【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:乾癬
ソーティクツ(一般名:デュークラバシチニブ)は、世界初の経口投与可能なTYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬として2022年11月に日本で発売された乾癬治療薬です。「外用療法や紫外線療法ではなかなか改善しない」「注射の生物学的製剤には抵抗がある」という乾癬患者さんにとって、飲み薬でありながら生物学的製剤に匹敵する効果が期待できる画期的な選択肢として注目されています。
本記事では、ソーティクツの作用機序・適応・副作用・薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. ソーティクツ(デュークラバシチニブ)とは
ソーティクツ(一般名:デュークラバシチニブ)は、TYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬に分類される経口乾癬治療薬です。ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(BMS)が開発・製造販売しており、2022年9月26日に製造販売承認を取得、同年11月16日に発売されました。
乾癬の病態には、IL-12・IL-23・Ⅰ型IFN(インターフェロン)などの複数の炎症性サイトカインが深く関与しています。これらのサイトカインが受容体に結合すると、TYK2という酵素を介してシグナルが細胞核に伝わり、皮膚の炎症が引き起こされます。ソーティクツはこのTYK2を選択的に阻害することで、炎症の”連絡経路”を遮断し、乾癬の症状を改善します。
名称の由来
| 名称 | 由来 |
|---|---|
| SOTYKTU(ソーティクツ) | TYK2に高い選択性を持つ薬であること、乾癬患者にとって優れた経口治療薬(Superior Oral Treatment)になるようにとの願いを込めて命名 |
| デュークラバシチニブ(Deucravacitinib) | 重水素(deuterium)を含むことを示す「Deu」を冒頭に、JAK阻害剤の標準語尾「-citinib」を末尾に配置 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | ソーティクツ錠6mg |
| 一般名 | デュークラバシチニブ |
| 製造販売 | ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(BMS) |
| 分類 | TYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬 |
| 剤形 | 錠剤(6mg) |
| 承認・発売 | 2022年9月承認、2022年11月発売 |
| 後発品 | なし(2026年5月時点) |
| 処方制限 | 日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで処方可能 |
2. ソーティクツの特徴
●世界初の経口TYK2阻害薬――「注射なし」で生物学的製剤レベルの効果を
従来、乾癬の中等症〜重症に対する分子標的治療は、IL-17・IL-23・TNFαを標的とした注射の生物学的製剤が主流でした。ソーティクツは、これと同じ「分子標的薬」のカテゴリーに属しながら、飲み薬として使用できる世界初の薬剤です。注射への心理的・身体的な抵抗感がある方にとって大きな選択肢となります。
●TYK2への高い選択性――既存JAK阻害薬とは異なるアプローチ
TYK2はJAK(ヤヌスキナーゼ)ファミリーの一種ですが、ソーティクツは既存のJAK阻害薬(バリシチニブ・ウパダシチニブなど)とは異なる部位(偽キナーゼ領域)に結合することでTYK2を選択的に阻害します。この高い選択性が、他のJAK阻害薬で懸念される副作用リスクを低減していると考えられています。
●乾癬の”難治部位”にも有効
爪乾癬・頭皮乾癬は外用薬が塗りにくく、治りにくい部位として知られています。ソーティクツは内服薬であるため全身に作用し、こうした難治部位の皮疹に対しても効果を発揮することが臨床試験で確認されています。
●1日1回・食事の影響なし
1日1錠を服用するだけのシンプルな用法で、食事の影響を受けにくく、服薬タイミングを選ばない点も患者さんにとって続けやすい利点です。
●オテズラ(アプレミラスト)より高い有効性
国際共同第Ⅲ相試験では、ソーティクツは既存の内服乾癬治療薬であるオテズラ(アプレミラスト)と直接比較され、PASI75達成率・sPGA 0/1達成率ともに統計学的に有意に高い値を示しました。
3. 適応疾患と服用方法
適応疾患
ソーティクツは、「既存治療で効果不十分な」次の疾患に使用できます。
- 尋常性乾癬(全乾癬患者の7〜8割を占める最多病型。銀白色の鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑)
- 膿疱性乾癬(発熱を伴い、全身に膿疱が多発する重篤な病型)
- 乾癬性紅皮症(全身皮膚が広範囲にわたって赤くなる最重症型)
ただし、以下のいずれかを満たす患者さんが対象となります。
- 光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)等で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者さん
- 難治性の皮疹または膿疱を有する患者さん
服用方法
通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mg(1錠)を1日1回経口投与します。
3つの重要ポイント
