【ボアラ(デキサメタゾン吉草酸エステル)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:湿疹・皮膚炎/ステロイド外用薬

ボアラ(一般名:デキサメタゾン吉草酸エステル)は、湿疹・皮膚炎・乾癬・虫刺されなどさまざまな皮膚炎症に処方されるストロングクラスのステロイド外用薬です。1986年にマルホ株式会社より発売され、40年近くにわたって皮膚科診療で使用されてきた実績のある塗り薬で、「かゆくて赤い湿疹が治まらない」「皮膚炎がなかなか引かない」といったお悩みに対し、皮膚科専門医が選択する代表的な外用ステロイド剤の一つです。

実はボアラには、同じストロングクラスの代表薬であるベタメタゾン吉草酸エステル製剤よりも一部の抗炎症指標で優れた作用を持つことが動物実験で示されており、”ストロングの中でも上位”に位置付けられています。本記事では、その作用機序から軟膏・クリームの使い分け、副作用の正しい理解まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。


1. ボアラ(デキサメタゾン吉草酸エステル)とは

ボアラ(一般名:デキサメタゾン吉草酸エステル)は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用薬に分類される塗り薬です。有効成分デキサメタゾン吉草酸エステルが1g中1.2mg(0.12%)配合されており、マルホ株式会社が製造販売しています。

ステロイド外用薬は抗炎症作用の強さによって5段階に分類されますが、ボアラは上から3番目の「ストロング(Strong・第3群)」に属します。体幹・四肢の湿疹に対して効果と安全性のバランスが良く、皮膚科で幅広く処方される強さのクラスです。

項目 内容
製品名 ボアラ軟膏0.12% / ボアラクリーム0.12%
一般名 デキサメタゾン吉草酸エステル
製造販売 マルホ株式会社
分類 副腎皮質ホルモン外用薬(ストロングクラス・第3群)
剤形 軟膏・クリーム(各0.12%)
発売年 1986年
後発品 なし(2026年5月時点)

2. ボアラの特徴

ボアラの最大の特徴は、ストロングクラスの中でも特に高い抗炎症作用を持つ点です。同じストロングクラスの代表薬であるベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロン-V軟膏など)と比べ、肉芽増殖抑制作用・アジュバント関節炎抑制作用・遅延型アレルギー性皮膚炎症抑制作用がより強いことが、動物実験(ラット・マウス)で確認されています。

●強力な抗炎症・免疫抑制作用

デキサメタゾン吉草酸エステルは、細胞内のグルココルチコイド受容体と結合し、炎症性サイトカインの産生抑制・T細胞等の増殖抑制・血管収縮といった複数の機序を通じて抗炎症効果を発揮します。皮膚の赤み・腫れ・かゆみを速やかに鎮める”消炎の切り札”のような作用です。

●皮膚への速やかな移行と持続性

塗布後、有効成分は皮膚中へ速やかに移行し、比較的長く皮膚に存在することが動物実験で確認されています。1日1〜数回の塗布でも患部に有効濃度を維持しやすい特性があります。

●軟膏とクリームの2剤型

患部の状態・部位・好みに応じて使い分けられる2剤型が用意されています。

剤型 特徴 向いている部位・症状
軟膏(0.12%) 刺激が少なく保湿力が高い。べたつきはあるが患部を保護する力が強い カサカサした患部・ジュクジュクした患部どちらにも使用可
クリーム(0.12%) べたつきが少なく伸びが良い。傷口にしみることがある 汗をかく部位・毛の多い部位・頭皮まわりなど

●後発品(ジェネリック)はなし

2026年5月時点でボアラと同一成分のジェネリック医薬品は販売されていません。同一成分の後発品「ザルックス軟膏・クリーム」はかつて販売されていましたが、現在は販売中止されています。


3. 適応疾患と使用方法

適応疾患

ボアラ軟膏0.12%・クリーム0.12%の効能・効果(添付文書準拠)は以下のとおりです。

  • 湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬を含む)
  • 乾癬(かんせん)
  • 痒疹群(蕁麻疹様苔癬、固定蕁麻疹を含む)
  • 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
  • 虫刺症(虫刺され)
  • 慢性円板状エリテマトーデス
  • 扁平苔癬(へんぺいたいせん)

アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎(かぶれ)・手湿疹なども湿疹・皮膚炎群に含まれます。

