【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:塗り薬/角化症・乾燥肌
ケラチナミンコーワクリーム20%(一般名:尿素クリーム)は、尿素を20%という高濃度で配合した医療用の外用角質軟化・保湿剤です。「かかとがガチガチに硬い」「手のひらが乾燥してひびが入る」「魚の鱗のように皮膚が硬くなっている」――そうした角化症状に対して、皮膚科専門医が第一選択として処方する代表的な塗り薬の一つです。
実はケラチナミンは、単に”うるおいを与える”だけでなく、硬くなった角質そのものを溶かして柔らかくする”二刀流”の働きを持ちます。本記事では、その作用機序から使い方、副作用、市販薬との違い、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. ケラチナミンコーワクリーム20%(尿素)とは
ケラチナミンコーワクリーム20%(一般名:尿素クリーム)は、興和株式会社が製造販売する角質軟化保湿外用薬です。有効成分である尿素(ウレア)は、もともと私たちの皮膚にも存在する天然保湿因子(NMF: Natural Moisturizing Factor)の一つ。それを医療用途に20%という高濃度で配合しています。
「ケラチナミン(Keratinamin)」という名称は、皮膚のタンパク質であるケラチン(Keratin)に由来しており、”硬くなったケラチンに作用する薬”というコンセプトをそのまま名前に込めた製品名です。
皮膚科領域での主な適応疾患は以下のとおりです。
- 魚鱗癬(ぎょりんせん)
- 老人性乾皮症
- アトピー皮膚(アトピー性皮膚炎に伴う乾燥)
- 進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)
- 足蹠部皸裂性皮膚炎(かかとのひびわれ・あかぎれ)
- 掌蹠角化症(てのひら・足の裏の角化)
- 毛孔性苔癬(さめ肌)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | ケラチナミンコーワクリーム20% |
| 一般名 | 尿素クリーム |
| 製造販売 | 興和株式会社 |
| 分類 | 角質軟化保湿剤(皮膚軟化剤) |
| 剤形 | クリーム(20%) |
| 薬価収載 | 2012年6月 |
| 後発品 | あり(尿素クリーム20%「SUN」など) |
2. ケラチナミンコーワクリーム20%の特徴
ケラチナミンの最大の特徴は、「保湿作用」と「角質溶解作用」を同時に発揮する”二刀流”である点です。同じ尿素配合の塗り薬でも、10%製品(ウレパールなど)に比べて20%という高濃度であるため、角質の厚い部位への効果が特に強力です。
●保湿作用(水分保持)
尿素は吸湿性が非常に高く、角質層に水分を引き込んで蓄える働きをします。乾燥によってバリア機能が低下した皮膚に水分を補給し、健やかな状態へと導きます。
●角質溶解作用(角質を柔らかくする)
硬くなった皮膚の正体は、ケラチン(角質タンパク質)が過剰に積み重なった状態です。尿素はケラチン同士の結合を緩め、いわば”タンパク質の鎖を切断する鍵”として機能することで、厚く硬化した角質を溶かして剥がれやすくします。20%濃度ではこの作用が特に強く発揮されます。
●かかと・ひじ・ひざなど角質が厚い部位に最適
角質軟化作用が強い20%製剤は、かかとのひびわれ・ひじやひざの黒ずみ・手のひらの角化など、角質が特に分厚く硬くなった部位への使用に適しています。一方、顔や傷のある部位には基本的に使用しません。
●ステロイドを含まない非ステロイド系外用薬
ケラチナミンはステロイドを含まないため、長期使用でもステロイド特有の皮膚菲薄化・毛細血管拡張などのリスクがありません。保湿・角質ケアを主目的とした継続使用に向いています。
●市販品との違い
同名の「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」が市販されていますが、医療用処方品は保険適用となるため、市販品を毎回購入するより費用を抑えられる場合があります。医療用と市販品の有効成分(尿素20%)は同一ですが、基剤(クリームベース)に違いがある場合があります。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
ケラチナミンコーワクリーム20%の添付文書に記載されている適応症は以下のとおりです。
| 疾患名 | 主な症状・特徴 |
|---|---|
| 魚鱗癬 | 皮膚が魚の鱗のように乾燥・硬化する遺伝性・後天性疾患 |
| 老人性乾皮症 | 加齢による皮脂・NMF減少で生じる乾燥・かゆみ |
| アトピー皮膚 | アトピー性皮膚炎に伴う乾燥・バリア機能低下 |
| 進行性指掌角皮症 | 主婦湿疹の乾燥型。指先・手のひらのひびわれ |
| 足蹠部皸裂性皮膚炎 | かかと・足の裏のひびわれ・あかぎれ |
| 掌蹠角化症 | 手のひら・足の裏が異常に角化・硬化する疾患 |
