【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:ニキビ/皮膚感染症
アクアチム(一般名:ナジフロキサシン)は、赤く腫れた炎症性ニキビや、とびひ・毛のう炎などの皮膚感染症に広く処方されるニューキノロン系の外用抗菌薬です。1993年の発売以来、皮膚科診療で30年以上にわたって処方され続けてきた信頼性の高い塗り薬で、「炎症性のニキビが繰り返す」「化膿したできものを早く治したい」といったお悩みに対し、皮膚科専門医が最初に選択する代表的な外用剤のひとつです。
実はアクアチムは、世界で初めて承認されたニューキノロン系の外皮用抗菌薬です。クリーム・軟膏・ローションという3種類の剤形が用意されており、病態や生活スタイルに合わせた使い分けができるのも大きな特徴です。本記事では、作用機序から正しい塗り方、薬価まで、皮膚科専門医の視点でわかりやすく解説します。
1. アクアチム(ナジフロキサシン)とは
アクアチム(一般名:ナジフロキサシン)は、大塚製薬株式会社が製造販売するニューキノロン系(フルオロキノロン系)の外用抗菌薬です。細菌がDNAを複製する際に不可欠な酵素(DNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣ)を阻害し、菌の設計図のコピーを禁止して増殖を止める「殺菌的」な働きをします。
適応菌種はブドウ球菌属とアクネ菌(Cutibacterium acnes)。グラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌と幅広いスペクトルをカバーします。
なお「アクアチム(ACUATIM)」という名称は、Acne and Trauma, Infection of Mucosaの頭文字に由来するとされています(実際には粘膜への使用はほとんどありません)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | アクアチムクリーム1%/アクアチム軟膏1%/アクアチムローション1% |
| 一般名 | ナジフロキサシン(Nadifloxacin) |
| 製造販売 | 大塚製薬株式会社 |
| 分類 | ニューキノロン系(フルオロキノロン系)外用抗菌薬 |
| 剤形 | クリーム・軟膏・ローション(いずれも1%) |
| 発売年 | クリーム1993年/ローション1996年/軟膏2003年 |
| 後発品 | あり(ナジフロキサシンクリーム・軟膏・ローション1%「各社」) |
2. アクアチムの特徴
アクアチムの最大の特徴は、外用薬でありながら高い殺菌力と低刺激性を両立している点です。多くのニキビ治療外用薬は皮膚刺激が課題となりますが、アクアチムは皮膚科専門医から「副作用(局所刺激など)が極めて少ない」と評価されており、使いやすさの面でも長く支持されています。
●世界初のニューキノロン系外皮用剤
ナジフロキサシンは大塚製薬が開発した、世界で初めて承認されたニューキノロン系外皮用抗菌薬です。内服のキノロン系薬と異なり、塗り薬として皮膚局所に直接作用するため、全身への吸収がごくわずかで済みます。
●アクネ菌・ブドウ球菌への強力な殺菌作用
炎症性ニキビの主因であるアクネ菌(C. acnes)と、とびひ・毛のう炎の原因となる表皮ブドウ球菌・黄色ブドウ球菌の双方に強い抗菌力を示します。日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」でも、炎症性皮疹(赤ニキビ・黄ニキビ)に対して外用抗菌薬として推奨度A(強く推奨)を得ています。
●3剤形で使い分けができる
病態や塗布部位に応じて3種類から選択できます。
| 剤形 | 使用感 | 特徴・向いている場面 |
|---|---|---|
| クリーム1% | しっとり | 顔の炎症性ニキビ・日常使いに最適 |
| 軟膏1% | 保護力が高い | 皮膚感染症(とびひ・せつ等)・乾燥が気になる場面 |
| ローション1% | さっぱり | 頭皮・背中など毛のある部位にも塗りやすい |
●光線過敏症のリスクが外用では限定的
内服ニューキノロン系薬は光線過敏症が問題になることがありますが、アクアチムは外用薬のため全身吸収量が極めて少なく、皮膚科臨床上のリスクは限られています。ただし添付文書上は注意が記載されているため、塗布後の強い紫外線暴露は避けることが望ましいです。
●内服薬との相互作用がほぼない
塗り薬であるため、他の飲み薬との薬物相互作用は基本的に生じません。複数の内服薬を服用中の方でも使いやすい点が特長です。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
アクアチムの剤形ごとの適応症は以下のとおりです。
| 剤形 | 主な適応症 |
|---|---|
| クリーム1% | ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症 |
| 軟膏1% | 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症 |
| ローション1% | ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの) |
表在性皮膚感染症:毛のう炎、尋常性毛瘡、伝染性膿痂疹(とびひ)など
