【医師監修】|2026.05.19|カテゴリ:蕁麻疹・皮膚そう痒症
アタラックスP(一般名:ヒドロキシジンパモ酸塩)は、蕁麻疹や湿疹・皮膚炎に伴うかゆみを抑えるために皮膚科で広く処方される第一世代抗ヒスタミン薬です。「じんましんが突然でて眠れない」「アトピーで夜中にかきむしってしまう」「湿疹のかゆみがなかなか引かない」——そんなつらい皮膚症状に対し、皮膚科専門医が選択する代表的な内服薬の一つです。
実はアタラックスPは、ヒスタミンをブロックするだけでなく、脳の興奮そのものを鎮める”二刀流”の働きを持つことが特徴です。かゆみを末梢でも中枢でも同時に抑えるため、特に「かゆくて眠れない夜」に力を発揮します。本記事では、その作用機序から用法用量、薬価まで、皮膚科専門医の視点で詳しく解説します。
1. アタラックスP(ヒドロキシジンパモ酸塩)とは
アタラックスP(一般名:ヒドロキシジンパモ酸塩)は、第一世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬) に分類される経口薬です。ファイザー株式会社が製造販売しており、かゆみの原因物質であるヒスタミンがH1受容体に結合するのをブロックすることで、アレルギー反応による皮膚症状を抑えます。
有効成分はヒドロキシジンです。同じヒドロキシジンを成分とする製品として「アタラックス(塩酸塩)錠」も存在しますが、アタラックスPはパモ酸塩として製剤化されており、主に経口剤(カプセル・散・シロップ等)として使用されます。名前の「P」は Pamoate(パモ酸塩) に由来します。
皮膚科領域での主な適応疾患は次のとおりです。
- 蕁麻疹(じんましん)
- 皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)
また皮膚科以外の適応として、神経症における不安・緊張・抑うつへの使用もあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | アタラックス-Pカプセル25mg/50mg ほか |
| 一般名 | ヒドロキシジンパモ酸塩 |
| 製造販売 | ファイザー株式会社 |
| 分類 | 第一世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬) |
| 剤形 | カプセル(25mg・50mg)、散10%、シロップ0.5%、ドライシロップ2.5% |
| 薬価収載年 | 2006年(カプセル) |
| 後発品 | なし(準先発品に区分) |
2. アタラックスPの特徴
アタラックスPの最大の特徴は、「かゆみを末梢と中枢の両方から抑える二刀流の薬」という点です。
●抗ヒスタミン作用(末梢での”かゆみブロック”)
蕁麻疹や湿疹のかゆみは、皮膚の肥満細胞から放出されたヒスタミンが神経のH1受容体に結合することで生じます。アタラックスPはこのH1受容体をブロックし、ヒスタミンが働くのを根本から遮断します。蕁麻疹の発赤・膨疹(ぽっこり腫れ)の軽減にも貢献します。
●中枢抑制作用(脳の”かゆみ興奮”を鎮める)
アタラックスPは血液脳関門を通過し、視床・視床下部・大脳辺縁系などに作用して中枢神経を抑制します。これが「かゆくて眠れない夜」に特に有効なポイントです。脳の興奮を直接鎮めるイメージで、夜間のかゆみによる不眠にも効果的です。一方でこの作用が眠気の副作用の原因にもなります。
●セチリジンの”前駆体”という側面
ヒドロキシジンは体内の肝臓で代謝されると、一部がセチリジン(ジルテックの成分) に変換されます。セチリジンは中枢抑制作用がほとんどない第二世代抗ヒスタミン薬であり、アタラックスPはこの変換を経由して抗ヒスタミン作用を発揮する側面も持っています。
●多彩な剤形で年齢を問わず使いやすい
カプセル(25mg・50mg)だけでなく、散・シロップ・ドライシロップと剤形が豊富なため、小児から成人まで幅広い年齢層に対応できるのも皮膚科で長く使われてきた理由の一つです。
