【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:乾癬/塗り薬
マーデュオックス(一般名:マキサカルシトール・ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は、尋常性乾癬の治療に用いられる配合外用薬です。活性型ビタミンD3誘導体とステロイドという「異なる武器」を1本の軟膏に凝縮した、いわば乾癬外用療法の”オールインワン”とも呼べる薬剤です。
「乾癬の薬を2種類塗り分けるのが面倒」「赤みも盛り上がりも同時に抑えたい」——そんなお悩みに応えるべく2016年に登場し、現在は乾癬外用薬の中心的存在となっています。本記事では、その作用機序から正しい使い方、副作用、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. マーデュオックスとは
マーデュオックス軟膏は、活性型ビタミンD3誘導体であるマキサカルシトール(MCT) と、Ⅱ群(ベリーストロング)クラスのステロイドであるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP) を配合した外用製剤です。マルホ株式会社が製造販売しており、適応症は尋常性乾癬のみです。
乾癬は、表皮角化細胞の過剰増殖・活性化T細胞を主体とする炎症・血管増生を特徴とする慢性難治性の炎症性角化症です。寛解と増悪を繰り返しながら経過するため、治療の継続しやすさが非常に重要です。マーデュオックスはその「継続しやすさ」を追求した薬剤です。
なお、商品名「マーデュオックス(MARDUOX)」の由来は製造販売元によれば「特になし」とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | マーデュオックス軟膏 |
| 一般名 | マキサカルシトール・ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏 |
| 製造販売 | マルホ株式会社 |
| 分類 | 活性型ビタミンD3製剤+ステロイド配合外用薬 |
| 剤形 | 軟膏(10gチューブ) |
| 薬価収載 | 2016年5月25日 |
| 承認取得 | 2016年3月 |
| 後発品 | なし(2026年5月時点) |
2. マーデュオックスの特徴
マーデュオックスの最大の特徴は、作用機序の異なる2成分を1本に配合した”二刀流”である点です。単独製剤をそれぞれ塗るよりも高い治療効果が臨床試験で示されており、かつ塗布の手間が半減します。
●ビタミンD3(マキサカルシトール)の働き:増殖を止める”ブレーキ役”
マキサカルシトールはビタミンD3受容体に結合し、表皮角化細胞の過剰増殖を抑制するとともに、正常な分化へと方向転換させます。乾癬特有の「盛り上がり(浸潤)」や「フケのような落屑(鱗屑)」を根本から改善する働きを担います。
●ステロイド(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の働き:炎症を鎮める”消火役”
BBPはⅡ群(ベリーストロング)に分類される強力なステロイドで、炎症性サイトカインの産生を抑制し、患部の赤み・腫れ・かゆみを速やかに鎮めます。即効性に優れるため、症状が強い患者さんにも対応できます。
●配合による相乗効果が臨床試験で確認
国内第Ⅲ相臨床試験において、マーデュオックスを使用したグループは、マキサカルシトール単独・ベタメタゾン単独のいずれと比較しても、皮疹スコアの改善が有意に優れていることが確認されています。
●顔面にも使用可能(ドボベットとの大きな違い)
同じ活性型ビタミンD3+ステロイドの配合剤であるドボベット(カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)は顔面への使用が禁忌ですが、マーデュオックスは顔面への使用制限がありません。顔・頭皮・体幹・四肢と幅広い部位に対応できるのは大きなアドバンテージです。
●製剤安定化技術による長期品質保持
ステロイドは酸性で、活性型ビタミンD3はアルカリ性で安定する成分です。むやみに混合すると両成分の含量が低下しますが、マーデュオックスは独自の製剤技術によりpH変化を長期的に安定化させており、安定した薬効を維持します。
●1日1回塗布・1日最大10gという明確な使用基準
1日1回の塗布で24時間にわたって効果が持続するよう設計されており、使用上限(1日10g)もわかりやすく設定されています。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
マーデュオックス軟膏の適応症は尋常性乾癬のみです。
尋常性乾癬は、境界明瞭な紅斑の上に銀白色の鱗屑が付着する皮疹を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患です。頭皮・肘・膝などに好発しますが、顔面・体幹・四肢など全身どこにでも生じます。日本の患者数は約43万人と推計されます。
使用方法(添付文書準拠)
通常、1日1回、適量を患部に塗布します。
3つの重要ポイント
- 1日の使用量は最大10g(マキサカルシトールとして250μg)まで:これを超えると高カルシウム血症などのリスクが高まります。