| 毛孔性苔癬 | 毛穴が角化して”さめ肌”になる状態(二の腕など) |
使用方法
通常、1日1〜数回、患部に塗擦するのが基本用法です。
3つの重要ポイント
- 患部に適量を取り、やさしくすり込む:ゴシゴシ摩擦すると刺激になるため、やわらかく塗り広げます。特にひびわれがある部位は無理にこすらないようにします。
- 炎症・傷・ただれのある部位には使わない:尿素は傷口やびらん、炎症部位に触れると強い「ぴりぴり感」「灼熱感」を引き起こします。炎症が落ち着いてから使用しましょう。
- 粘膜・眼周囲には絶対に使用しない:尿素は粘膜機能を障害するため、眼・口・鼻などの粘膜部位への使用は禁忌です。
効果を実感するまでの期間は、乾燥やかさつきは数日〜1週間程度で改善を感じることが多いですが、魚鱗癬・掌蹠角化症など慢性的な角化症では2〜4週間以上の継続使用が必要です。
4. 使用する上の注意点
比較的安全性の高い外用薬ですが、以下の点に十分注意して使用してください。
●主な副作用
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| ぴりぴり感・灼熱感 | 傷や炎症部位、刺激感受性が高い部位に使うと生じやすい |
| 紅斑(赤み) | 過剰塗布や皮膚が敏感な場合に出ることがある |
| そう痒感(かゆみ) | まれに使用部位にかゆみが生じる |
| 丘疹・落屑 | 角質溶解が強く出た場合にみられることがある |
| 皮膚疼痛 | 傷がある部位への使用で痛みを感じることがある |
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
尿素外用薬で重篤な全身性副作用(アナフィラキシー等)の報告は非常に稀ですが、広範囲に長期連用した場合や、皮膚バリアが著しく低下している状態では経皮吸収が増加する可能性があります。異常を感じたらすぐに使用を中止し、医師にご相談ください。
●使用禁忌・使用不可の部位
- 眼粘膜・口腔粘膜などの粘膜部位(禁忌:尿素が粘膜機能を障害します)
- 炎症・亀裂・びらんのある部位(ぴりぴり感・疼痛が生じます)
- 顔面(特に目の周囲)への使用は避けることが推奨されます
●こんな方は事前に医師にご相談を
- 尿素または製品基剤の成分でアレルギー歴がある方
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方(治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用)
- 授乳中の方(治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮して判断)
- 皮膚刺激に対する感受性が亢進している方(アトピー性皮膚炎の重症例など)
- 小児(皮膚が薄く刺激を受けやすいため、使用部位・量に注意)
●日常生活での注意
- アルコール:外用薬のため飲酒との相互作用はありません
- 自動車運転:使用後の運転に制限はありません
- 市販品との使い分け:医師から処方を受ける医療用製品(保険適用)と、市販品(OTC)は有効成分が同じ尿素20%ですが、自己判断での使用継続には限界があります。症状が改善しない場合は必ず皮膚科へ
5. 薬価と費用
ケラチナミンコーワクリーム20%の薬価は、1gあたり4.1円(2026年度薬価基準(2026年4月改定))です。後発品(ジェネリック)である「尿素クリーム20%「SUN」」は1gあたり3.3円で流通しています。
皮膚科での一般的な処方量は1回25〜100g単位で、疾患の範囲・重症度によって異なります。以下は1日2回(50g/日として1日あたり概算)・一般的な処方期間での目安です。
14日分の費用目安(処方量50g/本×2本=100g想定)
| 薬剤名 | 1gあたりの薬価 | 100g分の薬価 | 3割負担の自己負担額(目安) |
|---|---|---|---|
| ケラチナミンコーワクリーム20%(先発品) | 4.1円 | 410円 | 約123円 |
| 尿素クリーム20%「SUN」(後発品) | 3.3円 | 330円 | 約99円 |
30日分の費用目安(処方量50g/本×4本=200g想定)
| 薬剤名 | 1gあたりの薬価 | 200g分の薬価 | 3割負担の自己負担額(目安) |
|---|---|---|---|
| ケラチナミンコーワクリーム20%(先発品) | 4.1円 | 820円 | 約246円 |
| 尿素クリーム20%「SUN」(後発品) | 3.3円 | 660円 | 約198円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。処方量は患者さんの症状・塗布範囲によって大きく異なるため、実際の費用は医師・薬剤師にご確認ください。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: ケラチナミンとウレパール・パスタロンは何が違いますか?