●かゆみの強い症例には増量しやすい
用量に幅があり(皮膚科領域では1日85〜128mg相当)、症状の強さに応じて医師が柔軟に調整できます。
3. 適応疾患と服用方法
適応疾患
アタラックスP(カプセル)の主な皮膚科適応症は次のとおりです。
- 蕁麻疹(急性・慢性を含む)
- 湿疹・皮膚炎に伴うそう痒(アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎など)
- 皮膚そう痒症(高齢者の乾皮症によるかゆみなど)
服用方法(添付文書準拠)
【皮膚科領域】
ヒドロキシジンパモ酸塩として、通常成人1日85〜128mg(ヒドロキシジン塩酸塩として50〜75mg相当)を2〜3回に分割して食後経口投与します。
– カプセル換算:25mgカプセルなら1回1〜2カプセル、1日2〜3回が目安
【神経症における不安・緊張・抑うつ】
通常成人1日128〜255mgを3〜4回に分割経口投与します。
年齢・症状により医師が適宜増減します。
3つの重要ポイント
- 眠気が出やすいため、夕食後・就寝前の服用が中心になることが多い:かゆみが夜間に強くなる傾向があり、夜に服用することで眠気と効果を同時に活かせます。
- 自己判断で急に飲むのを止めない:症状が改善しても、医師の指示通り継続することが再燃防止につながります。
- 効果発現は服用後1〜2時間が目安:即効性がありますが、蕁麻疹など急性反応には状況に応じた対応が必要なため、医師にご相談ください。
4. 使用する上の注意点
●主な副作用
| 副作用 | 特記事項 |
|---|---|
| 眠気・傾眠 | 最も頻度が高い。翌朝まで持ち越すことも |
| 口渇(口の乾き) | 抗コリン作用による |
| めまい | 高齢者で特に注意 |
| 便秘 | 抗コリン作用による |
| 倦怠感・胃部不快感 | 消化器症状 |
| 不随意運動・振戦 | 中枢系副作用 |
眠気は最も多い副作用であり、翌朝に持ち越す「持ち越し効果」が生じることもあります。服用のタイミングを医師と相談しながら調整することが重要です。
●重大な副作用(頻度は稀ですが要注意)
- ショック・アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下など)
- QT延長・心室頻拍(torsade de pointesを含む)
- 肝機能障害・黄疸(AST・ALT・γ-GTP上昇)
- 急性汎発性発疹性膿疱症(突然の広範な膿疱を伴う発疹)
服用中に呼吸困難・顔面蒼白・激しい動悸・皮膚の広範な発疹・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) などが現れた場合は、ただちに服用を中止し医療機関を受診してください。
●禁忌(飲んではいけない方)
以下に該当する方は服用できません。
- 本剤(ヒドロキシジン)・セチリジン・ピペラジン誘導体・アミノフィリン・エチレンジアミンに過敏症の既往歴がある方
- ポルフィリン症の患者
- 妊婦・妊娠している可能性のある方(禁忌)
⚠️ セチリジン(ジルテック・ザイザルなどの成分)でアレルギーを起こしたことがある方は、ヒドロキシジンも禁忌となります。必ず医師にお伝えください。
●併用注意
| 薬剤 | 注意内容 |
|---|---|
| 中枢神経抑制剤(睡眠薬・精神安定薬など) | 中枢抑制が相加的に増強される |
| アルコール | 中枢抑制が増強される |
| QT延長を起こす薬剤 | 心室頻拍リスクが増大 |
| 抗コリン薬 | 抗コリン作用(口渇・尿閉・便秘など)が増強される |
| CYP3A4阻害薬 | ヒドロキシジンの血中濃度上昇の可能性 |
●事前に医師にご相談が必要な方
- 緑内障のある方(眼圧上昇のおそれ)
- 前立腺肥大・下部尿路閉塞性疾患のある方(尿閉のリスク)
