アトピー性皮膚炎において、保湿(スキンケア)は薬物治療と並ぶ治療の土台と位置づけられています。どれほど良い薬を使っていても、皮膚のバリア機能が低下したままでは外部刺激やアレルゲンが侵入しやすく、炎症とかゆみの悪循環が続きやすいとされています。本記事では、皮膚科専門医・アレルギー専門医のダブル資格を持つ花房崇明医師(医学博士)の監修のもと、保湿剤の正しい塗り方・タイプの考え方・季節ごとの工夫まで、実践的なスキンケア方法を解説します。なお、アトピー性皮膚炎の原因・診断・治療の総論についてはこちらのピラー記事をあわせてご覧ください。

監修者:花房 崇明

監修医師

理事長:花房 崇明(はなふさ たかあき)

[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院) / 日本皮膚科学会皮膚科専門医

・日本アレルギー学会アレルギー専門医 / 日本抗加齢医学会専門医

・難病指定医

[ 所属学会 ]

・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会 / 日本臨床皮膚科医会 / 日本美容皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会 等

目次

1. アトピーで保湿が治療の土台になる理由

アトピー性皮膚炎の皮膚では、バリア機能(皮膚のバリアとなる構造)が低下していることが多いとされています。バリア機能が低下すると、外部からのアレルゲンや刺激物が皮膚に侵入しやすくなり、免疫が過剰に反応して炎症・かゆみが起こりやすくなります。また、皮膚内部の水分が蒸発しやすくなり、乾燥がさらにバリア機能を悪化させるという悪循環が生じます。

保湿剤を継続的に使用することで、皮膚の水分保持を助け、外部刺激から皮膚を守る環境を整えることが期待できます。これは「保湿で炎症が治る」という意味ではなく、炎症を起こしにくい皮膚の状態を維持するための土台づくりという考え方です。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも、スキンケアは治療の基本として位置づけられています。

【ポイント】保湿は「かゆくなってから塗る」ものではなく、症状が落ち着いている時期も継続することが重要とされています。良い状態を維持するためのプロアクティブなケアが、再燃を防ぐ鍵のひとつです。

2. 保湿剤の正しい塗り方(量・タイミング・回数)

塗るタイミング:入浴後すぐが効果的

保湿剤を塗る最も効果的なタイミングは、入浴後5〜10分以内とされています。入浴によって皮膚の角質層が水分を含んだ状態のうちに保湿剤を塗ることで、蒸発を防いで水分を閉じ込める効果が期待できます。入浴時の洗い方や温度管理についてはアトピーの入浴ケア記事もあわせてご参照ください。

塗る量の目安

保湿剤は「少し多いかな」と感じる量を、皮膚に薄く伸ばすのではなく、しっかりとのせるイメージで塗ることが推奨されています。クリームや軟膏の場合、人差し指の第一関節分(約0.5g)が手のひら2枚分の面積に相当するという「フィンガーチップユニット(FTU)」が量の目安として使われます。ローションタイプは1円玉大が手のひら1枚分の目安とされています。ただし、適切な量は剤型や皮膚の状態によって異なるため、担当医や薬剤師にご確認ください。

塗る回数

基本は1日2回(朝・入浴後)が目安とされていますが、乾燥が強い時期や部位によっては回数を増やすことも考えられます。「かゆくなったら塗る」という対症的な使い方ではなく、症状の有無にかかわらず毎日継続することが大切です。

【やってはいけないNG行動】

  • かゆいからといって強くこすって塗る(摩擦が刺激になります)
  • 「よくなったから」と保湿をやめる(再燃リスクが高まります)
  • 入浴後に時間をあけてから塗る(水分が蒸発してしまいます)
  • 保湿剤を薄く伸ばしすぎる(量が不十分になりやすいです)

3. 保湿剤のタイプの考え方(処方 vs 市販)

保湿剤には大きく分けて医師が処方する保湿剤(医薬品)市販の保湿剤(化粧品・医薬部外品)があります。どちらが「よい」ということではなく、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要です。

項目処方保湿剤(医薬品)市販保湿剤
保険適用あり(公的医療保険の適用対象となりうる)なし(全額自己負担)
成分ヘパリン類似物質・白色ワセリン・尿素製剤などセラミド・グリセリン・ヒアルロン酸など多様
剤型軟膏・クリーム・ローション・スプレーなどクリーム・乳液・化粧水・ジェルなど
特徴有効成分・安全性データが明確使用感・香りなど選択肢が広い

アトピー性皮膚炎の治療として処方される保湿剤は、公的医療保険の適用対象となりうるため、医療機関で処方してもらうことも選択肢のひとつです。市販の保湿剤を使う場合は、香料・アルコール・防腐剤(パラベン等)が少ないものを選ぶと皮膚への刺激を抑えやすいとされています。ただし、市販品でも個人の皮膚状態との相性があるため、合わないと感じたら使用を中止し、医師に相談することをおすすめします。

