【プロペト(白色ワセリン)】とは|【医師監修】皮膚科専門医が解説|効果・使い方・注意点・料金

【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:塗り薬/保湿・皮膚保護

プロペト(一般名:白色ワセリン)は、石油由来の炭化水素類を高度に精製して作られた油脂性の皮膚保護外用剤です。皮膚の表面に薄い油の膜(フタ)を張ることで、水分の蒸発を防ぎ、外部刺激から肌を守ります。アトピー性皮膚炎・乾燥肌・おむつかぶれから、ステロイド外用薬と組み合わせたスキンケアまで、皮膚科診療において最も基本となる保湿・保護剤のひとつです。

「ワセリンと何が違うの?」「ヒルドイドとどちらを使えばよい?」「赤ちゃんに塗っても大丈夫?」——本記事では、こうした疑問に皮膚科専門医の視点で丁寧にお答えします。


1. プロペト(白色ワセリン)とは

プロペトの有効成分は白色ワセリン(White Petrolatum)です。石油から得られた炭化水素の混合物を繰り返し精製し、不純物を徹底的に取り除いた半固形の軟膏状物質で、においも味もありません。

ワセリンには精製度の異なる複数の種類があり、精製が低い順に「黄色ワセリン」→「白色ワセリン」→「プロペト」→「サンホワイト(医薬部外品)」と並びます。プロペトはこの中で医療用医薬品(処方薬)として用いられる高純度品であり、夾雑有機酸類が少なく、刺激性要素をほとんど含まない点が最大の特徴です。

プロペト(PROPETO)」という名称は、英名 Professional Petolatum(プロフェッショナル・グレードのペトロラタム)に由来するとされています。

項目 内容
製品名 プロペト
一般名 白色ワセリン
製造販売 丸石製薬株式会社
分類 油脂性基剤/皮膚保護剤
剤形 軟膏(白色〜微黄色)
規格 10g、100g(チューブ)、500g(軟膏ツボ)
後発品 あり(白色ワセリン「ケンエー」「ヨシダ」など各社)

2. プロペトの特徴

プロペトの最大の特徴は、シンプルな成分構成による圧倒的な安全性です。有効成分は白色ワセリンのみ。防腐剤・香料・添加物を一切含まないため、市販の保湿剤では刺激を感じる敏感肌の方にも処方できます。

●①エモリエント作用——肌に「フタ」をする

プロペトはエモリエント(皮膚軟化剤)に分類される保湿剤です。エモリエントとは、水分そのものを補うのではなく、皮膚の表面に油膜を張って経皮水分蒸散(TEWL)を抑制するタイプの保湿剤です。乾燥した畑にビニールハウスをかぶせて水分の逃げを防ぐ——そんなイメージです。

プロペトと比較されることの多いヒルドイド(ヘパリン類似物質)はモイスチャライザー(水分を肌に引き込む)タイプです。両者の役割の違いをまとめると下表のとおりです。

比較項目 プロペト(白色ワセリン) ヒルドイド(ヘパリン類似物質)
分類 エモリエント(被覆) モイスチャライザー(保水)
主な作用 水分蒸発を防ぐ「フタ」 水分を肌に与える・保持する
刺激 極めて少ない まれにかぶれることがある
適した肌 敏感肌・粘膜周囲・乳幼児 乾燥肌・乾皮症・皮脂欠乏症
剤形 軟膏のみ 軟膏・クリーム・ローション等
ベタつき やや強い 剤形により異なる

乾燥が強い方には「ヒルドイドで水分を補い、その上からプロペトでフタをする」組み合わせが効果的です。

●②精製度の高さ——刺激が少なく粘膜・目周りにも使用可

一般的な白色ワセリンと比べてプロペトは軟らかく展延性が高い(塗り広げやすい)という物性上の特長もあります。また精製度が高いため、眼球周囲・唇・鼻孔周囲・おむつ当たりなど粘膜に近い部位にも使用でき、乳幼児から高齢者まで年齢制限なく全身に塗布可能です。