- てんかん・痙攣性疾患のある方または既往がある方
- QT延長・著明な徐脈・低カリウム血症のある方
- 重症筋無力症・認知症の方
- 腎機能障害・肝機能障害のある方(薬の排泄が遅延する可能性)
- 高齢者(転倒リスク増大)
- 授乳中の方(授乳を避けることが推奨される)
●日常生活での注意
- 自動車の運転・危険を伴う機械操作は禁止:眠気を催すことがあるため、服用中は運転等に従事しないよう注意が必要です(添付文書に明記)。
- アルコールは厳禁:中枢抑制作用が増強されます。
- 市販薬はありません:医療用医薬品のため、医師の処方箋が必要です。
5. 薬価と費用
アタラックスPカプセルの薬価は以下のとおりです(2026年度薬価基準(2026年4月改定))。なお、アタラックスPは準先発品に分類されるため、後発品(ジェネリック)は存在しません。
カプセル25mgの場合(皮膚科標準用量:1日85mg相当=25mg×3カプセル/日)
| 剤形・規格 | 1カプセル薬価 | 14日分薬価(3C/日) | 14日分(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アタラックス-Pカプセル25mg | 5.90円 | 247.8円 | 約74円 |
| 剤形・規格 | 1カプセル薬価 | 30日分薬価(3C/日) | 30日分(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アタラックス-Pカプセル25mg | 5.90円 | 531.0円 | 約159円 |
カプセル50mgの場合(皮膚科標準用量:1日100mg相当=50mg×2カプセル/日)
| 剤形・規格 | 1カプセル薬価 | 14日分薬価(2C/日) | 14日分(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アタラックス-Pカプセル50mg | 10.40円 | 291.2円 | 約87円 |
| 剤形・規格 | 1カプセル薬価 | 30日分薬価(2C/日) | 30日分(3割負担) |
|---|---|---|---|
| アタラックス-Pカプセル50mg | 10.40円 | 624.0円 | 約187円 |
※薬剤費のみの目安です。別途、診察料・処方箋料・調剤料などが加算されます。実際の処方量・用量は症状により異なります。
6. FAQ(よくある質問)
Q1: アタラックスPはどれくらいで効きますか?
A1: 服用後1〜2時間程度でかゆみや蕁麻疹の症状が和らいでくることが多いです。ただし慢性蕁麻疹や慢性の皮膚そう痒症では、継続服用によって徐々に症状が安定していくため、数日〜2週間程度での改善を目安にするとよいでしょう。
Q2: 眠気が強くて困ります。どうすればよいですか?
A2: アタラックスPは第一世代抗ヒスタミン薬のため、眠気は代表的な副作用です。夕食後や就寝前にまとめて服用するタイミングの工夫で眠気と付き合う方法があります。また、眠気の少ない第二世代抗ヒスタミン薬(アレグラ・ザイザルなど)への変更を検討することも可能ですので、担当医にご相談ください。
Q3: 妊娠中でも飲めますか?
A3: アタラックスPは妊婦または妊娠している可能性のある方には禁忌(絶対に使ってはいけない) とされています。動物実験で胎児毒性が報告されており、自己判断での使用は絶対に避けてください。妊娠中のかゆみや蕁麻疹には、安全性の高い別の薬を医師が選択します。
Q4: アタラックスとアタラックスPの違いは何ですか?
A4: 有効成分は同じヒドロキシジンですが、アタラックスは「塩酸塩」、アタラックスPは「パモ酸塩」として製剤化されています。効果は同等で、剤形の種類や処方される場面が異なります。名前の「P」はパモ酸塩(Pamoate)に由来します。
Q5: 車の運転はできますか?