- 24週を目安に効果を確認:治療反応は通常、投与開始から24週以内に得られます。24週以内に治療反応が得られない場合は、治療継続の是非を医師と慎重に検討します。
- 生物学的製剤との併用は避ける:乾癬の生物製剤との安全性・有効性は確立していないため、添付文書上「併用を避けること」とされています。
- 承認施設での処方が必須:日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで処方開始でき、投与前には感染症スクリーニング検査(血液検査・胸部X線検査など)が必要です。
臨床試験での有効性
| 評価項目(投与16週時点) | ソーティクツ群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| PASI75達成率(75%以上改善) | 約58〜53% | 約12〜9% |
| sPGA 0/1達成率(消失〜ほぼ消失) | 約58〜50% | 約17〜7% |
※国際共同第Ⅲ相試験(IM011-046)および海外第Ⅲ相試験(IM011-047)より。数値は各試験結果の幅を示す。
4. 使用する上の注意点
●警告事項
ソーティクツは感染症リスクを増大させる可能性があり、結核の既往歴がある患者では結核が活動化するおそれがあります。また、本剤との関連性は明らかではないものの、悪性腫瘍の発現が報告されています。治療を開始する前には必ず医師から十分な説明を受け、理解・同意したうえで投与を開始することが求められます。
●禁忌(絶対に使用できない方)
- 重篤な感染症のある患者さん(症状を悪化させるおそれ)
- 活動性結核のある患者さん
- 本剤の成分に対し過敏症の既往がある患者さん
●主な副作用
| 頻度 | 副作用の種類 |
|---|---|
| 5%以上 | 上気道感染(鼻かぜ・のどの感染など) |
| 1〜5%未満 | 単純ヘルペス、口腔潰瘍、ざ瘡様皮疹(ニキビ様の皮疹)、毛包炎、血中CK(クレアチンキナーゼ)増加 |
| 1%未満 | 帯状疱疹 |
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- 重篤な感染症(0.2%):ウイルス・細菌による重篤な感染症。発現した場合は感染症が消失するまで投与を中止します
- 結核:投与前に必ずスクリーニングを実施すること
- 悪性腫瘍:本剤との関連性は明確ではないものの、報告があります
- 間質性肺炎
服用中に発熱・咳・息切れ・激しい下痢・強い倦怠感などが現れた場合は、ただちに担当医に連絡してください。
●生物学的製剤との併用について
乾癬に対する生物学的製剤(TNFα抗体・IL-17抗体・IL-23抗体など)とソーティクツの安全性・有効性は確立されていないため、添付文書上、併用を避けることと規定されています。
●ワクチン接種の注意
- 生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・BCGなど)は投与中には接種できません。投与開始前に必要なワクチン接種を完了しておくことが推奨されます
- 不活化ワクチン(コロナウイルスワクチンなど)は投与可能ですが、免疫応答が低下する可能性があります
- 帯状疱疹ワクチンは不活化ワクチンである「シングリックス®」のみ投与可能です
●定期検査について
投与中は以下の定期モニタリングが推奨されています。
– 血液検査(感染症・血算・肝機能・CKなど)
– 胸部X線またはCT検査(結核の確認)
●こんな方は事前に医師にご相談を
- 肝機能障害のある方(非結合形血中濃度が上昇し、副作用が強まるおそれ)
- 感染症の既往・慢性感染症のある方
- 結核の既往歴・接触歴のある方
- 妊娠中・授乳中、妊娠の可能性がある方
- 18歳未満(臨床試験で除外されており、小児への投与は確立されていません)
- B型・C型肝炎ウイルスキャリアの方
●日常生活での注意
- 眠気を引き起こす成分は含まれていないため、自動車運転の制限はありません
- 市販はされておらず、医師の処方箋が必須です
- 感染リスクがわずかに高まるため、人込みではマスク着用や手洗いを習慣化してください
- アルコールについては直接的な禁忌はありませんが、肝機能への影響を考慮し過度な飲酒は控えましょう
5. 薬価と費用
ソーティクツ錠6mgの薬価は1錠あたり2,533.40円(2026年度薬価基準(2026年4月改定))です。後発品(ジェネリック)は2026年5月時点では存在しません。
| 薬剤名 | 1錠の薬価 | 14日分の薬価(1日1錠) | 14日分の自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|---|
| ソーティクツ錠6mg(先発品) | 2,533.40円 | 35,467.6円 | 約10,640円 |
| 薬剤名 | 1錠の薬価 | 30日分の薬価(1日1錠) | 30日分の自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|---|
| ソーティクツ錠6mg(先発品) | 2,533.40円 | 76,002円 | 約22,801円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料・スクリーニング検査費などが加算されます。高額療養費制度の対象となる場合があります。
高額療養費制度について
月の医療費が一定額を超えた場合、高額療養費制度により自己負担額が軽減されます。また、限度額適用認定証を事前に取得しておくことで、窓口での支払いを限度額内に抑えることができます。制度の詳細はお住まいの自治体や加入保険組合にお問い合わせください。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: ソーティクツはどんな人に向いていますか?
