【トレムフィア(グセルクマブ)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:乾癬/掌蹠膿疱症/注射薬(生物学的製剤)

トレムフィア(一般名:グセルクマブ)は、難治性の乾癬や掌蹠膿疱症に用いられる生物学的製剤(皮下注射薬)です。塗り薬や内服薬で十分な効果が得られなかった患者さんに対して、皮膚科専門医が選択する次のステップの治療として位置づけられています。

実はトレムフィアの最大の特徴は、炎症の「根本にある引き金」であるIL-23を狙い打ちにする仕組みにあります。IL-23を上流でブロックすることで、下流の炎症カスケードをまとめて制御するという発想の薬剤です。本記事では、その作用機序から投与スケジュール、薬価と費用負担の軽減制度まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。


1. トレムフィア(グセルクマブ)とは

トレムフィア(一般名:グセルクマブ〔遺伝子組換え〕)は、抗IL-23p19モノクローナル抗体に分類される生物学的製剤です。ヤンセンファーマ株式会社が製造販売しており、炎症を引き起こすサイトカイン(細胞間情報伝達物質)の一つであるIL(インターロイキン)-23のp19サブユニットに選択的に結合し、その働きをブロックします。

乾癬や掌蹠膿疱症では、免疫系の異常によって樹状細胞からIL-23が過剰に分泌されます。IL-23はリンパ球(Th17細胞)を刺激してIL-17を大量に産生させ、これが皮膚の炎症・肥厚・鱗屑などの症状を引き起こします。トレムフィアはこの連鎖の上流・IL-23の段階でシャットダウンする薬剤です。

項目 内容
製品名 トレムフィア皮下注100mgシリンジ/100mgペン ほか
一般名 グセルクマブ(遺伝子組換え)
製造販売 ヤンセンファーマ株式会社
分類 抗IL-23p19モノクローナル抗体(完全ヒト型生物学的製剤)
剤形 皮下注射(シリンジ・オートインジェクター)
国内承認年 2018年3月(乾癬4疾患)/2018年11月(掌蹠膿疱症)
後発品 なし(2026年5月時点)

2. トレムフィアの特徴

●「IL-23上流ブロック」という発想──乾癬の根本を断つ

乾癬治療に使われる生物学的製剤の中には、IL-17を直接ブロックするタイプ(コセンティクス・トルツなど)、IL-12とIL-23の両方を抑えるタイプ(ステラーラ)もあります。トレムフィアはIL-23のp19サブユニットのみに選択的に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体という点が最大の特徴です。IL-23の下流にある自然免疫(IL-12経路)には干渉しないため、感染防御に必要な免疫応答を温存しやすいと考えられています。

●高い臨床効果

中等症から重症の尋常性乾癬を対象とした臨床試験では、52週間の治療で9割以上の方がほぼ症状のない状態に改善したことが示されています。また、アダリムマブ(ヒュミラ)との比較試験においてもトレムフィアでより高い治療効果が示されており、ウステキヌマブ(ステラーラ)で効果不十分だった患者さんがトレムフィアへ切り替えた際にも有意に改善したことが報告されています。掌蹠膿疱症においては16週で57.4%、52週で83.3%の方に症状の改善が見られました。

●8週に1回の投与で通院負担が少ない

安定期には8週(約2か月)に1回の皮下注射で維持できます。毎週・隔週投与が必要な薬剤と比較すると、通院回数や自己注射の頻度を抑えられるため、忙しい患者さんのライフスタイルに合わせやすい設計です。

●掌蹠膿疱症への唯一性

2026年5月時点において、掌蹠膿疱症を適応症に持つ生物学的製剤の一つであり、既存治療(ビタミンD3外用薬・PUVA療法・コルヒチンなど)で効果不十分な難治症例に対する重要な選択肢となっています。

●完全ヒト型抗体による低い免疫原性

トレムフィアは完全ヒト型のモノクローナル抗体です。マウス由来の成分を含まないため、抗薬物抗体(ADA)が生じにくく、長期投与においても効果が維持されやすいとされています。


3. 適応疾患と使用方法

適応疾患

トレムフィアの皮膚科における主な適応疾患は次のとおりです(既存治療で効果不十分な場合に限る)。

  • 尋常性乾癬(中等症〜重症)
  • 乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
  • 膿疱性乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 掌蹠膿疱症

なお、中等症から重症の潰瘍性大腸炎およびクローン病にも適応が拡大されています(消化器内科領域)。

乾癬の生物学的製剤は、日本皮膚科学会の乾癬生物学的製剤使用承認施設においてのみ投与可能です。承認施設かどうかは医療機関にお問い合わせください。

投与方法・スケジュール

乾癬4疾患・掌蹠膿疱症の場合

通常、成人にはグセルクマブとして 1回100mgを初回、4週後、以降8週間隔で皮下投与します。

投与時期 投与量 間隔
初回(0週) 100mg
2回目(4週後) 100mg 4週間隔
3回目以降 100mg 8週間隔
  • 注射部位は上腕部・腹部・大腿部のいずれか、症状のない部分を選択
  • 同一箇所への繰り返し注射は避ける
  • 医療機関での投与が原則(自己注射が可能かどうかは医師の判断による)

