腋多汗症(えきたかんしょう)とは、ワキの下に日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗が生じる疾患です。ボトックス(ボツリヌストキシン)注射は、ワキの汗腺に直接アプローチし、発汗の軽減が期待できる治療法として注目されています。本記事では、仕組み・効果・副作用・料金まで、皮膚科専門医・アレルギー専門医のダブル資格を持つ花房崇明理事長(医学博士)が監修のもと、正確な情報をお届けします。
目次
1. 腋多汗症とは?
腋多汗症とは、ワキの下(腋窩)に体温調節の範囲を超えた過剰な発汗が持続的に起こる状態を指します。汗ジミや衣類の汚れ、においへの不安から、日常生活や仕事・対人関係に影響を及ぼすことも少なくありません。
発汗を担うのは主にエクリン汗腺(えくりんかんせん)です。エクリン汗腺は自律神経(コリン作動性神経)の刺激を受けて汗を分泌します。腋多汗症では、この神経刺激が過剰になることで必要以上の発汗が生じるとされています。
腋多汗症のセルフチェックポイント
・気温や運動と無関係にワキが濡れる
・汗ジミが直径5cm以上になることがある
・週に1回以上、日常生活に支障が出る
・思春期以降に症状が始まった
2. ボトックスで多汗症が軽減する仕組み
ボツリヌストキシン(ボトックス)は、神経終末からのアセチルコリン(神経伝達物質)の放出を一時的に抑制するタンパク質です。エクリン汗腺はアセチルコリンによって活性化されるため、ボトックスを腋の皮膚内に注射することで、汗腺への神経信号が届きにくくなり、発汗の軽減が期待できます。
効果は一時的なものであり、神経の機能は徐々に回復します。そのため、効果を維持するには定期的な反復投与が必要です。
3. シワ治療との違い――対象はエクリン汗腺
ボトックスはシワ(表情筋)の治療でも広く用いられていますが、腋多汗症への適用では対象となる組織がまったく異なります。
| 項目 | シワ治療(顔) | 腋多汗症治療 |
|---|---|---|
| ターゲット | 表情筋(筋肉) | エクリン汗腺(汗腺) |
| 作用 | 筋収縮を一時的に抑制 | 汗腺への神経信号を一時的に遮断 |
| 注射部位 | 眉間・額・目尻など | 腋窩(ワキの下) |
| 保険適用 | 原則なし | 重症原発性腋窩多汗症は対象となり得る |
このように、腋多汗症のボトックス治療は「汗を止める」ことを目的として汗腺に直接作用する点が特徴です。
4. 効果の出方と持続期間
効果はいつから感じられる?
注射後、おおよそ1週間程度から発汗の軽減を感じ始めるとされています。効果の出方には個人差があり、数日以内に変化を感じる方もいれば、2週間ほどかかる場合もあります。
効果の持続期間
ボトックス注の添付文書では、重度の原発性腋窩多汗症において効果が消失するまでの期間は通常4〜9ヵ月とされています。代謝や活動量・体質によって個人差があります。効果が薄れてきたと感じたタイミングで再投与を検討しますが、添付文書上、再投与は前回投与から16週以上の間隔をあける必要があります。
効果の持続には個人差があります。「何ヶ月で必ず効果が切れる」というものではなく、生活状況や体質によって異なります。気になる変化があれば、医師にご相談ください。
5. 施術の流れ・所要時間
当院(千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科)での腋多汗症ボトックス治療は、以下の流れで行います。
① カウンセリング・診察
症状の程度・既往歴・内服薬・妊娠の有無などを確認します。重症度によっては保険診療の適否も医師が判断します。
② 麻酔クリームの塗布(希望者)
注射の際の痛みを和らげるため、麻酔クリームを使用することができます(別途1,650円・税込)。塗布後、20〜30分ほど待機します。
③ ボトックス注射
腋窩の皮膚内にA型ボツリヌストキシン製剤を複数箇所に注射します。保険診療の場合は、重度の原発性腋窩多汗症の効能・効果を有する「ボトックス注用50単位/100単位」を用い、添付文書に従って片腋窩あたり50単位を10〜15ヵ所に1〜2cm間隔で皮内投与します。自由診療では、ヒューゲル社製A型ボツリヌストキシン(国内未承認。詳細は下記の表示をご確認ください)を使用する場合があります。注射自体の所要時間は15分程度です。
④ 施術後の確認・説明
注意事項(当日の激しい運動・飲酒・高温浴の回避など)を説明し、終了です。
花房崇明理事長はボトックスビスタ®認定医です。適切な製剤管理と投与技術のもとで治療を行います。
6. 副作用と注意点
ボトックス治療は比較的リスクの少ない治療とされていますが、副作用やリスクが存在します。事前に十分ご理解ください。
主な副作用
- 注射部位の腫れ・赤み・内出血:数日以内に改善することが多いです。
- 代償性発汗(だいしょうせいはっかん):ワキの発汗が減少した代わりに、背中・胸・手のひらなど他の部位の発汗が増加することがあります。
- アレルギー反応:まれに薬剤に対するアレルギーが生じる可能性があります。
- 効果の左右差:注射分布により、左右で効果に差が生じることがあります。
添付文書に記載された重大な副作用
ボトックス注の添付文書には、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー、眼障害、嚥下障害、呼吸障害、痙攣発作、尿閉、尿路感染が記載されています。いずれも頻度は高くありませんが、息苦しさ・飲み込みにくさ・強い脱力などの症状があらわれた場合は、ただちに医療機関を受診してください。
【治療を受けられない方・注意が必要な方】