使用方法

3つの重要ポイント

  1. 使用量は「適量」を適切に:通常1日1〜数回、患部に適量を塗布します。塗り薬の量の目安として「FTU(フィンガーチップユニット)」という考え方があり、人差し指の第一関節までチューブから出した量(約0.5g)が手のひら2枚分の面積に相当します。少なすぎると十分な効果が得られません。
  2. 皮膚感染症には原則使用しない:細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症がある場合はボアラを使用しないことが原則です。やむを得ず使用する場合は抗菌薬・抗真菌薬との併用を考慮します。
  3. 長期連用・広範囲への漫然とした使用は避ける:症状が改善したら医師の指示に従って減量・中止します。自己判断で長期にわたり使い続けることは副作用リスクを高めます。

4. 使用する上の注意点

比較的安全性の高い薬剤ですが、ステロイド外用薬である以上、正しく使用することが重要です。

●禁忌(使用してはいけない方)

以下に該当する方にはボアラを使用できません。

  • 細菌・真菌・ウイルス皮膚感染症がある方(感染症を悪化させるおそれ)
  • 本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある方
  • 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎の方(治癒遅延・感染のおそれ)
  • 皮膚潰瘍、第2度深在性以上の熱傷・凍傷の方(皮膚の再生を抑制するおそれ)

●主な副作用

  • ステロイドざ瘡(長期連用で発生しやすい)
  • 皮膚細菌性感染症(伝染性膿痂疹・毛嚢炎など):頻度0.1〜5%未満
  • 皮膚真菌性感染症(皮膚カンジダ症・皮膚白癬など):頻度0.1%未満
  • 酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎(ほおの潮紅・丘疹・毛細血管拡張):長期連用で発生
  • 皮膚刺激感・そう痒感・発赤:頻度0.1%未満

●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)

  • 眼圧亢進・緑内障・後嚢白内障(頻度不明):眼瞼皮膚への使用や、大量・長期・広範囲使用、密封法(ODT)で起こりうる
  • 副腎皮質機能抑制:大量・長期・広範囲の密封法使用で全身性ステロイド投与と同様の症状が現れることがある

●長期連用で起こりうる皮膚への影響

長期連用により、ステロイド皮膚(皮膚萎縮・毛細血管拡張・紫斑)・魚鱗癬様皮膚変化・皮膚色素脱失・多毛などが現れることがあります。これらが生じた場合は徐々に使用を控え、ステロイドを含まない薬剤への切り替えを検討します。

●特定の方への注意

対象 注意点
妊婦・妊娠の可能性がある方 大量・長期・広範囲の使用は避けること
小児(子ども) 長期・大量使用またはODTで発育障害のおそれ。おむつはODTと同様の作用があるため注意
高齢者 大量・長期・広範囲使用・ODTは副作用が現れやすいため特に注意

●日常生活での注意

  • 眼には使用しないこと(適用上の注意)
  • ステロイド外用薬は市販品がない(デキサメタゾン吉草酸エステルの市販薬は販売されていない)ため、必ず医師の処方が必要です
  • 自動車運転・アルコールとの相互作用は特に規定されていませんが、皮膚への局所使用であるため通常の日常生活は支障ありません
  • 密封包帯法(ODT)を行う場合は医師の指示に従ってください

5. 薬価と費用

ボアラ軟膏0.12%の薬価は9.1円/g、ボアラクリーム0.12%の薬価は11.3円/gです(2026年度薬価基準)。
後発品(ジェネリック)は存在しないため、先発品のみの記載となります。

剤型 薬価(1gあたり) 10g処方時の薬剤費 10g処方時の自己負担(3割負担)
ボアラ軟膏0.12%(5g) 9.1円 45.5円 約14円
ボアラ軟膏0.12%(10g) 9.1円 91.0円 約27円
ボアラクリーム0.12%(5g) 11.3円 56.5円 約17円
ボアラクリーム0.12%(10g) 11.3円 113.0円 約34円

※2026年度薬価基準(2026年4月改定)。薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: ボアラはどのくらいの強さのステロイドですか?

A1: ボアラは、ステロイド外用薬の強さ5段階のうち上から3番目の「ストロング(Strong・第3群)」に分類されます。体幹・手足の湿疹・皮膚炎に対して効果と安全性のバランスが良いクラスで、皮膚科で頻繁に処方されます。最も強い「ストロンゲスト(第1群)」や「ベリーストロング(第2群)」よりはマイルドですが、ストロングクラスの中では上位に位置する抗炎症力があります。

Q2: 軟膏とクリームはどう使い分ければよいですか?