深在性皮膚感染症:せつ、よう、蜂巣炎(ほうそう)など
ざ瘡(炎症性ニキビ):赤ニキビ・黄ニキビ(白ニキビ・黒ニキビへの効果は限定的)
使用方法
通常、適量を1日2回、患部に塗布します。ローションは洗顔後に使用するよう添付文書に明記されています。
3つの重要ポイント
- 炎症のある部位だけに塗る:正常な皮膚への塗布は不要です。クリームは赤みや膿のある部分にのみピンポイントで使用しましょう。
- 4週間で効果がなければ中止する:添付文書では「4週間で効果が認められない場合は中止すること」と定められています。効果が認められた場合も、炎症性皮疹が消失した時点で継続使用しないよう指示されています。
- 多く塗っても効果は変わらない:1日2回が基本です。回数を増やしても効果は高まらず、皮膚への刺激が増すだけです。
塗る順番の目安(ニキビ治療で他の外用薬と併用する場合)
洗顔 → 保湿剤 → アダパレン(ディフェリン)やベピオゲルなど → アクアチムクリーム/ローション
4. 使用する上の注意点
局所刺激の少ない薬剤ですが、次の点を必ず確認してください。
●主な副作用
- 皮膚そう痒感(かゆみ)
- 皮膚刺激感、皮膚乾燥、つっぱり感
- 発赤、潮紅、丘疹
- 顔面熱感、皮膚ほてり感
- 接触皮膚炎(かぶれ)
いずれも頻度不明ですが、塗り薬としては比較的軽微な副作用です。症状が続く場合は使用を中止して医師にご相談ください。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
添付文書上、外用薬として特記されている重大な副作用はありませんが、アナフィラキシー様症状(発疹・呼吸困難・顔面腫脹など)が起きた場合はただちに使用を中止し、医療機関を受診してください。
●使用してはいけない方(禁忌)
- ナジフロキサシンまたはキノロン系薬剤に過敏症(アレルギー)の既往がある方
●こんな方は使用前に医師にご相談を
- 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方:安全性が確立されていないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ使用します
- 乳幼児・小児:低出生体重児・新生児・乳児・幼児を対象とした臨床試験が実施されておらず、安全性未確立です
- 眼・粘膜への使用:眼科用途(角膜・結膜)には使用しないでください。誤って眼に入った場合は速やかに水で洗い流してください
●日常生活での注意
- スクラブ洗顔料・ピーリング系化粧品との併用は避ける:刺激が重なり皮膚トラブルの原因になります
- 塗布後の強い紫外線暴露は避ける:念のため日焼け止めを重ねるか、日中の使用は帰宅後などに工夫しましょう
- 眠気は生じない:自動車の運転に制限はありません
- アルコール(飲酒)との相互作用なし:外用薬のため全身的な影響は基本的にありません
- 市販薬はない:医師の処方が必要です
●耐性菌に関する注意
抗菌薬の外用剤を漫然と長期使用すると、薬が効かない耐性菌が生じるリスクがあります。症状が改善したら速やかに使用を中止し、医師の指示のない自己判断での長期継続は避けてください。
5. 薬価と費用
アクアチムの薬価(2026年度薬価基準・2026年4月改定)は下記のとおりです。ニキビへの処方では主にクリームまたはローション(10g規格・20mL規格が多い)が使用されます。
クリーム・軟膏(1g単位)
| 薬剤名 | 1gあたりの薬価 | 10g規格の薬価 | 10g規格の自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アクアチムクリーム1%(先発品) | 18.5円 | 185円 | 約56円 |
| アクアチム軟膏1%(先発品) | 20.7円 | 207円 | 約62円 |
| ナジフロキサシンクリーム1%(後発品) | 約11.3円 | 約113円 | 約34円 |
| ナジフロキサシン軟膏1%(後発品) | 約11.3円 | 約113円 | 約34円 |
ローション(1mL単位)
| 薬剤名 | 1mLあたりの薬価 | 20mL規格の薬価 | 20mL規格の自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アクアチムローション1%(先発品) | 20.7円 | 414円 | 約124円 |
| ナジフロキサシンローション1%(後発品) | 約11.3円 | 約226円 | 約68円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)。後発品薬価はメーカー・規格により異なる場合があります。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: アクアチムはどのようなニキビに効きますか?
A1: 赤く腫れた炎症性ニキビ(赤ニキビ)や、膿を持った黄ニキビに効果が期待できます。一方、毛穴の詰まりだけの白ニキビ・黒ニキビ(面皰)は細菌感染を伴わないため、アクアチムの効果は限定的です。日本皮膚科学会ガイドライン2023では炎症性皮疹に対して推奨度A(強く推奨)、面皰には推奨度C2(推奨しない)とされています。
Q2: クリーム・軟膏・ローションはどう使い分ければよいですか?