- 【禁忌】妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の方
- 【禁忌】全身性の神経筋接合部の障害がある方(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉など)
- 【禁忌】本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方
- アミノグリコシド系抗生物質など、筋弛緩作用を増強しうる薬剤を使用中の方(併用注意)
7. 保険適用の可能性について
2012年11月より、「重度の原発性腋窩多汗症」に対するA型ボツリヌストキシン注射(ボトックス注用50単位/100単位)は公的医療保険の適用対象となっています。ただし、保険適用には原発性局所多汗症の診断基準と重症度(HDSS 3以上)を満たす必要があり、保険診療として実施できるかどうかは医師の診察・判断によります。
原発性局所多汗症の診断基準(診療ガイドライン2023年改訂版)
明らかな原因のない過剰な局所的発汗が6ヵ月以上続き、次の6項目のうち2項目以上を満たすもの。
①最初に症状が出るのが25歳以下 ②左右対称性に発汗がみられる ③睡眠中は発汗が止まっている ④1週間に1回以上、多汗のエピソードがある ⑤家族歴がみられる ⑥それらによって日常生活に支障をきたす
HDSS(多汗症重症度評価尺度)
1:発汗は気にならず、日常生活に支障がない/2:発汗は我慢できるが、ときどき日常生活に支障がある/3:発汗はほとんど我慢できず、しばしば日常生活に支障がある/4:発汗は我慢できず、常に日常生活に支障がある(保険適用の目安は3または4)
当院では受診時に症状の程度を確認のうえ、保険診療・自由診療のいずれが適切かを医師がご説明します。自己判断で「自分は保険が使える」と決めることはできませんので、まずはご相談ください。
8. 当院の料金(自由診療)
※以下は自由診療(公的医療保険適用外)の料金です。
| メニュー | 料金(税込) |
|---|---|
| ワキ多汗症ボトックス(両側) | 44,000円 |
| 麻酔クリーム(オプション) | 1,650円 |
料金は予告なく変更になる場合があります。最新の料金は診察時または当院ウェブサイトにてご確認ください。
【必ずお読みください】自由診療で使用するボツリヌストキシン製剤について
- 国内未承認の医薬品です:ヒューゲル社(韓国)製のA型ボツリヌストキシン製剤は、日本国内において医薬品医療機器等法上の承認を受けていません。使用する場合は自由診療(公的医療保険適用外)となります。
- 入手経路:医師の責任のもと、個人輸入により入手しています。
- 諸外国における使用状況:同製剤は韓国(MFDS)等の承認を取得しており、複数の国で使用されています。なお、国内には同種のA型ボツリヌストキシン製剤として「ボトックス注用50単位/100単位」(重度の原発性腋窩多汗症の効能・効果を有する)が承認されています。
- 重大なリスク:ショック、アナフィラキシー、眼障害、嚥下障害、呼吸障害、痙攣発作、尿閉、尿路感染などが報告されています。そのほか注射部位の腫れ・赤み・内出血、代償性発汗、効果の左右差が生じることがあります。個人輸入した医薬品による健康被害については、医薬品副作用被害救済制度の対象となりません。
効果・適応・安全性には個人差があり、必ず医師の診察のうえで判断します。
9. 他の治療法との比較
腋多汗症の治療にはボトックス以外にも選択肢があります。それぞれに特徴があり、優劣を一概に断定することはできません。症状・生活スタイル・ご希望に合わせて医師と相談のうえ選択することが大切です。
| 治療法 | 主な特徴 | 持続性 |
|---|---|---|
| ボトックス注射 | 汗腺への神経信号を一時的に抑制。反復投与が必要(再投与は16週以上の間隔) | 通常4〜9ヵ月(添付文書) |
| ミラドライ(マイクロ波治療) | 汗腺をマイクロ波で破壊。長期的な減少効果が期待される | 長期的(ただし個人差あり) |
| 塩化アルミニウム外用 | 市販・処方薬で汗腺を一時的に塞ぐ。肌荒れのリスクあり | 短期間 |
| 内服薬(抗コリン薬) | 全身の発汗を抑制。口渇・眠気などの副作用に注意 | 服用中のみ |
千里中央・豊中・吹田エリアで腋多汗症の治療をお考えの方は、まず皮膚科専門医への相談をお勧めします。
10. まとめ
まとめ|腋多汗症ボトックス治療のポイント
ワキの多汗症(腋多汗症)に対するボトックス治療について、重要なポイントをまとめます。
- 仕組み:エクリン汗腺への神経信号(アセチルコリン)を一時的に抑制し、発汗の軽減が期待できます。
- 効果の出方:注射後1週間程度から感じ始めるとされ、添付文書上は効果消失まで通常4〜9ヵ月とされています(個人差あり)。再投与は16週以上の間隔が必要です。
- 施術時間:注射自体は15分程度。麻酔クリームの併用も可能です。
- 副作用:腫れ・赤み・内出血・代償性発汗などのリスクがあります。
- 保険適用:重症の原発性腋窩多汗症は保険診療の対象となり得ますが、医師の診察・判断が必要です。
- 料金(自由診療):44,000円(税込)※公的医療保険適用外
最終的な治療方針は必ず医師の診察を受けたうえで決定してください。千里中央駅から徒歩約5分の当院では、皮膚科専門医・アレルギー専門医のダブル資格を持つ花房崇明理事長が診察を担当します。お気軽にご相談ください。
大阪でミラドライをご検討の方へ
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FAQ(よくある質問)
Q1:ボトックスでワキ汗は完全に止まりますか?