A2: 軟膏は刺激が少なく保湿力が高いため、カサカサした乾燥肌や、じゅくじゅくした患部にも使いやすい剤型です。一方クリームはべたつきが少なく伸びが良いため、汗をかきやすい部位や毛の多い部位に塗りやすい特徴があります。ただし傷口には刺激を感じることがあります。どちらを使うかは医師の判断に従ってください。自己判断で軟膏をクリームに変えることは薬局ではできませんのでご注意ください。

Q3: 顔や陰部にも使用できますか?

A3: 顔・陰部・腋窩など皮膚の薄い部位へのストロングクラス以上のステロイド外用薬の使用は、副作用(皮膚萎縮・毛細血管拡張など)が現れやすいため、医師の判断なく自己判断での使用は避けてください。皮膚科専門医の診察のもとで適切な強さの薬剤を選んでもらうことが大切です。

Q4: ボアラの市販薬はありますか?

A4: デキサメタゾン吉草酸エステルと全く同じ成分の市販薬は販売されていません。ただし、同じストロングクラスの市販薬(「フルコートf」など、成分は異なる)は存在します。市販薬を5〜6日使用しても改善しない場合は、自己判断での使用を中止して皮膚科を受診することをお勧めします。

Q5: ボアラにジェネリック医薬品はありますか?

A5: 2026年5月時点で、ボアラ(デキサメタゾン吉草酸エステル)の後発品(ジェネリック)は販売されていません。かつて同一成分の「ザルックス軟膏・クリーム」が販売されていましたが、現在は販売が中止されています。

Q6: 長期間塗り続けても大丈夫ですか?

A6: 長期連用は推奨されません。ステロイド皮膚(皮膚萎縮・毛細血管拡張・紫斑)、ステロイドざ瘡、酒さ様皮膚炎などの副作用が生じるリスクが高まります。症状が改善したら医師の指示に従って減量・中止し、保湿剤などによるスキンケアに切り替えていくことが重要です。

Q7: 子どもやお年寄りに使っても大丈夫ですか?

A7: 使用できますが、いずれも特別な注意が必要です。小児では長期・大量使用やODTにより発育障害を来す恐れがあり、おむつはODTと同様の作用をするため特に注意が必要です。高齢者は副作用が現れやすいため、大量・長期・広範囲の使用は特に慎重に行う必要があります。いずれの場合も必ず医師の指示に従って使用してください。


7. 皮膚科専門医解説 ボアラの要点まとめ

  • 分類:ストロングクラス(第3群)のステロイド外用薬。軟膏・クリームの2剤型あり
  • 成分:デキサメタゾン吉草酸エステル0.12%。同クラスのベタメタゾン吉草酸エステルより一部の抗炎症指標で優れる
  • 適応:湿疹・皮膚炎群(アトピー性皮膚炎・かぶれ含む)・乾癬・痒疹群・掌蹠膿疱症・虫刺症・慢性円板状エリテマトーデス・扁平苔癬
  • 使い方:1日1〜数回、患部に適量塗布。感染症がある皮膚への使用は原則禁忌
  • 注意点:長期連用・広範囲使用は皮膚萎縮・ステロイドざ瘡などの副作用リスクあり。眼への使用は禁止
  • 費用:軟膏9.1円/g、クリーム11.3円/g(2026年度薬価基準)。後発品はなし

湿疹・皮膚炎の治療は、原因疾患・重症度・部位に応じて適切なステロイドの強さを選ぶことが非常に重要です。自己判断での長期使用は副作用の原因となります。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な湿疹・皮膚炎治療をご提案しています。 「かゆい湿疹が繰り返す」「どのステロイドが自分に合っているか知りたい」「長年の皮膚炎をしっかり治したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会

参考文献

  1. 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日本皮膚科学会雑誌 2021;131(13):2691-2777.
    ▶ ステロイド外用薬の強さの選択・使用方法・副作用・長期管理に関する国内標準ガイドライン。ストロングクラスの適切な使用部位と期間が示されている。

  2. マルホ株式会社. ボアラ軟膏0.12%・ボアラクリーム0.12% 医薬品インタビューフォーム(第5版, 2023年8月改訂).
    ▶ 製造販売元による公式情報。有効成分・作用機序・臨床試験成績・薬物動態・副作用・禁忌等が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  3. マルホ株式会社. ボアラ軟膏0.12%・ボアラクリーム0.12% 添付文書(2023年8月改訂).
    ▶ 効能・効果、用法・用量、禁忌、重大な副作用(眼圧亢進・緑内障・後嚢白内障)、妊婦・小児・高齢者への注意事項の根拠となる公式一次文書。


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