アトピー性皮膚炎の薬は、大きく「外用薬(塗り薬)」「内服薬(飲み薬)」に分けられ、症状の重さや部位・年齢に応じて組み合わせて使うことが治療の基本です。
「ステロイドは怖い」「塗り薬だけでは足りない気がする」など、薬に関する疑問や不安を抱えている方は少なくありません。この記事では、各薬の特徴・正しい使い方・よくある誤解をわかりやすく整理します。
なお、アトピー性皮膚炎の原因や治療の全体像については総合ピラー記事「アトピー性皮膚炎の原因と最新治療」をあわせてご参照ください。最終的な診断・治療方針は必ず医師の診察を受けたうえでご判断ください。

監修者:花房 崇明

監修医師

理事長:花房 崇明(はなふさ たかあき)

[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院) / 日本皮膚科学会皮膚科専門医

・日本アレルギー学会アレルギー専門医 / 日本抗加齢医学会専門医

・難病指定医

[ 所属学会 ]

・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会 / 日本臨床皮膚科医会 / 日本美容皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会 等

目次

1. アトピーの薬は「外用」と「内服」に大別

アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下と免疫の過剰反応が絡み合う慢性・再発性の炎症性皮膚疾患です。「治す」というより「症状を上手にコントロールしながら付き合う」ことが治療の目標とされています。

薬物療法は主に以下の3カテゴリに分類されます。

カテゴリ主な薬剤例この記事での扱い
外用薬(塗り薬)ステロイド外用薬・タクロリムス軟膏・デルゴシチニブ軟膏・保湿剤本記事で詳しく解説
内服薬(飲み薬)抗ヒスタミン薬・JAK阻害薬(内服)本記事で詳しく解説
注射(生物学的製剤)デュピクセントなど別記事で解説

注射(生物学的製剤)による治療については、別途「アトピー 注射」記事で詳しく取り上げています。本記事では外用薬と内服薬に絞って解説します。

2. 外用薬の種類と使い方

外用薬はアトピー治療の中心です。炎症を抑える薬と保湿剤を組み合わせて使うことが基本とされています。

① ステロイド外用薬|ランクと塗る量(FTU)

ステロイド外用薬は、アトピーの炎症を抑える標準的な外用薬です。強さ(ランク)はⅠ群(最も強い)〜Ⅴ群(最も弱い)の5段階に分かれており、炎症の程度・部位・年齢に応じて医師が選択します。

塗る量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)という考え方があります。FTUとは「チューブの先から人差し指の第一関節まで絞り出した量(約0.5g)」で、これが手のひら2枚分の面積に塗る目安とされています。少なすぎると効果が不十分になることがあるため、適切な量を塗ることが大切です。

部位目安のFTU数
顔全体約2.5 FTU
約1 FTU
腕(片側)約3 FTU
体(前面または背面)約7 FTU
脚(片側)約6 FTU

※FTUはあくまで目安です。実際の塗り方・量は診察時に医師・看護師にご確認ください。

② タクロリムス軟膏(プロトピック®)

タクロリムス軟膏は、ステロイドとは異なる仕組みで免疫反応を抑える外用薬です。顔・首などの皮膚が薄い部位や、ステロイド外用薬を長期使用しにくい部位に用いられる場合があります。使用開始時にほてりや刺激感が出ることがありますが、多くの場合は使用を続けると落ち着くとされています。2歳以上から使用できる小児用製剤もあります(適応は医師が判断します)。

③ デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®)|JAK外用薬

デルゴシチニブ軟膏は、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬の外用タイプです。炎症に関わるシグナル伝達を局所で抑えることでかゆみや湿疹の改善が期待できるとされています。成人用・小児用(0.25%)の製剤があり、部位や年齢に応じて使い分けます。こちらも適応・使用方法は医師の診察で判断します。