A2: 顔の炎症性ニキビにはクリームまたはローションが一般的です。クリームは保湿感があり乾燥肌の方にも馴染みやすく、ローションはさっぱりとした使用感で背中・頭皮など毛のある部位にも塗りやすいです。軟膏はとびひやせつなど皮膚感染症の患部を覆い保護したい場合に向いています。いずれを選ぶかは医師にご相談ください。
Q3: 何週間くらいで効果が出ますか?
A3: 個人差がありますが、使用開始から1〜2週間程度で赤みや腫れが落ち着いてくることが多いです。ただし添付文書では「4週間で効果が認められない場合は中止すること」とされているため、4週間経っても改善しない場合は医師に相談し別の治療法を検討します。
Q4: ジェネリック(後発品)はありますか?
A4: はい、「ナジフロキサシンクリーム/軟膏/ローション1%「トーワ」「SUN」など」の後発品があります。有効成分・用法用量は先発品と同一で、薬価は先発品の約60%程度です。保険診療での自己負担を抑えたい方はご相談ください。
Q5: アクアチムはステロイドが入っていますか?
A5: ステロイドは含まれていません。アクアチムはニューキノロン系の抗菌薬です。ステロイドの副作用(皮膚の菲薄化・毛細血管拡張など)を心配される方でも使用できます。
Q6: 妊娠中・授乳中でも使えますか?
A6: 安全性が十分に確立されていないため、原則として自己判断での使用は避けてください。治療上の有益性がリスクを上回ると医師が判断した場合にのみ使用されます。必ず受診時に妊娠中・授乳中であることをお伝えください。
Q7: アクアチムと他の塗り薬(ディフェリン・ベピオなど)を一緒に使っても大丈夫ですか?
A7: 炎症性ニキビにはアダパレン(ディフェリン)や過酸化ベンゾイル(ベピオ)との併用が行われることがあります。ただし一度に重ねて塗ると刺激が増す場合があります。塗る順番や使用タイミングは医師・薬剤師の指示に従ってください。スクラブ洗顔料やピーリング系化粧品との同時使用は刺激が強くなるため避けましょう。
7. 皮膚科専門医解説 アクアチムの要点まとめ
- 適応:炎症性ニキビ(赤ニキビ・黄ニキビ)・毛のう炎・とびひ・せつ・蜂巣炎などに用いられるニューキノロン系外用抗菌薬
- 作用:細菌のDNA複製酵素を阻害し、アクネ菌・ブドウ球菌を殺菌。白ニキビ・黒ニキビへの効果は限定的
- 剤形:クリーム(顔のニキビ向き)・軟膏(皮膚感染症向き)・ローション(背中・頭皮向き)の3種
- 使い方:1日2回、炎症のある部位のみに塗布。効果が出たら速やかに中止
- 注意点:4週間で改善しない場合は医師に相談。耐性菌防止のため漫然と長期使用しない。光線過敏に注意。キノロン系アレルギーのある方は禁忌
- 費用:クリーム先発品10g約56円(3割負担)。後発品ならさらに安価
炎症性ニキビや皮膚感染症の治療は、原因菌・重症度・病態に応じた薬剤選択が大切です。アクアチムは効果が実証された信頼性の高い外用抗菌薬ですが、耐性菌のリスクを避けるため自己判断での長期使用は避け、定期的に皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適なニキビ・皮膚感染症治療をご提案しています。 「炎症性のニキビが繰り返す」「とびひや毛のう炎を早く治したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
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日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(3):407-450.
▶ 国内における尋常性ざ瘡(ニキビ)治療の標準ガイドライン。ナジフロキサシン(アクアチム)を含む外用抗菌薬は炎症性皮疹(赤ニキビ・黄ニキビ)に推奨度A(強く推奨)、面皰には推奨度C2とされており、本記事の適応判断の根拠。 -
大塚製薬株式会社. アクアチムクリーム1%・アクアチム軟膏1%・アクアチムローション1% 添付文書(2020年7月改訂版).
▶ 製造販売元による公式情報。適応菌種・適応症・用法用量・禁忌・副作用・特定背景患者への注意(妊婦・小児等)が記載されており、本記事における薬学的記述の主要な根拠。 -
Kurokawa I, et al. New developments in our understanding of acne pathogenesis and treatment. Experimental Dermatology 2009;18(10):821-832. DOI:10.1111/j.1600-0625.2009.00890.x
▶ ニキビの病態(アクネ菌・皮脂・炎症反応)と外用抗菌薬を含む治療戦略を包括的にレビューした論文。アクアチムを含むキノロン系外用薬の皮膚科診療における位置づけを理解するための背景文献。
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