【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:脱毛症/白血球減少症
セファランチン(一般名:セファランチン)は、円形脱毛症・粃糠性脱毛症・放射線による白血球減少症などに用いられる天然植物由来のアルカロイド内服薬です。合成抗菌薬や免疫抑制薬とは一線を画し、植物の塊根から精製した成分が「末梢血流改善・抗アレルギー・免疫調整・副腎皮質ホルモン産生増強」という四位一体の働きを発揮する点が最大の特徴です。
「円形脱毛症と診断されたが、何を飲めばよいのかわからない」「ステロイド以外の選択肢を探している」といったお悩みに対して、皮膚科専門医の視点から作用機序・服用方法・費用まで詳しくご説明します。
1. セファランチンとは
セファランチンは、ツヅラフジ科植物タマサキツヅラフジ(Stephania cepharantha Hayata)の塊根から抽出・精製されたビスベンジルイソキノリン型(ビスコクラウリン型)アルカロイド製剤です。
主な成分はセファランチン、イソテトランドリン、シクレアニン、ベルバミンであり、構造式も明らかになっています。
1914年に早田文蔵が Stephania cepharantha Hayata という学名で報告し、さらに1934年に近藤平三郎がその有効成分を精製し、学名にちなんでセファランチンと命名しました。
当初は結核やハンセン病の治療薬として使われていましたが、その後、生体膜安定化作用・抗アレルギー作用・免疫調整作用などが次々と解明され、現在の適応症へと発展してきた歴史ある薬剤です。
製造販売元はメディサ新薬株式会社(製造元:化研生薬株式会社)で、錠剤・散剤・注射剤の3剤形が揃っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | セファランチン錠1mg / セファランチン末1% / セファランチン注10mg |
| 一般名 | セファランチン(タマサキツヅラフジ抽出アルカロイド) |
| 製造販売 | メディサ新薬株式会社(製造元:化研生薬株式会社) |
| 分類 | 生薬由来アルカロイド製剤(白血球減少症治療薬) |
| 剤形 | 錠剤(1mg)・散剤(1%)・注射液(0.5%) |
| 後発品 | なし(先発品のみ) |
| 添付文書改訂 | 2023年9月(第1版) |
2. セファランチンの特徴
セファランチンの最大の特徴は、ひとつの薬剤が「4つの異なる経路」から同時に働きかける多機能性にあります。化学合成された薬剤ではなく天然由来成分であることも、長期使用を受け入れやすい背景となっています。
●末梢循環改善作用(血流を毛根へ届ける)
本剤は末梢循環独自の周期的血管運動を損なうことなく、末梢血管の拡張並びに血流を促進し、末梢循環障害を改善することが認められています。
毛根への酸素・栄養供給を高め、発毛サイクルの回復を後押しするイメージです。
●抗アレルギー作用(過剰な免疫反応を和らげる)
本剤は抗原抗体反応による肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑制することが認められています。
円形脱毛症の背景にある過剰な免疫応答を穏やかに制御し、毛根への攻撃を和らげます。
●副腎皮質ホルモン産生増強作用(内因性ステロイドを引き出す)
本剤は下垂体を介し、血中のACTHを上昇させることにより、副腎および血中のコルチコステロンの産生を高めることが認められています。
外からステロイドを投与するのではなく、体内の副腎に働きかけて自前の抗炎症ホルモンを増やすというユニークな機序です。
●造血機能回復作用(白血球を増やす)
本剤は放射線による造血機能障害に対し、血液幹細胞に働き、造血機能の回復を促進することが認められています。
放射線治療を受けた患者さんの白血球回復をサポートします。
●天然植物由来で副作用が比較的穏やか
副作用の発現頻度に関する大規模な調査データは限られていますが、
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していません。
ただし、臨床上は消化器症状・浮腫・発疹などが知られており、重大な副作用としてショック・アナフィラキシーに注意が必要です(後述)。
3. 適応疾患と服用方法
適応疾患
セファランチンの適応症は、放射線による白血球減少症、円形脱毛症・粃糠性脱毛症、滲出性中耳カタル、まむし咬傷です。
皮膚科領域では特に円形脱毛症・粃糠性脱毛症への処方が多く見られます。
有効性データ(添付文書より)
円形脱毛症・粃糠性脱毛症621例に対する有効率は、「有効」以上で53.3%(331/621)、「やや有効」以上で64.4%(400/621)でした。
また、
放射線による白血球減少症264例に対する有効率は、「有効」以上で64.8%(171/264)、「やや有効」以上で83.3%(220/264)でした。
服用方法(錠剤・散剤 経口投与の場合)