A5: 服用中の自動車の運転や危険を伴う機械の操作は禁止されています。眠気・めまいが生じる可能性があるため、添付文書に明確に記載されています。翌朝に眠気が持ち越す場合もありますので、特に服用開始直後は十分ご注意ください。
Q6: ジルテック(セチリジン)を飲んでいますが、アタラックスPも一緒に飲めますか?
A6: アタラックスPの成分ヒドロキシジンはセチリジンの前駆体(体内でセチリジンに変換される) であるため、セチリジンと重複してしまうリスクがあります。また、セチリジンに過敏症がある方はアタラックスPが禁忌です。必ず医師・薬剤師にご相談ください。
Q7: 高齢者でも使えますか?
A7: 使用は可能ですが、高齢者では特に注意が必要です。眠気・めまい・抗コリン作用(尿閉・便秘・認知機能への影響)などの副作用が出やすく、転倒リスクも高まります。高齢者への投与では少量から開始し、状態を慎重に観察することが推奨されています。
7. 皮膚科専門医解説 アタラックスPの要点まとめ
- 適応:蕁麻疹・湿疹・皮膚炎・皮膚そう痒症のかゆみに用いられる第一世代抗ヒスタミン薬(準先発品)
- 作用:抗ヒスタミン作用(末梢のかゆみブロック)+中枢抑制作用(脳の興奮を鎮める)の”二刀流”。夜間のかゆみによる不眠に特に有効
- 飲み方:皮膚科領域では1日85〜128mg(パモ酸塩換算)を2〜3回に分割。夕食後〜就寝前の集中服用が実践的
- 禁忌:妊婦・妊娠の可能性のある方、セチリジン・ピペラジン誘導体過敏症の方は絶対禁忌
- 注意点:眠気・口渇・めまいが主な副作用。服用中の車の運転は禁止。重大な副作用(QT延長・ショック・肝機能障害)にも注意
- 費用:25mgカプセル14日分(3C/日)で3割負担 約74円。後発品なし(準先発品)
アタラックスPは「かゆみ止め」と「鎮静作用」の二つの顔を持つ歴史ある薬剤ですが、眠気・禁忌・運転制限など注意すべき点も少なくありません。自己判断での中断・増量は避け、症状に応じて医師が最適な薬を選択します。
大阪の花ふさ皮ふ科グループでは、患者さんのライフスタイルに合わせた最適な蕁麻疹・皮膚そう痒症治療をご提案しています。 「じんましんが繰り返し出る」「夜間のかゆみで眠れない」「湿疹のかゆみを根本から抑えたい」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。皮膚症状のご相談は、大阪の花ふさ皮ふ科グループへ。
監修
皮膚科専門医・アレルギー専門医・医学博士 花房 崇明
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 医学博士
- 抗加齢医学会専門医
【所属学会】日本皮膚科学会/日本アレルギー学会/日本臨床皮膚科医会/日本美容皮膚科学会/日本抗加齢医学会
参考文献
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日本皮膚科学会. 蕁麻疹診療ガイドライン2018(2023年一部改訂). 日本皮膚科学会雑誌 2023.
▶ 国内における蕁麻疹治療の標準指針。H1抗ヒスタミン薬が第一選択として推奨されており、第一世代製剤の眠気など副作用特性についても言及されている。 -
ファイザー株式会社. アタラックス-Pカプセル(25mg・50mg)添付文書(改訂版, 2023年).
▶ 製造販売元による公式情報。適応症・用法用量・禁忌(妊婦・セチリジン過敏症など)・重大な副作用(QT延長・ショック・肝機能障害)・相互作用が詳細に記載されており、本記事の薬学的記述の主要根拠。 -
Simons FE, et al. Hydroxyzine: a reassessment of its pharmacology and clinical efficacy. Ann Allergy Asthma Immunol. 1994;72(5):386-393.
▶ ヒドロキシジンの薬理学的再評価論文。H1受容体拮抗作用と中枢抑制作用の機序、並びにセチリジンへの代謝経路についての科学的根拠を提供している。
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