治療効果の判定時期

  • 乾癬4疾患:通常、投与開始から16週以内に治療反応が得られます。16週以内に効果が見られない場合は、継続の可否を担当医と相談します。
  • 掌蹠膿疱症:通常、投与開始から24週以内に治療反応が得られます。

4. 使用する上の注意点

生物学的製剤は免疫系に直接作用するため、通常の内服薬よりも慎重な管理が必要です。

●主な副作用

副作用の種類 具体例
感染症(最も多い) 上気道感染症(鼻咽頭炎・気管支炎など)、白癬感染、単純ヘルペス
注射部位反応 発赤、腫脹、疼痛、かゆみ
消化器症状 下痢、胃腸炎
検査値異常 トランスアミナーゼ(AST・ALT)上昇、好中球数減少
その他 頭痛、関節痛

●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)

  • 重篤な感染症(細菌・ウイルス・真菌など)
  • アナフィラキシー・重篤な過敏症(投与後30分以内に起こることあり。かゆみ・じんましん・声のかすれ・息苦しさ・意識消失など)
  • 結核の再活性化(潜在性結核の既往がある方は特に注意)
  • 悪性腫瘍(臨床試験で発現報告あり。因果関係は未確定)

投与後に発熱・息苦しさ・強い倦怠感・黄疸・血便・皮膚・粘膜の異常などを感じた場合は、ただちに医療機関に連絡してください。

●投与開始前に必須の検査・確認事項

  1. 結核の精査:問診・胸部X線・インターフェロン-γ遊離試験(IGRAなど)を実施。陳旧性結核の陰影がある場合は原則として抗結核薬を先行投与
  2. B型肝炎ウイルス(HBV)スクリーニング:キャリアおよび既往感染の確認
  3. 感染症の有無:活動性の重篤な感染症がある場合は投与不可

●禁忌(絶対に投与できない方)

  • 活動性結核の患者
  • 重篤な感染症の患者

●慎重に検討が必要な方(事前に医師へご相談を)

  • 結核の既往歴がある方
  • B型肝炎ウイルス感染の既往・キャリアの方
  • 悪性腫瘍の既往がある方
  • 妊娠中・授乳中、または妊娠の可能性がある女性
  • 高齢の方(免疫機能が低下している場合)

●生ワクチン接種は禁止

トレムフィア投与中は、生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜなど)の接種は行ってはいけません。不活化ワクチンは投与前に接種を完了しておくことが推奨されます。

●他の生物学的製剤・JAK阻害剤との併用は避ける

他の生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、またはスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節剤との併用は、安全性・有効性が確立されていないため避けることとされています。

●日常生活での注意

  • 感染予防:外出後の手洗い・うがいを徹底し、発熱・咳などの感染兆候があれば早めに医師へ相談
  • アルコール:直接的な禁忌はないが、肝臓への負担を考慮し節度ある飲酒を
  • 自動車運転:眠気を引き起こす成分は含まれていないため制限なし
  • 市販はなし:必ず医師の処方・管理下で投与を受けてください

5. 薬価と費用

薬価(2026年度薬価基準・2026年4月改定)

トレムフィア皮下注100mgシリンジの薬価は1筒(1回投与分)325,040円
です。生物学的製剤の中でも高額な部類に属しますが、公的医療保険が適用されます。

剤形 薬価(1回分) 3割負担の場合(薬剤費のみ)
トレムフィア皮下注100mgシリンジ 325,040円 約97,512円

※別途、診察料・注射実施料・検査料などが加算されます。

年間の目安投与回数と費用(乾癬の場合)

安定期は8週(約2か月)に1回の投与となります。初年度(初回+4週後+以降8週間隔)は約7〜8回程度の投与が目安です。

投与回数(1年) 薬剤費合計(概算) 3割負担額(薬剤費のみ)
7回(安定期・目安) 約2,275,280円 約682,584円

医療費負担を軽減できる制度

トレムフィアは高額な薬剤であるため、以下の公的制度を活用することで実際の自己負担額を大きく抑えられます

  • 高額療養費制度:1か月の医療費負担が自己負担限度額(年齢・所得に応じて異なる)を超えた場合、超過分が払い戻されます。多くの患者さんで適用されます。
  • 限度額適用認定証:事前に取得しておくことで、窓口での支払いを自己負担限度額にとどめることができます(後日還付を待たずに済む)。
  • 付加給付制度:一部の健康保険組合・共済組合では、高額療養費よりさらに低い独自の自己負担上限を設定しています。
  • 医療費控除:年間の医療費(家族合算可)が10万円を超える場合、確定申告で所得税の控除が受けられます。
  • 指定難病の医療費助成(クローン病のみ):クローン病は指定難病に該当するため、一定の条件を満たす方は医療費助成が受けられます。

※費用は医療機関・保険種別・所得区分により異なります。詳細は担当医または医療機関の相談窓口にご確認ください。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: トレムフィアはどのような患者さんに処方されますか?