【外用薬を使う際の共通ポイント】

  • 入浴後など皮膚が清潔な状態で塗る
  • 保湿剤と炎症を抑える薬を重ね塗りする場合は、医師の指示に従った順序・間隔で
  • 自己判断で急に中止しない(再燃の原因になる場合があります)
  • 効果・副作用の現れ方には個人差があります

3. ステロイドを正しく理解する|怖がりすぎないために

「ステロイドは副作用が怖い」という声をよく耳にします。確かに長期・過剰使用には注意が必要ですが、医師の指示通りに使う限り、多くの場合は安全に炎症をコントロールできる薬とされています。

【やってはいけないNG行動】

  • 「怖いから」と自己判断で急に塗るのをやめる(リバウンドや再燃の原因になる場合があります)
  • インターネットの情報だけを根拠に「脱ステロイド」を試みる
  • 症状が改善したからといって保湿ケアをやめる
  • 他の人に処方された薬を流用する

「脱ステロイド」を自己流で行い、症状が悪化するケースが報告されています。ステロイド外用薬の減量・中止を検討する場合は、必ず医師に相談し、段階的に行うことが大切です。

かゆみ・湿疹の繰り返しは皮膚科へ

アトピー性皮膚炎は適切な治療で症状のコントロールが期待できます。皮膚科専門医・アレルギー専門医が、外用・内服・注射・紫外線療法の中から保険診療を中心にご提案します。お気軽にご相談ください。

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4. 保湿剤とプロアクティブ療法|治療の「土台」

アトピー治療において、保湿剤(スキンケア)は薬と同等に重要な「治療の土台」です。皮膚バリア機能を補うことで、炎症の再発を抑えやすくなるとされています。

プロアクティブ療法とは?

症状が落ち着いた後も、再燃しやすい部位に低頻度でステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を塗り続けながら保湿を続ける方法を「プロアクティブ療法」といいます。症状が出てから対処する「リアクティブ療法」と比べ、再燃の頻度を抑える効果が期待できるとされています。

どのタイミングでプロアクティブ療法に移行するか、保湿剤の種類(ヘパリン類似物質含有製剤・白色ワセリンなど)の選び方は、皮膚の状態に合わせて医師が判断します。千里中央・豊中・吹田エリアで受診される方は、スキンケア指導も含めてご相談ください。

5. 内服薬の種類と使い方

① 抗ヒスタミン薬

かゆみ(掻痒感:そうようかん)を和らげる目的で使われます。かゆみによる掻き壊し→炎症悪化の悪循環を断ち切る補助的な役割が期待されています。眠気が出るタイプと出にくいタイプがあり、生活スタイルに合わせて選択します。

② JAK阻害薬(内服)

中等症〜重症のアトピー性皮膚炎で、外用薬だけでは症状のコントロールが難しい場合に選択肢となる飲み薬です。炎症に関わるJAK経路を内側から抑えることで、かゆみや皮疹の改善が期待できるとされています。

ただし、適応には一定の要件があり、感染症・血液検査などの事前確認が必要です。費用負担や定期的なフォローアップも伴うため、詳細は診察でご確認ください。当院では皮膚科専門医・アレルギー専門医のダブル資格を持つ医師が、患者さんの状態を総合的に評価したうえで治療方針をご提案しています。

※ステロイドの内服(全身投与)は、外用・注射・JAK阻害薬では対応しきれない重症例などで短期的に用いられることがありますが、長期使用には副作用リスクがあるため、通常は限定的な使用にとどめられます。詳細は医師にご相談ください。

6. 市販薬(OTC)を使う前に知っておきたいこと

ドラッグストアで購入できる市販のアトピー向け外用薬(弱いステロイドを含むものなど)は、軽症の一時的な対処には使える場合がありますが、自己判断での長期使用はおすすめできません

市販薬の選び方・使い方の注意点については、「アトピーの市販薬」解説記事で詳しく取り上げています。症状が続く・悪化している場合は、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。

