アゼライン酸(azelaic acid)は、小麦・大麦などの穀物に含まれる天然由来のジカルボン酸で、酒さ(しゅさ/rosacea)の炎症・赤みを抑える外用薬として、欧米の皮膚科ガイドラインで広く使用されています。日本では現時点で酒さへの保険適用がなく、自由診療(公的医療保険適用外)として処方される成分です。本記事では、アゼライン酸が酒さにどのように作用するのか、期待できる効果・副作用・使い方の目安を、皮膚科専門医・アレルギー専門医の資格を持つ花房 崇明 理事長(医学博士)の監修のもと、わかりやすく解説します。

監修者:花房 崇明

監修医師

理事長:花房 崇明(はなふさ たかあき)

[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院) / 日本皮膚科学会皮膚科専門医

・日本アレルギー学会アレルギー専門医 / 日本抗加齢医学会専門医

[ 所属学会 ]

・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会 / 日本美容皮膚科学会 等

目次

アゼライン酸とは?

アゼライン酸は、天然由来のジカルボン酸(炭素数9の二塩基酸)で、小麦・大麦・ライ麦などの穀物に微量に含まれています。皮膚科領域では主にニキビ(尋常性痤瘡)酒さ(しゅさ)の治療に用いられており、欧米では15〜20%濃度のクリームやジェルが医薬品として承認されています。

酒さについての基本的な知識は、酒さとは(総合解説)もあわせてご参照ください。

酒さに対するアゼライン酸の作用

アゼライン酸が酒さに有用とされる理由は、主に以下の3つの作用によるものとされています。

① 抗炎症作用

酒さの病態には、皮膚の慢性的な炎症が深く関わっています。アゼライン酸は炎症に関わる物質(活性酸素種など)の産生を抑制する作用があるとされており、丘疹(きゅうしん)や膿疱(のうほう)などの炎症性病変の改善が期待できます。

② 角化正常化作用

毛穴周囲の角化(皮膚の角質化)の乱れを正常化する働きがあるとされています。これにより毛穴の詰まりを軽減し、炎症の悪化を抑える効果が期待できます。

③ 抗菌作用

酒さの悪化因子のひとつとして、ニキビダニ(Demodex)や皮膚常在菌の関与が指摘されています。アゼライン酸には穏やかな抗菌作用があるとされており、これらの菌・ダニへのアプローチも期待されています。ニキビダニと酒さの関係についてはニキビダニ・ロゼックス・イベルメクチンの解説もご覧ください。

【ポイント】アゼライン酸は「抗炎症」「角化正常化」「抗菌」の3つの作用を持つとされ、酒さの複数の病態に同時にアプローチできる成分として注目されています。ただし、個人差があり、すべての方に同等の効果が得られるとは限りません。

日本と海外の保険適用の違い

アゼライン酸の保険適用状況は、国によって大きく異なります。

地域酒さへの適用状況代表的な製品
EU・米国酒さへの医薬品承認ありFinacea(15%ジェル)など
日本酒さへの保険適用なし(自由診療)医師処方の自由診療製剤

日本では、アゼライン酸を酒さ治療に用いる場合は公的医療保険適用外の自由診療となります。費用は医療機関によって異なりますので、受診時に必ず確認してください。一方、2022年に保険適用となったメトロニダゾール外用薬(ロゼックスゲル)は、酒さの炎症期(丘疹・膿疱)に対して保険診療で使用できます。

酒さの治療全般については酒さの治療法(詳しくはこちら)もご参照ください。

使い方の一般的な目安

海外の承認製品(15〜20%濃度)における一般的な使用方法の目安をご紹介します。実際の使用方法・濃度・頻度は必ず処方医の指示に従ってください。

一般的な使用の目安

  • 濃度:15〜20%(医師の判断による)
  • 使用頻度:1日2回(朝・夜)を目安とすることが多い
  • 塗布量:患部に薄く伸ばす程度(過剰な量は刺激の原因に)
  • 使用開始:最初は1日1回から始め、肌の状態をみながら調整することも
  • 継続期間:効果の実感には数週間〜数ヶ月の継続が必要とされることが多い

