デュアック配合ゲル(一般名:クリンダマイシンリン酸エステル水和物・過酸化ベンゾイルゲル)は、炎症性ざ瘡の治療に用いられる医療用外用薬です。2015年に国内で薬価収載された比較的新しい薬剤でありながら、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度A(強く推奨)に位置づけられており、皮膚科専門医が日常診療で頻繁に処方する塗り薬の一つです。
「市販のニキビケアを続けても赤ニキビが治らない」「繰り返す炎症ニキビをきちんと治したい」というお悩みに対して、デュアック配合ゲルは科学的根拠にもとづいた有効な選択肢となります。本記事では、その作用機序から正しい塗り方、注意点、費用まで皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
目次
1. デュアック配合ゲルとは
デュアック配合ゲルは、リンコマイシン系抗生物質のクリンダマイシン1% と過酸化ベンゾイル(BPO)3% の2成分を一つのゲル剤に組み合わせた配合剤です。製造販売はサンファーマ株式会社で、適応症は尋常性ざ瘡(ニキビ)です。
製品名「デュアック(Duac)」は、Dual(2つの)+ Acne(ニキビ) を組み合わせた造語で、「2つの有効成分でニキビに対抗する」という意味が込められています。
クリンダマイシン単剤(ダラシンTゲル)と過酸化ベンゾイル単剤(ベピオゲル)は以前から別々に処方されていましたが、デュアック配合ゲルはこの2剤を1本のチューブにまとめた国内初の配合剤です。2剤を別々に塗る手間が省け、相乗的な抗菌効果が期待できます。

2. デュアック配合ゲルの特徴
デュアック配合ゲルの最大の特徴は、異なる作用機序を持つ2成分の”三重奏”により、ニキビに対して多角的なアプローチができる点です。
●抗菌作用(クリンダマイシン+過酸化ベンゾイルの相乗効果)
クリンダマイシンは、アクネ菌(Cutibacterium acnes)などの細菌のリボソーム(50Sサブユニット)に結合してタンパク質合成を阻害し、増殖を抑えます。過酸化ベンゾイルは強い酸化力によってフリーラジカルを発生させ、アクネ菌の細胞膜を物理的に破壊します。2成分の抗菌作用が重なることで、クリンダマイシン単剤よりも高い殺菌効果が得られます。
●角質剥離作用(ピーリング効果)
過酸化ベンゾイルには毛穴の入り口に蓄積した古い角質を薄く剥がすピーリング作用があります。毛穴詰まりを解消することでニキビの原因となる環境そのものを改善し、薬剤成分が毛穴の奥まで届きやすくなります。
●耐性菌が生じにくい
抗生物質単剤(クリンダマイシンのみ)を長期使用すると、薬が効かない耐性菌が出現することがあります。しかしデュアックでは、過酸化ベンゾイルの物理的な殺菌機構が耐性菌の出現を抑制するため、クリンダマイシン単剤よりも耐性菌リスクが低いとされています。
●日本皮膚科学会ガイドラインで推奨度A
日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」において、デュアック配合ゲルは炎症性ニキビ(軽症・中等症・重症を問わず)に対して推奨度A(強く推奨する)に位置づけられています。
●臨床試験データ:2週間で約半数が50%以上改善
国内外の臨床試験では、2週間で炎症性皮疹の数が50%以上減少した患者がおよそ半数に上り、クリンダマイシン単独より有意に高い改善率が示されています。12週間継続使用で約80%の炎症性ニキビの減少も報告されています。
3. 適応疾患と使用方法
適応疾患
デュアック配合ゲルの適応症は尋常性ざ瘡(ニキビ)です。特に効果を発揮するのは、以下のタイプのニキビです。
- 赤ニキビ(炎症丘疹):アクネ菌が増殖して炎症が起きている状態
- 黄ニキビ(膿疱):炎症が進み膿を伴う状態
- コメド(白ニキビ):過酸化ベンゾイルの角質剥離作用により予防的効果も期待できる
嚢腫・結節(深く大きなニキビ)への使用は効果が限定的であり、添付文書上も注意を要する適応です。
使用方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使用回数 | 1日1回(通常、就寝前) |
| タイミング | 洗顔後、やわらかいタオルで水分を拭き取ってから塗布 |
| 塗り方 | ニキビの患部とその周囲のニキビができやすい範囲全体に面で塗り広げる |
| 塗る量 | 顔全体で約0.6g目安(1FTU≒0.3gで顔半分) |
| 治療期間 | 最長3か月(12週間)を目安に評価し、効果がなければ切り替えを検討 |
3つの重要ポイント
- ポイント塗りではなく面で塗る:赤ニキビにだけ点で塗るのは誤りです。目に見えないマイクロコメド(ニキビの芽)を含む範囲全体に薄く広げることが効果の鍵です。
- 使い始めは少量から慣らす:最初の1〜2週間は米粒大〜小豆大の量を狭い範囲に試して肌を慣らしてから、徐々に量と範囲を広げていきましょう。
- 保湿をセットで行う:塗布前に化粧水・乳液(ノンコメドジェニックテスト済みのもの推奨)で保湿することで、乾燥・刺激感を軽減して継続しやすくなります。
4. 使用する上の注意点
●主な副作用
国内臨床試験(1日1回群204例)では、全体の約24%に副作用が認められました。最も多いのは皮膚乾燥(7.4%)で、次いで接触性皮膚炎(5.4%)、そう痒症(4.4%)、顔面痛(4.4%)、紅斑(3.9%)、灼熱感(2.9%)の順でした。使用開始から1〜2週間は刺激感(ヒリヒリ・乾燥・皮むけ)が出やすい傾向がありますが、多くは肌が慣れるにつれて軽減します。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- 偽膜性大腸炎などの重篤な大腸炎:激しい腹痛・血便・重症の下痢が現れた場合はただちに使用を中止し受診してください
- アナフィラキシー・重篤なアレルギー反応(アトピー性体質の方は特に注意)
- 重症皮膚障害(紅斑や腫脹が顔面全体や頚部に及ぶ場合、水疱・びらんを伴う場合は中止)
●禁忌(使用してはいけない方)
