきび様皮疹、皮膚菲薄化、皮下出血、多毛 |
| 精神神経 | 不眠、気分高揚、抑うつ |
| 免疫 | 感染症の誘発・増悪(細菌・真菌・ウイルス) |
| 循環器 | 高血圧、浮腫、低カリウム血症 |
ムーンフェイス(満月様顔貌)は、脂肪の再分布により顔が丸くなる副作用で、大量・長期投与中にしばしば見られます。減量・中止により徐々に改善します。
● 重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- 副腎皮質機能不全・副腎クリーゼ(急な中止による)
- 感染症の重篤化(結核・真菌感染・帯状疱疹の再活性化 など)
- 消化管穿孔・消化管出血
- 大腿骨頭壊死
- 心不全・肺水腫
- 精神症状(高度な抑うつ・躁状態)
- 硬膜外脂肪腫(脊髄圧迫)
服用中に発熱・強い倦怠感・腹痛・血便・胸痛・呼吸困難・ひどい気分の落ち込みなどが現れた場合は、ただちに医師に連絡してください。
● 禁忌(使用できない方)
- 感染症患者(特に全身性真菌症):免疫抑制により感染が劇的に悪化する恐れがあります。
● 慎重投与・事前相談が必要な方
- 糖尿病・高血圧・骨粗鬆症のある方
- 胃潰瘍・消化管出血の既往のある方
- 緑内障・白内障のある方
- 結核・単純ヘルペス・帯状疱疹などの感染症の既往がある方
- 精神疾患(統合失調症・うつ病など)のある方
- 妊娠中・授乳中、妊娠の可能性がある方
- 小児(成長抑制の可能性)・高齢者
● 併用禁忌・注意が必要な主な薬剤
| 分類 | 代表薬 | 注意内容 |
|---|---|---|
| 併用注意 | ワルファリン | 抗凝固作用の変動(増強または減弱) |
| 併用注意 | NSAIDs(ロキソプロフェン等) | 消化性潰瘍のリスク増大 |
| 併用注意 | 利尿薬(フロセミド等) | 低カリウム血症の増強 |
| 併用注意 | インスリン・血糖降下薬 | 血糖上昇により降糖薬の効果が減弱 |
| 併用注意 | 生ワクチン | 免疫抑制下での感染リスク(接種前に医師に相談) |
| 併用注意 | CYP3A4阻害薬(アゾール系抗真菌薬等) | プレドニゾロン血中濃度の上張 |
服用中のすべての薬・サプリメントを医師・薬剤師にお伝えください。
● 日常生活での注意
- アルコール:胃潰瘍リスクが高まるため、服用期間中は控えめにしてください
- 自動車運転:眠気を起こす成分は含まれないため制限はありませんが、精神症状(気分高揚・不眠)が現れた場合は医師にご相談を
- ワクチン接種:生ワクチン(帯状疱疹ワクチン「ビケン」・水痘ワクチンなど)は免疫抑制状態での接種が原則禁忌です。接種を検討する場合は必ず事前に医師に相談してください
- 骨粗鬆症予防:長期投与例ではビタミンD・カルシウム補充、ビスフォスフォネート製剤の予防投与が行われることがあります
- 市販はされていないため、必ず医師の処方が必要です
5. 薬価と費用
プレドニンおよび後発品(プレドニゾロン錠)の薬価は以下のとおりです(2026年度薬価基準(2026年4月改定))。
皮膚科での処方は、急性疾患では7〜14日間、天疱瘡・膠原病などの慢性疾患では数か月〜数年の長期処方となることがあります。
14日分の費用目安(1日20mg服用:5mg錠4錠×14日=56錠)
| 薬剤名 | 規格 | 1錠あたりの薬価 | 14日分の薬価(56錠) | 3割負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| プレドニン錠(先発品) | 5mg | 10.5円 | 588円 | 約177円 |
| プレドニゾロン錠(後発品) | 5mg | 10.1円 | 565.6円 | 約170円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。実際の投与量は病状によって異なります。
6. FAQ(よくある質問)
7. 皮膚科専門医解説 プレドニンの要点まとめ
- 適応:重症の蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・天疱瘡・類天疱瘡・薬疹・膠原病・血管炎など、外用薬で対処しきれない皮膚疾患の全身治療薬
- 作用:副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)がコルチゾールの約4倍の抗炎症・免疫抑制作用を発揮する”消火器”的薬剤
- 飲み方:原則として朝食後まとめて服用。1日1〜2回。用量は少量(<7.5mg)から大量(1mg/kg以上)まで疾患に応じて設定
- 最大の注意点:急な自己中断は副腎クリーゼを招く危険あり。必ず医師の指示で漸減する
- 副作用:ムーンフェイス・ステロイド糖尿病・骨粗鬆症・感染症誘発・白内障・胃潰瘍など。長期投与では定期的な血液・骨密度検査が重要
- 費用:先発品5mg錠 10.5円/錠(3割負担で30日分・1日20mg換算 約378円)
プレドニンは正しく使えば非常に有益な薬剤ですが、量と期間の管理・副作用モニタリングが不可欠です。「ステロイドを飲んでいるが副作用が心配」「うまく減量できない」とお悩みの方は、ぜひ皮膚科専門医にご相談ください。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な皮膚疾患治療をご提案しています。 蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・水疱症・膠原病皮膚症状などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
参考文献
- シオノギファーマ株式会社. プレドニン錠5mg 電子添付文書(第21版, 2026年3月改訂). 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌・副作用・相互作用・妊婦投与に関する記載が詳細に収録されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。 - 日本皮膚科学会. 蕁麻疹診療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(12):2487-2551.
▶ 国内における蕁麻疹治療の標準を示すガイドライン。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な重症例において、短期の全身性ステロイド(プレドニゾロン)投与が選択肢として記載されている。 - 日本皮膚科学会・日本天疱瘡友の会. 天疱瘡診療ガイドライン第3版(2019). 日本皮膚科学会雑誌 2019;129(7):1523-1573.
▶ 天疱瘡の第一選択治療として副腎皮質ステロイド全身投与(プレドニゾロン 0.5〜1.5mg/kg/日からの開始)が強く推奨されており、本記事の適応疾患・用量記述の根拠となっている。