【やってはいけないNG行動】

  • 医師の処方・指示なしに市販のアゼライン酸製品を自己判断で大量使用する
  • 刺激感が強い場合に使用量を増やす(悪化の恐れあり)
  • 目・口の周囲・粘膜部位への塗布
  • 他の外用薬と無断で混合して使用する

期待できる効果(海外ガイドラインでの位置づけ)

欧米の皮膚科学会(EADVや米国皮膚科学会など)のガイドラインでは、アゼライン酸(15〜20%)は酒さの炎症期(丘疹・膿疱型)に対する治療選択肢のひとつとして位置づけられています。

  • 顔の赤み(紅斑)の軽減が期待できるとされています
  • 丘疹・膿疱などの炎症性病変の改善が期待できるとされています
  • メトロニダゾールと同等またはそれに近い有用性が報告されている研究もあります(ただし比較研究の結果は一定ではなく、個人差があります)
  • 長期使用による安全性プロファイルが比較的確立されているとされています

なお、毛細血管拡張(血管拡張)による赤みへの効果は限定的とされており、その場合はVビームなどのレーザー治療が選択肢となることがあります(公的医療保険適用外)。詳しくはVビームレーザー治療についてをご参照ください。

副作用・注意点

アゼライン酸は比較的安全性が高い成分とされていますが、副作用がないわけではありません。以下の点に注意が必要です。

よくある副作用(局所反応)

  • ヒリヒリ感・灼熱感(しゃくねつかん):塗布直後に生じやすく、使い続けると軽減することが多いとされています
  • 刺激感・かゆみ:特に使用開始初期に生じやすい
  • 一時的な赤みの増悪:使用初期に赤みが増す場合がある(継続で改善することもありますが、医師への相談が必要)
  • 乾燥・皮むけ:保湿ケアを併用することが重要

まれな副作用

  • 色素沈着・色素脱失(長期使用・高濃度使用の場合)
  • 接触皮膚炎(アレルギー反応)

副作用が強い場合や症状が悪化した場合は、使用を中止して速やかに処方医に相談してください。自己判断での継続・中断はせず、医師の指示に従うことが大切です。

使用が向かないケース

アゼライン酸が向かない、または慎重な使用が必要とされるケースがあります。最終的な判断は必ず医師が行います。

  • 妊娠中・授乳中:安全性が十分に確立されていないため、使用の可否は医師が判断します
  • アゼライン酸・プロピレングリコール等の成分にアレルギーがある方
  • 極度の敏感肌・皮膚バリア機能が著しく低下している状態:刺激が強く出る可能性があります
  • 酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ):酒さとは別の疾患であり、治療アプローチが異なります。自己判断での使用は禁物です

赤ら顔の原因は酒さ以外にもさまざまです。赤ら顔の原因と治療もあわせてご確認ください。

当院でのアゼライン酸の扱い

千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(大阪府豊中市・千里中央駅から徒歩約5分)では、酒さの診断・治療において、皮膚科専門医とアレルギー専門医のダブル資格を持つ花房 崇明 理事長が診察にあたっています。

アゼライン酸は公的医療保険適用外の自由診療として、医師による診察・カウンセリングのうえで処方しています。酒さの病型・重症度・肌の状態を総合的に評価し、アゼライン酸が適切かどうかを判断します。自己判断での使用開始はせず、まずは医師の診察をお受けください。

千里中央・豊中・吹田エリアにお住まいで酒さや赤ら顔でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

他の治療との併用について

酒さは慢性疾患であり、単一の治療だけでなく複数のアプローチを組み合わせることが症状のコントロールに有用とされています。

アゼライン酸と他の治療の関係

治療特徴アゼライン酸との関係
ロゼックスゲル(メトロニダゾール)保険診療・抗炎症・抗菌同様の炎症期に使用。併用は医師判断
抗菌薬内服(ミノサイクリン等)保険診療・炎症期重症例では内服と外用の組み合わせも
Vビームレーザー(※公的医療保険適用外)血管拡張・持続性紅斑外用薬で対応しにくい血管病変に補完的に
スキンケア指導低刺激・保湿・紫外線対策すべての治療の基盤として重要