- 本剤の成分またはリンコマイシン系抗生物質に対して過敏症の既往歴がある方(絶対禁忌)
●こんな方は事前に医師にご相談を
- 抗生物質に関連した下痢・大腸炎の既往がある方
- アトピー性体質の方
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方(有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用)
- 授乳中の方(母乳への移行は不明のため、授乳を避けることが望ましい)
- 12歳未満の小児(臨床試験未実施)
●保管上の注意
デュアック配合ゲルは2〜8℃の冷蔵庫で保管する必要があります(開封前・開封後ともに)。高温環境(30℃以上)ではクリンダマイシンが短期間で変質してしまうため、常温保管は禁物です。旅行などで持ち出す際は、保冷バッグを活用し、帰宅後ただちに冷蔵庫へ戻してください。
●日常生活での注意
- 日焼けを避ける:過酸化ベンゾイルの角質剥離作用により紫外線に対して肌が過敏になり、シミになりやすくなります。使用中は必ず日焼け止めを併用してください
- 衣類・寝具の脱色に注意:過酸化ベンゾイルの酸化漂白作用により、白以外の衣類・枕カバーに触れると脱色する場合があります
- 眠気は生じないため、自動車運転への制限はありません
- 市販はされておらず、医師の処方箋が必要です
5. 薬価と費用
デュアック配合ゲルの薬価は1gあたり95.9円(2026年度薬価基準・2026年4月改定)です。後発品(ジェネリック)は2026年5月時点で発売されていません。
| 規格 | 薬価(1g) | 1本(15g)の薬価 | 1本の自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|---|
| デュアック配合ゲル | 95.9円 | 1,438.5円 | 約432円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。薬価は2026年度薬価基準(2026年4月改定)に基づきます。最新の薬価は処方時に医師・薬剤師にご確認ください。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: デュアック配合ゲルはどれくらいで効果が出ますか?
Q2: どこに塗ればよいですか?赤ニキビにだけ点で塗るのでは駄目ですか?
Q3: いつまで使い続けてよいですか?
Q4: 過酸化ベンゾイルで服や布が脱色すると聞きました。どう対処すればよいですか?
Q5: デュアックとエピデュオゲルはどう違いますか?
Q6: 市販薬はありますか?
Q7: 妊娠中・授乳中でも使えますか?
7. 皮膚科専門医解説 デュアック配合ゲルの要点まとめ
- 適応:尋常性ざ瘡(炎症性ニキビ)。特に赤ニキビ・黄ニキビに有効
- 成分:クリンダマイシン1%(抗菌)+過酸化ベンゾイル3%(抗菌・角質剥離・耐性菌抑制)の国内初配合剤
- 作用:抗菌作用・角質剥離作用・耐性菌抑制の三重奏でニキビに多角的アプローチ
- 塗り方:1日1回就寝前、洗顔後にニキビができやすい範囲全体に面で塗布
- 使用期間:3か月(12週間)を目安。改善後はベピオゲルなどへ切り替え
- 保管:必ず冷蔵庫(2〜8℃)で保存。常温放置不可
- 注意点:乾燥・皮むけ・紅斑などの局所副作用あり。日焼け止め・保湿の併用を徹底。衣類の脱色に注意
- 禁忌:リンコマイシン系抗生物質に対して過敏症の既往がある方は使用不可
- 費用:1本(15g)あたり約432円(3割負担)
ニキビは放置すると炎症が繰り返され、ニキビ跡(瘢痕・色素沈着)が残るリスクが高まります。正しい薬剤選択と適切な使い方で、早期に炎症をコントロールすることが大切です。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適なニキビ治療をご提案しています。 「赤ニキビが繰り返しできる」「デュアック配合ゲルの使い方が不安」「ニキビ跡を残したくない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
参考文献
- 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌 2023;133(3):407-450.
▶ 国内ニキビ治療の標準指針。デュアック配合ゲル(クリンダマイシン・過酸化ベンゾイル配合剤)は炎症性ざ瘡に対して推奨度A(強く推奨)に位置づけられており、耐性菌予防の観点から使用期間の管理も重視されている。 - Thiboutot D, et al. New insights into the management of acne: An update from the Global Alliance to Improve Outcomes in Acne Group. J Am Acad Dermatol. 2009;60(5 Suppl):S1-50. DOI:10.1016/j.jaad.2009.01.019
▶ 国際的なニキビ治療アップデート。過酸化ベンゾイルと抗菌薬の配合剤使用が耐性菌発現リスクを低減し、炎症性ニキビに対して有効な第一選択治療となることが示されている。 - サンファーマ株式会社. デュアック配合ゲル 電子添文(2024年7月改訂).
▶ 製造販売元による公式情報。用法用量(1日1回塗布)・保管方法(2〜8℃冷蔵)・禁忌(リンコマイシン系過敏症の既往)・副作用(皮膚乾燥7.4%が最多)など、本記事の薬学的記述の主要な根拠。
デュアック配合ゲルの処方は、花ふさ皮ふ科(千里中央・江坂駅前・みのお)で診察のうえ行っています
- 同じ成分の市販薬はありません。症状を診察して、この薬が合うか・別の薬がよいかを判断します
- 保険診療です。当日枠あり、WEBで予約できます
- 3院とも皮膚科医が診察します
この記事は一般的な情報です。症状や使用中の薬によって処方できない場合があります。処方の可否は診察で判断します。