A.
「完全に止まる」とは言い切れません。ボトックスはエクリン汗腺への神経信号を一時的に抑制するもので、発汗の軽減が期待できる治療です。効果の程度には個人差があり、全く汗をかかなくなるわけではありません。また、代償性発汗として他部位の発汗が増えることもあります。
Q2:施術は痛いですか?
A.
注射時に針を刺す感覚があります。痛みが気になる方には、麻酔クリーム(別途1,650円・税込)の塗布をご案内しています。塗布後20〜30分ほど待機することで、注射時の不快感を和らげることができます。
Q3:効果はどのくらいで出ますか?また、どのくらい続きますか?
A.
注射後1週間程度から発汗の軽減を感じ始めるとされています。ボトックス注の添付文書では、効果が消失するまでの期間は通常4〜9ヵ月とされています。体質・活動量・代謝によって個人差があります。効果が薄れてきたと感じた際に再投与を検討しますが、添付文書上、再投与は前回投与から16週以上の間隔をあける必要があります。
Q4:保険は使えますか?
A.
重症の原発性腋窩多汗症と診断された場合、公的医療保険の適用対象となり得ます。ただし、保険適用には重症度の診断基準(HDSSスコアなど)を満たす必要があり、医師の診察・判断が必要です。自己判断では保険適用の可否を決めることはできません。まずは受診時に医師にご相談ください。
Q5:施術後、すぐに日常生活に戻れますか?
A.
施術当日から通常の日常生活は送っていただけます。ただし、当日の激しい運動・サウナ・飲酒・高温浴は避けてください。これらは血行を促進し、注射部位の腫れや内出血を悪化させる可能性があります。翌日以降は通常通りの生活が可能です。
Q6:何回通えばよいですか?
A.
1回の施術で効果が出ますが、ボトックスの効果は一時的なものです。効果が薄れてきたタイミング(添付文書上、効果消失までは通常4〜9ヵ月)に再投与することで、継続的な発汗の軽減が期待できます。ただし再投与は前回投与から16週以上の間隔が必要です。通院頻度は個人差があるため、経過を見ながら医師と相談して決めていただきます。
Q7:豊中・千里中央エリアでワキ汗治療を受けたいのですが、当院でできますか?
A.
はい、千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(大阪府豊中市・千里中央駅徒歩約5分)では、腋多汗症に対するボトックス治療を行っています。豊中・吹田・千里中央エリアからご来院の患者様が多くいらっしゃいます。ご予約・ご相談はウェブ予約システムからお気軽にどうぞ。
参考文献
1. アッヴィ合同会社. ボトックス注用50単位/ボトックス注用100単位 添付文書.(効能・効果に「重度の原発性腋窩多汗症」を含む。用法・用量は片腋窩あたり50単位を10〜15ヵ所に1〜2cm間隔で皮内投与し、投与間隔は16週以上。効果は通常4〜9ヵ月で消失するとされる。禁忌は全身性の神経筋接合部の障害、妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳婦、本剤成分への過敏症の既往)
2. 原発性局所多汗症診療ガイドライン策定委員会. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂). 日本皮膚科学会雑誌. 2023;133(13):3025-3056.(原発性局所多汗症の診断基準、HDSSによる重症度評価、重度腋窩多汗症に対するA型ボツリヌス毒素局所注射の推奨度Bを示している)
3. アッヴィ合同会社. ボトックスビスタ注用50単位 添付文書.(効能・効果は65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺のみであり、腋窩多汗症の効能・効果は有していない)
4. 厚生労働省. 医療広告ガイドライン.(自由診療で未承認の医薬品等を用いる場合に、未承認である旨・入手経路・諸外国での使用状況・重大なリスクを明示すべきことを定めている)