A1: 塗り薬(ステロイド・ビタミンD3)や内服薬(シクロスポリン・メソトレキサート・レチノイド)、紫外線療法(光線療法)などの既存治療で十分な効果が得られなかった中等症〜重症の尋常性乾癬・掌蹠膿疱症などの患者さんが主な対象です。乾癬では、日本皮膚科学会が承認した施設でのみ使用できます。

Q2: 効果が出るまでどのくらいかかりますか?

A2: 個人差がありますが、乾癬に対しては16週(約4か月)以内に治療効果を判定します。掌蹠膿疱症では24週(約6か月)以内に効果の有無を判定します。効果を実感するまでに数週間〜数か月かかることがあるため、焦らず継続することが大切です。

Q3: 自己注射はできますか?

A3: 担当医が適切と判断した場合、自己注射が可能なケースもあります。ただし初回投与は必ず医療機関で行い、手技の指導を受けた上で実施します。不安な場合は医療機関での投与を継続することもできます。

Q4: 妊娠中・授乳中でも使えますか?

A4: 妊娠中(または妊娠の可能性がある方)への安全性は完全には確立されていません。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用を検討します。妊娠を希望する方は必ず担当医にご相談ください。授乳中の方も同様です。

Q5: 他の生物学的製剤(ステラーラなど)から切り替えられますか?

A5: はい、他の生物学的製剤で効果不十分だった場合にトレムフィアへ切り替えることは可能です。ただし、切り替えのタイミングや前薬の休薬期間については担当医が慎重に判断します。ステラーラ(ウステキヌマブ)で効果不十分だった患者さんでもトレムフィアで改善したという臨床データがあります。

Q6: 接種できないワクチンはありますか?

A6: 投与中は生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜなど)の接種は禁止です。不活化ワクチン(インフルエンザワクチンなど)についても、投与開始前に接種を完了しておくことが推奨されます。詳しくは担当医にご確認ください。

Q7: 治療を途中でやめることはできますか?

A7: 自己判断での中止は避けてください。治療を中止すると、抑えられていた症状が再燃する可能性があります。中止を検討する際は、メリット・デメリットを担当医と十分に話し合った上で決定してください。


7. 皮膚科専門医解説 トレムフィアの要点まとめ

  • 薬剤分類:抗IL-23p19完全ヒト型モノクローナル抗体(生物学的製剤)
  • 適応:既存治療で効果不十分な尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・掌蹠膿疱症(皮膚科領域)
  • 作用機序:IL-23のp19サブユニットをブロックし、下流のIL-17産生を抑制して炎症を鎮める「上流ブロック」
  • 投与スケジュール:初回→4週後→以降8週間隔(乾癬・掌蹠膿疱症)
  • 特長:完全ヒト型で免疫原性が低い・8週に1回の投与で通院負担が少ない・掌蹠膿疱症に使える希少な生物学的製剤
  • 重要な注意点:投与前の結核・HBVスクリーニングが必須。生ワクチン接種禁止。感染症の早期発見と報告が必須
  • 薬価:100mgシリンジ1筒325,040円(2026年度薬価基準)。高額療養費制度等で自己負担を大幅に軽減可能

乾癬や掌蹠膿疱症は難治性の慢性疾患であり、適切な生物学的製剤の選択にはお一人おひとりの症状・既往症・生活環境の総合的な評価が欠かせません。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な乾癬・掌蹠膿疱症治療をご提案しています。 「塗り薬や内服薬で改善しない」「生物学的製剤について詳しく知りたい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会


参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 乾癬分類基準・診療ガイドライン2022. 日本皮膚科学会雑誌 2022;132(13):3041-3098.
    ▶ 国内における乾癬の診断・重症度評価・治療選択の標準を示すガイドライン。生物学的製剤の適用は既存治療で効果不十分な中等症〜重症例と定められており、使用施設要件も明記されている。

  2. Blauvelt A, et al. Efficacy and Safety of Guselkumab, an Anti-Interleukin-23 Monoclonal Antibody, Compared With Adalimumab for the Continuous Treatment of Patients With Moderate to Severe Psoriasis. J Am Acad Dermatol. 2017;76(3):405-417. DOI:10.1016/j.jaad.2016.11.010
    ▶ グセルクマブとアダリムマブを比較した第III相VOYAGE-1試験。48週時のIGA0/1達成率でグセルクマブの優越性が示された主要なエビデンス。

  3. ヤンセンファーマ株式会社. トレムフィア皮下注100mgシリンジ 添付文書(最新改訂版).
    ▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌(活動性結核・重篤な感染症)・重大な副作用・投与前検査の必要事項が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。


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