白血球減少症には1日3〜6mgを2〜3回に分けて食後経口投与し、脱毛症には1日1.5〜2mgを2〜3回に分けて食後経口投与します。いずれも年齢、症状により適宜増減します。
| 適応 | 1日投与量 | 分割回数 | 服用タイミング |
|---|---|---|---|
| 脱毛症(円形脱毛症など) | 1.5〜2mg | 2〜3回に分けて | 食後 |
| 白血球減少症 | 3〜6mg | 2〜3回に分けて | 食後 |
3つの重要ポイント
- 食後服用が原則:消化器への刺激を和らげ、吸収も安定します。
- 自己判断で中断しない:円形脱毛症では効果が現れるまで数週間〜数か月かかることがあります。医師の指示通りに継続してください。
- 高齢者は減量が原則:一般的に生理機能が低下していることが多いため、少量から開始します。
4. 使用する上の注意点
天然由来成分とはいえ、副作用や注意事項があります。服用前に必ずご確認ください。
●主な副作用
浮腫(顔面・手足)、過敏症(発疹・皮疹)、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢などが知られています。
これらは比較的軽度であることが多いですが、気になる症状が続く場合は医師にご相談ください。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
ショック・アナフィラキシー(頻度不明)が起こることがあります。顔面潮紅、じんましん、胸部不快感、喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下などが現れた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
これらの症状が現れた場合は、ただちに服用を止め、速やかに医療機関を受診してください。
●注射剤ご使用の方へ
注射剤においてはショックの報告があるため、投与前に問診を十分に行うこと。
経口剤と比べてアレルギー反応が起こりやすいとされており、医療機関での使用に限られます。
●併用禁忌・併用注意
添付文書上、現時点で特定の薬剤との併用禁忌は設定されていません。ただし、他の薬剤との相互作用が十分に検討されていないケースもあるため、服用中の薬・サプリメントは必ず医師・薬剤師にお伝えください。
●こんな方は事前に医師にご相談を
- 薬物過敏症またはその既往歴のある方(添付文書上、慎重投与)
-
妊娠中・妊娠の可能性がある方:
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること、とされています。 -
授乳中の方:
授乳中の女性には治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されています。 -
高齢の方:生理機能の低下に応じて減量を考慮します。
- 肝臓・腎臓に疾患のある方
●日常生活での注意
- 眠気を誘う成分は含まれていないため、自動車運転に特段の制限はありませんが、体調変化があれば運転は控えてください。
- アルコールとの特定の禁忌記載はありませんが、肝臓への負担を考え、服用中は飲酒を控えめにすることを推奨します。
- セファランチン製剤は医療用医薬品であり、市販はされていません。必ず医師の処方が必要です。
5. 薬価と費用
セファランチン錠1mgの薬価は6.3円(1mg1錠)です(更新確認日:2026年4月17日)。
また、
セファランチン末1%の薬価は43.5円(1%・1g)です。
※2026年度薬価基準(2026年4月改定)。後発品はありません。
セファランチン錠1mg(先発品・脱毛症適応:1日2mg=2錠)
| 期間 | 1日薬価 | 期間分薬価 | 3割負担(目安) |
|---|---|---|---|
| 14日分 | 12.6円 | 176.4円 | 約53円 |
| 30日分 | 12.6円 | 378円 | 約114円 |
セファランチン末1%(先発品・脱毛症適応:1日2mg=0.2g)
| 期間 | 1日薬価 | 期間分薬価 | 3割負担(目安) |
|---|---|---|---|
| 14日分 | 8.7円 | 121.8円 | 約37円 |
| 30日分 | 8.7円 | 261円 | 約78円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。後発品は存在しないため、先発品のみの記載となります。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: セファランチンは円形脱毛症に本当に効きますか?
A1: 添付文書に記載された臨床試験データでは、
円形脱毛症・粃糠性脱毛症621例に対して「やや有効」以上の有効率は64.4%
と報告されています。ただし効果の現れ方には個人差があり、数週間〜数か月の継続が必要です。ステロイド外用薬など他の治療と組み合わせることが多いため、医師と相談のうえ治療計画を立ててください。
Q2: ステロイドとの違いは何ですか?