- 使用開始後4週間を目安に必要性を再検討:漫然と使い続けず、定期的に皮膚科医の評価を受けてください。
- 皮疹部位のみに塗布する:正常な皮膚に塗ってしまうとステロイドの影響で淡い赤斑が残ることがあります。
正しい塗り方のポイント
- こすらず、乗せるように広げる:強くこすると刺激で皮疹が拡大・悪化することがあります。
- 1FTU(人差し指の先から第1関節まで、約0.5g)で手のひら2枚分(指を含む)の面積に対応します。
- 爪に塗る場合は、爪の根元・爪と皮膚の境目・爪先の隙間にも入れ込むように塗布します。
- 塗布後は必ず手を洗う:ステロイド成分が目や顔に意図せず付着するのを防ぎます。
- 症状が改善し外縁部に盛り上がりが残る場合は、その部分のみに絞って塗布します。
4. 使用する上の注意点
●主な副作用
| 副作用 | 種類 |
|---|---|
| 皮膚の刺激感(ヒリヒリ感・かゆみ) | ビタミンD3・ステロイド共通 |
| ニキビ様皮疹(ざ瘡様発疹)、毛嚢炎 | ステロイドによる |
| 皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)、毛細血管拡張 | ステロイドによる |
| 多毛、色素沈着・脱色素 | ステロイドによる |
| 血清カルシウム値の上昇 | ビタミンD3による |
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- 高カルシウム血症:口渇・倦怠感・脱力感・悪心などが現れた場合は使用を中止し、すみやかに受診してください。
- 急性腎不全:尿量が急に減る・むくみ・倦怠感が現れた場合は要注意。
- ステロイドによる全身性副作用(眼圧上昇、緑内障、後嚢下白内障):特に眼周囲への長期使用で注意。
- 皮膚感染症の増悪:ステロイドにより免疫が局所的に抑制されるため。
これらの症状が現れた場合は速やかに使用を中止し、医師にご相談ください。
●禁忌(使用できない方)
- 本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある方
- 細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症および動物性皮膚疾患(疥癬・けじらみ等)がある方
- 潰瘍(ベーチェット病を除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷がある部位への使用
●使用に慎重を要する方(事前にご相談ください)
- 高カルシウム血症またはその既往のある方
- カルシウム代謝異常(副甲状腺機能亢進症・ビタミンD過剰症・高カルシウム尿症)のある方
- 腎機能障害のある方
- 妊婦または妊娠の可能性のある方・授乳中の方
- 小児(特に乳幼児):皮膚が薄く全身への影響が出やすいため注意が必要
- 顔面・陰部・皮膚のひだ部分などへ使用する場合(医師の判断による)
●日常生活での注意
- 市販はされていない医療用医薬品のため、必ず医師の処方が必要です。
- 眠気を引き起こす成分は含まれていないため、自動車の運転に制限はありません。
- 入浴後に塗布すると皮膚が清潔で吸収が良好な状態になるためおすすめです。
- 正常な皮膚への塗布は避ける:ステロイドの影響で色素変化が残ることがあります。
5. 薬価と費用
マーデュオックス軟膏の薬価は1gあたり119.1円(2026年度薬価基準/2026年4月改定)です。後発品(ジェネリック)は2026年5月時点では存在しません。
1日の標準的な使用量を約3〜5gと仮定した場合の目安を以下に示します。
14日分の費用目安(1日使用量別)
| 使用量の目安 | 14日分の薬価(概算) | 3割負担の自己負担額(概算) |
|---|---|---|
| 1日3g使用(42g) | 約5,002円 | 約1,501円 |
| 1日5g使用(70g) | 約8,337円 | 約2,501円 |
| 1日最大10g使用(140g) | 約16,674円 | 約5,002円 |
30日分の費用目安(1日使用量別)
| 使用量の目安 | 30日分の薬価(概算) | 3割負担の自己負担額(概算) |
|---|---|---|
| 1日3g使用(90g) | 約10,719円 | 約3,216円 |
| 1日5g使用(150g) | 約17,865円 | 約5,360円 |
| 1日最大10g使用(300g) | 約35,730円 | 約10,719円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。実際の使用量は皮疹の面積・重症度によって異なりますので、担当医にご確認ください。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: マーデュオックスはどのくらいで効果が出ますか?
A1: 個人差はありますが、ステロイドによる赤みやかゆみの改善は使用開始後数日〜1週間程度で実感されることが多いです。盛り上がり(浸潤)や鱗屑の改善には2〜4週間程度かかることが一般的です。添付文書では「使用開始後4週間を目安に必要性を検討する」とされており、定期的な受診で効果を確認することが大切です。
Q2: 顔に塗っても大丈夫ですか?