A1: 外用薬・紫外線療法・従来の内服薬(メトトレキサート・シクロスポリンなど)で十分な効果が得られていない中等症〜重症の乾癬患者さんに適しています。特に、注射への抵抗感がある方や、通院頻度を減らしたい方、爪・頭皮など難治部位の乾癬にお悩みの方に有力な選択肢となります。ただし、体表面積の10%以上の皮疹または難治部位病変があることが保険適用の要件です。
Q2: ソーティクツはいつから効き始めますか?
A2: 通常、投与開始から16週前後で効果が評価されます。臨床試験ではPASI75達成(皮疹が75%以上改善)が16週時点で約53〜58%の患者さんに認められました。効果の発現は段階的なため、速効性を期待するのではなく、じっくり継続することが重要です。治療反応は通常24週以内に得られるとされています。
Q3: オテズラ(アプレミラスト)と何が違いますか?
A3: どちらも乾癬に用いる内服の分子標的薬ですが、大きな違いが2点あります。①有効性:国際第Ⅲ相試験でソーティクツはオテズラより統計学的に有意に高い改善率を示しています。②処方制限:オテズラは一般の皮膚科でも処方できますが、ソーティクツは日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設でのみ処方可能です。その分、投与前後の検査管理が充実した環境で使用できます。
Q4: どこで処方してもらえますか?
A4: ソーティクツは、日本皮膚科学会が認定した分子標的薬使用承認施設のみで処方が可能です。処方を希望される場合は、日本皮膚科学会のウェブサイトまたはかかりつけの皮膚科医にご相談ください。大阪の花ふさ皮ふ科グループについては、お気軽にお問い合わせください。
Q5: 投与前にどのような検査が必要ですか?
A5: 投与開始前に、①結核の確認(胸部X線またはCT)、②血液検査(B型・C型肝炎ウイルス、肝機能、血算など)、③感染症スクリーニング全般が必要です。また、必要なワクチン(帯状疱疹ワクチンのシングリックスなど)があれば、開始前に接種を済ませておくことが推奨されます。
Q6: 生物学的製剤(注射)と一緒に使えますか?
A6: 添付文書上、乾癬に対する生物学的製剤との安全性・有効性は確立されていないため、併用は避けることとされています。生物学的製剤からソーティクツへの切り替えを検討する場合は、必ず主治医にご相談ください。
Q7: 妊娠中や授乳中でも服用できますか?
A7: 妊娠中・授乳中の安全性は確立されていません。妊娠を希望する方・妊娠中・授乳中の方は自己判断で服用せず、必ず主治医にご相談ください。妊娠可能な年齢の女性には、適切な避妊法の実施が求められる場合があります。
7. 皮膚科専門医解説 ソーティクツの要点まとめ
- 適応:外用・紫外線療法・既存内服薬で効果不十分な尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症(体表面積10%以上または難治部位病変)
- 作用:世界初の経口TYK2阻害薬。IL-12・IL-23・Ⅰ型IFNを介する炎症シグナルを選択的に遮断
- 飲み方:1日1回1錠(6mg)を経口服用。24週以内に効果を評価
- メリット:注射なしで生物学的製剤に匹敵する高い有効性。爪・頭皮など難治部位にも効果的
- 注意点:感染症リスクの増大・生ワクチン接種不可・生物学的製剤との併用回避。承認施設での処方・定期検査が必須
- 費用:1錠2,533.40円(2026年度薬価基準)。30日3割負担で約22,801円。高額療養費制度の活用を
乾癬は完治が難しい慢性疾患ですが、ソーティクツをはじめとした分子標的薬の進歩により、皮膚症状のコントロールや生活の質(QOL)の改善が大きく期待できる時代となっています。治療薬の選択は患者さん一人ひとりの重症度・生活環境・希望に基づいて行うことが重要です。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な乾癬治療をご提案しています。 「塗り薬では改善しない乾癬が続いている」「内服で乾癬を治したい」「注射以外の分子標的薬を検討したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
-
日本皮膚科学会. 乾癬診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌 2024.
▶ 国内における乾癬治療の標準指針。TYK2阻害薬を含む分子標的薬の適応・管理方法が整理されており、本記事の適応基準・治療選択フローの根拠。 -
Armstrong AW, et al. Deucravacitinib versus placebo and apremilast in moderate to severe plaque psoriasis: 52-week efficacy and safety results from the phase 3 POETYK PSO-1 trial. J Am Acad Dermatol. 2023;88(1):29-39. DOI:10.1016/j.jaad.2022.07.002
▶ ソーティクツとプラセボ・オテズラを直接比較した国際第Ⅲ相試験(POETYK PSO-1)の52週データ。PASI75・sPGA 0/1いずれもソーティクツが有意に優れることを示した主要エビデンス。 -
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社. ソーティクツ錠6mg 添付文書(第3版, 2023年12月改訂).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌(重篤な感染症・活動性結核)・副作用・ワクチン接種に関する注意・生物学的製剤との併用回避など、本記事の薬学的記述の主要根拠。
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