●③皮膚保護作用——花粉・摩擦・刺激を遮断するバリア

プロペトの油膜はバリアとして機能し、花粉・ハウスダスト・衣類の摩擦などの外部刺激から皮膚を物理的に守ります。花粉症の時期に目の周囲へプロペトを薄く塗っておくことで、花粉の直接付着を防ぎ、花粉皮膚炎の症状緩和に役立てることができます。

●④長期連用が可能

ステロイド外用薬などと異なり、プロペトには皮膚萎縮・色素沈着・タコステロイド依存などの長期連用に伴うリスクがありません。アトピー性皮膚炎の寛解維持スキンケアとして毎日・長期間の使用が推奨されます。


3. 適応疾患と使用方法

適応(効能・効果)

プロペトの添付文書に記載されている効能・効果は次のとおりです。

  • 皮膚保護剤として
  • 一般軟膏基剤として調剤に用いる(ステロイド・抗菌薬などと混合)
  • 眼科用軟膏基剤として調剤に用いる

実際に皮膚科で処方される主な状況は以下のとおりです。

  • アトピー性皮膚炎のスキンケア(保湿・バリア補強)
  • 皮脂欠乏性湿疹(乾皮症)
  • おむつかぶれ・よだれかぶれ
  • 擦過傷・軽いやけどの保護
  • 口唇・鼻孔周囲の乾燥保護
  • 花粉皮膚炎の予防的スキンケア
  • レーザー・ケミカルピーリング等の施術後ケア
  • ステロイド外用薬の基剤(混合処方)

使用方法——正しい塗り方のコツ

3つの重要ポイント

  1. 入浴直後に塗る:お風呂やシャワーの直後、皮膚がまだ少し湿っている状態でプロペトを塗布すると、残った水分をそのまま閉じ込めることができ保湿効果が高まります。乾ききってから塗っても水分の蒸発を防ぐ効果は変わりませんが、特に乾燥が強い方は入浴後3分以内を目安に使用してください。
  2. 薄く・広く・均一に:ティッシュを乗せてもすぐには落ちない程度の量が目安。厚塗りは毛穴を詰まらせる原因となります。白く残らないくらいまでよく伸ばすのがコツです。
  3. 使用回数は1日1〜数回:使用回数の上限はありません。乾燥が気になるときはこまめに重ね塗りができます。日中はポイント使い、夜入浴後はやや多めに全体へ、という使い分けが実践的です。

他の外用薬との塗る順番

ステロイド外用薬などと併用する場合、「先にプロペトを塗ってから、後で治療薬を塗布する」という順番を指示される皮膚科医が多いですが、塗布順序の違いによる効果・副作用への差はほぼないとされています。医師の指示に従い、患者さんが継続しやすい順番で塗布することが最優先です。


4. 使用する上の注意点

●副作用

プロペトは副作用が極めて少ない薬剤です。

分類 症状
その他の副作用(頻度不明) 接触皮膚炎(発疹・かゆみ)

接触皮膚炎が起きた場合は白色ワセリンそのものへのアレルギーというよりも、微量に含まれる不純物や個人の肌質によるものが大半です。プロペトは高純度のため、このリスクは一般的な白色ワセリンよりさらに低いとされています。

重大な副作用の報告は現時点でありません

塗布後に発疹・かゆみ・いつもと異なる症状が現れた場合は使用を中止し、医師・薬剤師にご相談ください。

●禁忌・要相談の方

プロペトに禁忌事項は設定されていません。ただし、以下の方は事前にご相談ください。

  • 白色ワセリン・プロペトでかぶれたことがある方:再度の使用は避けてください
  • ニキビ・脂漏性皮膚炎がある方:油分が毛穴を詰まらせてニキビが悪化する可能性があります
  • 顔の脂っぽい部分(Tゾーンなど):皮脂分泌の多い部位への厚塗りは避けてください