A1: いずれも有効成分は「尿素」で、適応症も同じです。主な違いは製造販売元・製品名・基剤(クリームベース)の処方です。ケラチナミンコーワ(興和)は20%、ウレパール(大塚製薬工場)は10%、パスタロン(佐藤製薬)は10%・20%の両濃度があります。角質が特に厚い部位には20%製剤が適しており、濃度や部位に合わせて医師が選択します。
Q2: かかとのひびわれには何日くらいで効果が出ますか?
A2: 個人差はありますが、1〜2週間程度の継続使用で柔らかさの改善を実感される方が多いです。慢性化した角化症では4週間以上かかることもあります。入浴後など皮膚がやわらかくなったタイミングで塗るとより効果的です。
Q3: 顔に使えますか?
A3: 基本的には顔面への使用は推奨されません。特に目の周囲など粘膜に近い部位は禁忌です。顔の乾燥には皮膚科医が適切な低刺激の保湿剤を選択しますので、ご相談ください。
Q4: ステロイドが入っていますか?
A4: ケラチナミンコーワクリーム20%にはステロイドは含まれていません。有効成分は尿素のみです。安心して長期使用できますが、皮膚炎の炎症コントロールにはステロイド外用薬を別途併用することがあります。
Q5: 市販のケラチナミンコーワと処方品は同じですか?
A5: 有効成分(尿素20%)は同じですが、医療用処方品は保険適用が受けられるため、市販品を自費購入するよりも費用面で有利になる場合があります。また、医師が症状に応じて適切な製品・使用量を指示できる点が処方品のメリットです。
Q6: 傷口に塗ってしまいました。どうすればいいですか?
A6: 傷やびらん・亀裂のある部位にケラチナミンが触れると、強いぴりぴり感・疼痛が生じます。すぐに流水で洗い流し、痛みが続くようであれば医療機関を受診してください。
Q7: 子どもに使っても大丈夫ですか?
A7: 小児への使用は禁忌ではありませんが、皮膚が薄く刺激を受けやすいため、使用部位・量を慎重に判断する必要があります。自己判断での使用は避け、必ず医師の指示に従ってください。
7. 皮膚科専門医解説 ケラチナミンの要点まとめ
- 適応:魚鱗癬・老人性乾皮症・アトピー皮膚・進行性指掌角皮症・足蹠部皸裂性皮膚炎・掌蹠角化症・毛孔性苔癬に用いる角質軟化保湿外用薬
- 作用:保湿(水分保持)と角質溶解の”二刀流”。20%高濃度で特に角化の強い部位に有効
- 使い方:1日1〜数回、患部に塗擦。入浴後などに使うと効果的
- メリット:ステロイドフリー・長期使用可能。かかと・ひじ・ひざなど角化部位に最適
- 注意点:粘膜・傷・炎症部位への使用は禁忌または避けること。ぴりぴり感・灼熱感に注意
- 費用:先発品 100g分で3割負担約123円、後発品ならさらに安価(2026年度薬価基準)
かかとのひびわれや魚鱗癬・さめ肌といった角化症状は、適切な保湿・角質ケアを継続することで大きく改善します。市販品でなかなか改善しない場合や、症状が広範囲・重症の場合は皮膚科専門医への受診をお勧めします。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な乾燥肌・角化症治療をご提案しています。 「かかとのガサガサが改善しない」「魚鱗癬やさめ肌をきちんと治したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
-
興和株式会社. ケラチナミンコーワクリーム20% 電子添文(2023年5月改訂版).
▶ 製造販売元による公式情報。効能・効果(魚鱗癬・老人性乾皮症・アトピー皮膚・進行性指掌角皮症・足蹠部皸裂性皮膚炎・掌蹠角化症・毛孔性苔癬)、用法用量(1日1〜数回塗擦)、禁忌(粘膜部位への使用禁止)、副作用(ぴりぴり感・紅斑・そう痒感など)が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。 -
日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日本皮膚科学会雑誌 2021;131(13):2691-2777.
▶ アトピー性皮膚炎における保湿外用薬の位置づけを示すガイドライン。尿素含有製剤を含む保湿剤の定期的な塗布がバリア機能改善・再燃予防に有効であると推奨されている。 -
Lynde CW. Moisturizers: What they are and a practical approach to product selection. Skin Therapy Letter 2001;6(13):3-5.
▶ 尿素をはじめとするヒュメクタント(吸湿性保湿成分)の角質層における水分保持機序と、濃度依存的な角質溶解作用(20%以上で顕著)を解説した総説。ケラチナミンの二刀流作用の科学的根拠の一つ。
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