A2: ステロイド外用薬や注射は強力な抗炎症作用を持ちますが、皮膚萎縮・感染リスクなどの副作用が問題になることがあります。セファランチンは内服で、自前の副腎皮質ホルモン産生を高める間接的な作用を持ちつつ、末梢血流改善・抗アレルギー作用を同時に発揮する点が異なります。重症度や状態によってステロイドと使い分けるか、併用することが一般的です。
Q3: どれくらいの期間、飲み続ける必要がありますか?
A3: 円形脱毛症の治療期間は重症度によって異なります。軽症では数か月で改善が期待できる一方、多発型・全頭型では長期の継続が必要な場合もあります。自己判断で中断せず、定期的な皮膚科受診のもとで経過を確認しながら継続期間を決定してください。
Q4: 市販薬として購入できますか?
A4: セファランチン製剤は医療用医薬品のため、市販(OTC)では購入できません。医師の診察・処方が必須です。
Q5: 子どもや高齢者でも使えますか?
A5: 用量は「年齢・症状により適宜増減」とされており、小児・高齢者にも使用されることがあります。特に高齢者では生理機能の低下を考慮した減量が原則です。必ず医師の指示に従ってください。
Q6: AGA(男性型脱毛症)にも効きますか?
A6:
「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」においては、セファランチン外用についてエビデンスがないとしてC2(根拠がないので勧められない)と評価されています。
AGAに対しては添付文書上の適応外であり、フィナステリド・デュタステリドなどの標準治療薬が優先されます。使用を希望される場合は必ず医師にご相談ください。
Q7: 飲み忘れた場合はどうすればよいですか?
A7: 気づいた時点でできるだけ早く服用してください。ただし次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばし、次の通常の時間に服用します。2回分をまとめて服用することは絶対に避けてください。
7. 皮膚科専門医解説 セファランチンの要点まとめ
- 原料:ツヅラフジ科植物タマサキツヅラフジの塊根から精製したビスベンジルイソキノリン型アルカロイド。1934年に近藤平三郎が命名した歴史ある天然由来薬
- 適応:円形脱毛症・粃糠性脱毛症・放射線による白血球減少症・滲出性中耳カタル・まむし咬傷
- 作用:①末梢血流改善②抗アレルギー(ヒスタミン遊離抑制)③副腎皮質ホルモン産生増強④造血機能回復という”四位一体”の働き
- 飲み方:脱毛症は1日1.5〜2mg(2〜3回に分けて食後)、白血球減少症は1日3〜6mg(2〜3回に分けて食後)
- 副作用:浮腫・発疹・消化器症状など。重大な副作用としてショック・アナフィラキシーに注意
- 費用:錠剤1mg換算で30日分(脱毛症量)の3割負担は約114円と非常に安価
- 後発品なし:先発品のみのため、ジェネリックへの切り替えはできない
円形脱毛症は自己免疫的メカニズムが関与するため、セファランチン単独よりもステロイド外用・局所免疫療法・内服ステロイドなど複数の治療を組み合わせることで効果が高まります。症状の範囲や経過に応じた個別の治療設計が大切です。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な円形脱毛症・脱毛症治療をご提案しています。 「円形脱毛症の治療薬を相談したい」「セファランチンを含む内服治療を検討したい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
-
日本皮膚科学会. 円形脱毛症診療ガイドライン2017. 日本皮膚科学会雑誌 2017;127(13):2741-2762.
▶ 国内における円形脱毛症治療の標準指針。セファランチン内服はC1(行うことを考慮してよい)と推奨されており、ステロイド外用・局所免疫療法との組み合わせが示されている。 -
化研生薬株式会社. セファランチン錠1mg・セファランチン末1%・セファランチン注10mg 添付文書(2023年9月改訂 第1版).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・作用機序・有効性試験データ・副作用・注意事項の主要な根拠。 -
Kondo H. Studies on the alkaloids of Stephania cepharantha Hayata. Yakugaku Zasshi 1934.
▶ 近藤平三郎によるセファランチンの原報。タマサキツヅラフジからの有効成分精製と命名の経緯が記載されており、本薬剤の歴史的背景の根拠。
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