毛細血管拡張による赤みが主な悩みの場合は、毛細血管拡張症(顔)の原因と治療もご参照ください。

まとめ|アゼライン酸と酒さ治療について皮膚科専門医にご相談を

アゼライン酸は、欧米では酒さの炎症期に対する治療薬として認められている成分ですが、日本では酒さへの保険適用がなく、自由診療(公的医療保険適用外)での処方となります。

  • 作用:抗炎症・角化正常化・抗菌の3つの作用が期待されています
  • 効果:炎症性の赤み・丘疹・膿疱の改善が期待できるとされていますが、個人差があります
  • 副作用:ヒリヒリ感・刺激感・一時的な赤みの増悪などが生じる場合があります
  • 日本の扱い:酒さへは公的医療保険適用外(自由診療)
  • 重要:自己判断での使用は避け、必ず医師の診察・処方のもとで使用してください

酒さは慢性疾患であり、症状の「コントロール」「改善」を継続的に目指すことが大切です。最終的な診断・治療方針は医師の診察を受けたうえでご判断ください。千里中央・豊中・吹田エリアにお住まいの方は、千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科へお気軽にご相談ください。

千里中央・豊中・吹田で皮膚のお悩みは千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科へ

気になる症状は、自己判断せず皮膚科専門医にご相談ください。

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FAQ(よくある質問)

Q1:アゼライン酸は日本で保険適用されますか?

A.
現時点(2025年)では、日本においてアゼライン酸は酒さへの保険適用がありません。そのため、酒さの治療にアゼライン酸を使用する場合は、公的医療保険適用外の自由診療となります。費用は医療機関によって異なりますので、受診時にご確認ください。なお、酒さの炎症期(丘疹・膿疱)に対してはメトロニダゾール外用薬(ロゼックスゲル)が2022年に保険適用となっており、保険診療で使用できます。

Q2:アゼライン酸とロゼックスゲル(メトロニダゾール)の違いは何ですか?

A.
どちらも酒さの炎症(丘疹・膿疱)に対して使用される外用薬ですが、大きな違いは日本での保険適用の有無です。ロゼックスゲル(メトロニダゾール0.75%)は2022年に日本で保険適用となり、保険診療で処方できます。一方、アゼライン酸は日本では酒さへの保険適用がなく、自由診療(公的医療保険適用外)となります。作用機序も異なり、どちらが適しているかは医師が診察のうえ判断します。

Q3:アゼライン酸を使い始めると最初は赤みが増す場合がありますか?

A.
使用開始初期に、ヒリヒリ感・刺激感・一時的な赤みの増悪が生じる場合があります。これは使い続けることで軽減するケースもありますが、症状が強い場合や悪化が続く場合は自己判断で継続せず、処方医に相談してください。使用頻度を1日1回から始めるなど、肌の状態をみながら調整することが大切です。

Q4:酒さとニキビ(吹き出物)の見分け方を教えてください。

A.
酒さは顔の中央部(両頬・鼻・額・顎)に慢性的な赤み・毛細血管拡張・丘疹・膿疱が現れる慢性炎症性皮膚疾患で、中年期以降に多い傾向があります。一方、ニキビ(尋常性痤瘡)は毛穴の詰まりと皮脂・細菌が主な原因で、面皰(コメドン)を伴うことが特徴です。ただし、外見だけでの自己判断は難しく、治療法も異なります。正確な診断のために皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。

Q5:妊娠中や授乳中でもアゼライン酸を使用できますか?

A.
妊娠中・授乳中のアゼライン酸使用については、安全性が十分に確立されていません。使用の可否は必ず医師が個別に判断します。妊娠中・授乳中の方は、自己判断での使用を避け、受診時に必ずその旨をお伝えください。

Q6:酒さに効果的なスキンケアはありますか?

A.
酒さのスキンケアの基本は、①低刺激のクレンジング・洗顔(こすらない)、②十分な保湿、③紫外線対策(SPF・PA高め、低刺激処方の日焼け止め)の3点です。アルコール含有の化粧水・摩擦・熱い湯での洗顔・サウナなどは症状を悪化させる可能性があるため避けることが大切です。また、アルコール摂取・辛い食事・極端な温度変化もトリガーになりやすいとされています。具体的なスキンケア方法は医師にご相談ください。