まとめ|アトピーの薬は「正しく使う」ことが大切

アトピー性皮膚炎の薬は、外用薬・内服薬それぞれの特性を理解し、医師の指示に従って正しく使うことで症状のコントロールが目指せます。

  • 外用薬の基本:ステロイド外用薬はランク・FTUを意識して適切な量を塗る。タクロリムス・デルゴシチニブは部位・年齢に応じて使い分ける
  • 自己中断に注意:「怖い」という理由だけでの急な中止は再燃リスクがあるため、減量・中止は医師と相談して行う
  • 保湿は治療の土台:プロアクティブ療法で再燃を抑えることを目指す
  • 内服薬:抗ヒスタミン薬でかゆみをケア。中等症〜重症ではJAK阻害薬内服も選択肢に
  • 注射(生物学的製剤)については別記事で詳しく解説しています

最終的な診断・治療方針は必ず医師の診察を受けたうえでご判断ください。千里中央・豊中・吹田エリアでアトピーの薬についてご相談の方は、千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(千里中央駅から徒歩約5分)へお気軽にご相談ください。

千里中央でアトピーのご相談は花ふさ皮ふ科へ

アトピー性皮膚炎は、症状や重症度に応じて外用薬・内服薬・注射(生物学的製剤)・紫外線療法など幅広い治療があります。皮膚科専門医・アレルギー専門医が保険診療を中心に、お一人おひとりに合った治療をご提案します。

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FAQ(よくある質問)

Q1:ステロイド外用薬を長く使い続けると皮膚が薄くなるのですか?

A.
ステロイド外用薬を長期・過剰に使用すると、皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)などの局所副作用が起こる可能性があります。ただし、医師が処方するランク・使用期間・塗る量を守った場合には、多くの場合このようなリスクは最小限に抑えられるとされています。心配な場合は自己判断で中止せず、必ず担当医にご相談ください。

Q2:FTU(フィンガーチップユニット)とは何ですか?

A.
FTUとは、チューブの先から人差し指の第一関節まで絞り出した量(約0.5g)を1単位とする、外用薬の塗布量の目安です。この量で手のひら2枚分の面積を覆う程度が目安とされています。少なすぎると十分な効果が得られないことがあるため、適切な量を塗ることが大切です。具体的な量は診察時に医師・看護師にご確認ください。

Q3:プロアクティブ療法はいつまで続けるのですか?

A.
プロアクティブ療法の期間は、症状の経過や皮膚の状態によって異なります。一般的には症状が落ち着いた後も再燃しやすい部位に低頻度で薬を塗り続けますが、いつ終了するかは医師が皮膚の状態を見ながら判断します。自己判断でやめると再燃する場合があるため、定期的な受診が大切です。

Q4:JAK阻害薬の内服はどのような人に向いていますか?

A.
JAK阻害薬の内服は、主に中等症〜重症のアトピー性皮膚炎で、外用薬だけでは症状のコントロールが難しい場合に選択肢となります。ただし、使用にあたっては感染症の有無や血液検査など事前の確認が必要であり、適応の可否は医師が診察で判断します。費用や定期的なフォローアップについても診察時にご確認ください。

Q5:タクロリムス軟膏とステロイド外用薬はどう使い分けるのですか?

A.
タクロリムス軟膏は、顔・首など皮膚が薄くデリケートな部位や、ステロイド外用薬を長期使用しにくい部位に用いられる場合があります。一方、ステロイド外用薬は炎症の程度に応じたランク選択ができ、体幹・四肢などに広く使われます。どちらをどの部位に使うかは、皮膚の状態・年齢・炎症の程度を総合的に判断して医師が決定します。

Q6:市販のアトピー向け薬では不十分ですか?

A.
市販薬(OTC)は軽症の一時的な対処に使える場合がありますが、アトピー性皮膚炎は症状の程度・部位・年齢によって必要な薬の種類・強さが異なります。市販薬で改善が見られない場合や、症状が繰り返す・悪化している場合は、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。市販薬の詳しい選び方については「アトピーの市販薬」解説記事もご参照ください。