●併用注意

プロペトは皮膚表面にとどまり体内にほとんど吸収されないため、飲み薬・他の外用薬との飲み合わせ問題は基本的にありません。ただし、ステロイド外用薬と混合して処方される場合は医師の指示に従ってください。

●日常生活での注意

  • アルコール:塗り薬のため影響なし
  • 自動車の運転:眠気を起こす成分は含まれていないため制限はなし
  • 紫外線・日焼け止め:油膜が日焼け止めの密着を妨げる可能性があるため、日中の顔への使用時は塗る量を少量にし、日焼け止めを上から重ねて使用
  • 市販品:プロペト(医薬品)はドラッグストアでも購入できますが、医療機関から処方してもらうと保険適用となり費用が抑えられます

●保管上の注意

  • 容器から取り出した後は遮光して保存
  • 金属製のヘラを使用すると容器(ポリエチレン製)が削れる場合があるため注意
  • 直射日光・高温多湿を避け室温で保管

5. 薬価と費用

プロペトの薬価は10gあたり24.30円(2026年度薬価基準)です。
後発品(白色ワセリン各社)も同額となっています。

処方量は使用部位・面積によって大きく異なりますが、全身への保湿スキンケアでは100〜250g/月程度が目安となることが多いです。

薬剤名 薬価 100g分の薬価 100g分の自己負担額(3割負担)
プロペト(先発品・丸石製薬) 24.30円/10g 243円 約73円
白色ワセリン(後発品・各社) 24.30円/10g 243円 約73円
薬剤名 薬価 250g分の薬価 250g分の自己負担額(3割負担)
プロペト(先発品・丸石製薬) 24.30円/10g 607.5円 約182円
白色ワセリン(後発品・各社) 24.30円/10g 607.5円 約182円

※2026年度薬価基準(2026年4月改定)。薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。先発品と後発品の薬価は同額です。

注目ポイント:プロペトは他の保湿剤と比較して非常に安価であることが大きなメリットのひとつです。100g(チューブ1本)を3割負担で処方してもらった場合の薬剤費はわずか約73円であり、市販品を購入するよりコスト面で有利なことも多いです。


6. FAQ(よくある質問)

Q1: プロペトと市販のワセリンの違いは何ですか?

A1: 有効成分は同じ白色ワセリンですが、プロペトは医療用医薬品として丸石製薬が製造する高純度品です。インタビューフォームによれば、一般の白色ワセリンより軟らかく展延性が高く、夾雑有機酸類が少ない点が特徴です。市販の「サンホワイトシルキー」も高純度品ですが医薬部外品扱いで別製品です。保険診療で処方してもらえるという点でも、プロペトには大きなメリットがあります。

Q2: ヒルドイドとプロペト、どちらを使えばよいですか?

A2: 役割が異なります。ヒルドイドは水分を肌に補う「モイスチャライザー」、プロペトは水分が逃げないようにフタをする「エモリエント」です。乾燥が強い方には両方を組み合わせる(ヒルドイドを塗ってからプロペトでフタ)のが効果的です。ヒルドイドで刺激を感じる敏感肌・乳幼児にはプロペト単独が向きます。医師にご相談の上、使い分けてください。

Q3: 赤ちゃんや乳幼児に塗っても大丈夫ですか?

A3: 問題ありません。プロペトは防腐剤・香料等の添加物を含まない高純度品であり、乳幼児のデリケートな肌・おむつ当たり部位・口まわりへも広く使用されています。ただし、皮脂分泌が活発な成長期の赤ちゃんの顔Tゾーンへの厚塗りはニキビ様皮疹の原因になることがあるため、少量を薄く塗布してください。

Q4: 顔・唇・目の周りにも使えますか?

A4: 使用できます。プロペトは精製度が高く、粘膜に近い部位や目のまわりの皮膚にも使用可能です。ただし目の中(結膜・角膜)への直接使用は添付文書上の効能外です(眼科用として調剤されたものとは別)。唇へはリップクリームの代わりとして使え、花粉の季節に目のまわりへ薄く塗っておくと花粉皮膚炎の予防にもなります。

Q5: ベタつきが気になります。どうすればよいですか?