A2: マーデュオックスは顔面への使用が可能です。これは同種の配合薬であるドボベットとの大きな違いです。ただし、顔面や陰部など皮膚が薄い部位ではステロイドの吸収が高まりやすいため、使用量・期間について必ず主治医の指示に従ってください。
Q3: 1日の使用量に上限がありますか?
A3: はい、添付文書上「1日最大10g(マキサカルシトールとして250μg)まで」と定められています。これを超えると血中カルシウム値が上昇するリスクがあります。10gは市販されている1チューブ分に相当します。1日1本を超えての使用は絶対に避けてください。
Q4: ドボベットとどう違うのですか?
A4: どちらも「活性型ビタミンD3+ステロイド」の配合外用薬ですが、主な違いは以下の通りです。マーデュオックスは①顔面への使用可、②剤形が軟膏のみ(ドボベットはゲルもあり)、③薬価がやや安価という特徴があります。頭皮や有毛部への使用が主な場合はゲル剤型のあるドボベットが有利なこともあり、どちらが適するかは皮疹の部位や患者さんの好みで担当医が判断します。
Q5: ステロイドが入っているので副作用が心配です。
A5: ご心配はもっともです。マーデュオックスにはⅡ群(ベリーストロング)のステロイドが含まれており、長期・大量使用による皮膚萎縮や毛細血管拡張などのリスクがあります。一方、1日1回の使用と1日10gという明確な上限設定、そして定期的な受診による医師の評価という仕組みが副作用リスクを管理しています。自己判断で増量・長期使用しないことが最も大切です。
Q6: 他のビタミンD3外用薬やステロイドと一緒に使っていいですか?
A6: 原則として推奨されません。マキサカルシトールの1日の安全上限量(250μg)を超える恐れがあるためです。他の外用薬を併用している場合は、必ず担当医・薬剤師にご相談ください。
Q7: 妊娠中・授乳中でも使えますか?
A7: 妊娠中の安全性は確立されていません。ステロイド外用薬は妊娠中に使用できる場合もありますが、マーデュオックスにはビタミンD3誘導体も含まれるため、妊娠中・妊娠の可能性がある方・授乳中の方は必ず事前に医師にご相談ください。
7. 皮膚科専門医解説 マーデュオックスの要点まとめ
- 適応:尋常性乾癬のみ。ビタミンD3誘導体(マキサカルシトール)とベリーストロングクラスのステロイド(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の配合外用薬
- 作用:増殖抑制(ビタミンD3)+抗炎症(ステロイド)の”二刀流”で、赤み・盛り上がり・鱗屑を同時に改善
- 使い方:1日1回、患部に適量を塗布。1日最大10g(1チューブ)を超えない。強くこすらず乗せるように塗る
- 重要な特徴:顔面への使用が可能(ドボベットとの差別化ポイント)
- 注意点:高カルシウム血症・皮膚感染症への使用禁忌に注意。使用開始後4週間を目安に必要性を医師が再評価
- 費用:1gあたり119.1円(2026年度薬価基準)。後発品なし
- 重大副作用サイン:口渇・倦怠感・尿量減少が現れたらただちに受診
乾癬は「治らない病気」ではなく、「適切な治療で症状をコントロールできる病気」です。セルフケアだけで悩まず、皮膚科専門医と二人三脚で治療を続けることが寛解への近道です。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な乾癬治療をご提案しています。 「乾癬の赤みや鱗屑が気になる」「今の外用薬が自分に合っているか見直したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
-
日本皮膚科学会. 乾癬診療ガイドライン2022. 日本皮膚科学会雑誌 2022;132(3):491-558.
▶ 国内乾癬治療の標準的指針。尋常性乾癬に対する外用療法として活性型ビタミンD3製剤とステロイド外用薬の使用が推奨されており、配合剤の有用性についても言及されている。 -
マルホ株式会社. マーデュオックス軟膏 電子添付文書(第10版, 2024年11月改訂).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌・副作用・相互作用・臨床成績が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。 -
Komine M, et al. Efficacy and safety of maxacalcitol/betamethasone butyrate propionate ointment in patients with plaque psoriasis: a phase III, randomized, double-blind study. Journal of Dermatology 2017;44(7):774-782.
▶ 国内第Ⅲ相臨床試験の結果を報告。マーデュオックスがマキサカルシトール単独およびベタメタゾン単独と比較して有意に高い有効性を示したことが確認された。
“`