A5: 塗る量を減らすことが最善策です。「白く残らない程度まで薄く広く伸ばす」のが基本で、ティッシュを当ててもすぐには落ちない程度の薄い膜で十分です。日中はベタつきが少ない他の保湿剤を使い、プロペトは夜間入浴後のケアに絞る使い分けも有効です。それでもベタつきが解消しない場合は、ヒルドイドローションなど異なる剤形の保湿剤への変更を皮膚科でご相談ください。

Q6: ニキビができやすい肌ですが、プロペトを塗っても大丈夫ですか?

A6: ニキビのできやすい部位への使用は注意が必要です。プロペトは油性の軟膏のため、毛穴を詰まらせてニキビが悪化する可能性があります。特に顔のTゾーンなど皮脂分泌が多い部位は避けるか、極少量を薄く塗布してください。ニキビ治療薬(アダパレン・過酸化ベンゾイルなど)による皮膚乾燥のケアとして補助的に用いる場合は、医師の指示に従ってください。

Q7: 毎日・長期間使い続けても問題ありませんか?

A7: 全く問題ありません。プロペトにはステロイド外用薬のような長期使用に伴う皮膚萎縮・色素脱失などのリスクはありません。アトピー性皮膚炎や乾燥肌の方は毎日のスキンケアとして長期継続使用が推奨されています。


7. 皮膚科専門医解説 プロペトの要点まとめ

  • 成分:高純度に精製された白色ワセリンのみ。防腐剤・香料・添加物ゼロのシンプル処方
  • 作用:皮膚表面に油膜を形成し、水分蒸発(TEWL)を抑制する「エモリエント(保護型保湿)」
  • 適応:アトピー性皮膚炎のスキンケア・乾燥肌・おむつかぶれ・花粉皮膚炎の予防・外用薬の基剤
  • 使い方:入浴直後に薄く均一に。1日1〜数回、必要に応じて。ヒルドイドと組み合わせると効果的
  • 塗る順番:ステロイドと併用する場合は医師の指示に従う。多くの場合「先に保湿剤→後で治療薬」
  • 安全性:副作用はごくまれな接触皮膚炎のみ。禁忌なし。長期連用可能。乳幼児・高齢者にも使用可
  • 注意点:ニキビ・脂漏性皮膚炎の部位への厚塗りは悪化の恐れあり
  • 費用:100g(チューブ1本)を3割負担で約73円と非常に安価

プロペトはシンプルながら非常に優秀な保湿・保護剤ですが、乾燥の背景に湿疹・アトピー・接触皮膚炎などがある場合は、保湿だけでは改善しないことがあります。正確な診断と適切な治療薬の選択が早期改善への近道です。

大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な保湿・スキンケア治療をご提案しています。 「乾燥がなかなか改善しない」「アトピーのスキンケアを見直したい」「赤ちゃんの肌荒れが気になる」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。


監修

皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 医学博士
  • 抗加齢医学会専門医

【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会


参考文献

  1. 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌 2024;134(1).
    ▶ 国内アトピー性皮膚炎治療の標準を示すガイドライン。保湿剤の1日2回使用と寛解維持効果、入浴後の速やかな塗布が推奨されており、エモリエントとしてのワセリン系保湿剤の有用性が記載されている。

  2. 丸石製薬株式会社. プロペト添付文書(第1版, 2023年12月改訂).
    ▶ 製造販売元による公式情報。効能・効果(皮膚保護剤・一般軟膏基剤・眼科用軟膏基剤)、副作用(接触皮膚炎)、保管上の注意が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要な根拠。

  3. Horimukai K, et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 2014;134(4):824-830.
    ▶ 新生児期からの保湿剤使用がアトピー性皮膚炎の発症リスクを有意に低下させることを示した国際的に引用される研究。プロペトを含むエモリエントによる皮膚バリア機能維持の重要性を示す根拠。


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