アトピーの方の「化粧水」選びでは、アルコール(エタノール)フリーで、保湿成分(セラミド・グリセリンなど)を含むものが比較的刺激になりにくいとされています。ただし、化粧水だけでは油分が補えないため、その後にクリームや軟膏を重ねることが推奨されます。

4. 洗い方・低刺激の選び方

スキンケアは「塗る」だけでなく、「洗う」工程も重要です。洗いすぎると皮脂や天然保湿因子(NMF)が失われ、バリア機能がさらに低下する可能性があります。

洗浄料(石けん・ボディソープ)の選び方の考え方

  • 低刺激・弱酸性のものを選ぶと皮膚への負担が少ないとされています
  • 香料・着色料・防腐剤が少ないものが望ましいとされています
  • 固形石けんを使う場合は、よく泡立ててから塗布し、すすぎ残しがないよう注意します
  • 洗浄料が合っているかどうかは個人差があるため、使用後に赤みやかゆみが出る場合は変更を検討してください

洗い方のポイント

  • ナイロンタオルや硬いスポンジでのこすり洗いは避ける(摩擦が皮膚を傷つけます)
  • 泡をやさしく皮膚にのせるように洗う
  • すすぎはぬるめのお湯でしっかり行う(熱いお湯はかゆみを誘発しやすいとされています)
  • タオルで拭く際も、押さえるように優しく水分をとる

かゆみ・湿疹の繰り返しは皮膚科へ

アトピー性皮膚炎は適切な治療で症状のコントロールが期待できます。皮膚科専門医・アレルギー専門医が、外用・内服・注射・紫外線療法の中から保険診療を中心にご提案します。お気軽にご相談ください。

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5. 季節・部位ごとのスキンケアの工夫

アトピー性皮膚炎の症状は季節や部位によって変化しやすいため、スキンケアも状況に応じた工夫が求められます。

季節ごとの注意点

季節主なリスクスキンケアの工夫
冬・空気が乾燥する時期乾燥による皮膚バリア低下保湿剤の量・回数を増やす、加湿器の活用
夏・汗をかく時期汗・蒸れによる刺激汗をやさしくふき取る、通気性の良い衣類を選ぶ
春・秋(花粉の時期)花粉などの外来抗原外出後は顔を洗う、衣類についた花粉を払う

部位ごとの工夫

顔は皮膚が薄く敏感なため、体幹と同じ保湿剤が合わない場合もあります。顔のアトピーケアについては顔のアトピー専門記事で詳しく解説しています。肘の内側・膝の裏など関節部分は摩擦が起きやすいため、保湿剤を丁寧に塗布することが重要です。手は水仕事などで洗浄料にさらされやすいため、洗うたびに保湿する習慣が推奨されます。

6. スキンケアだけで難しいときは薬物治療へ

保湿・スキンケアはアトピー性皮膚炎の治療において非常に重要ですが、スキンケアだけで炎症のコントロールが難しい場合は、薬物治療との組み合わせが必要とされています。「保湿をしているのにかゆみや湿疹が続く」「皮膚が赤くなってきた」という場合は、スキンケアの見直しとともに医師への相談を検討してください。

千里中央花ふさ皮ふ科では、皮膚科専門医・アレルギー専門医のダブル資格を持つ医師が、外用薬(ステロイド・タクロリムス・JAK外用薬など)・内服薬・生物学的製剤(注射)・紫外線療法を症状や重症度に応じて組み合わせた治療を行っています。これらはいずれも公的医療保険の適用対象となりうる治療です(適応要件・費用の詳細は診察でご確認ください)。薬物治療の詳細についてはアトピーの薬物治療記事をご参照ください。

こんなときは早めに受診を
・保湿を続けているが湿疹・かゆみが2週間以上続く
・皮膚が赤く腫れている、または液体がにじみ出ている
・夜間のかゆみで眠れない
・市販の保湿剤を使ったら悪化した
・子どもの皮膚が急に悪化した

7. まとめ

まとめ|アトピーの保湿・スキンケアのポイント

アトピー性皮膚炎における保湿・スキンケアは、皮膚バリア機能を補い、炎症の悪循環を断ち切るための重要な土台です。症状の有無にかかわらず継続することが大切です。

  • タイミング:入浴後5〜10分以内に塗るのが効果的
  • :フィンガーチップユニット(FTU)を目安に、しっかりのせる
  • 回数:1日2回を基本に、乾燥が強い時は増やす
  • 洗い方:低刺激の洗浄料を使い、こすらずやさしく洗う
  • 保湿剤の選択:処方保湿剤(保険適用の可能性あり)と市販品を上手に活用
  • 季節・部位:冬は保湿を強化、夏は汗対策、顔は特に慎重に
  • スキンケアで改善しない場合:薬物治療との組み合わせを医師に相談

最終的な診断・治療方針は必ず医師の診察を受けたうえで判断ください。千里中央・豊中・吹田エリアの方は、千里中央駅から徒歩約5分の千里中央花ふさ皮ふ科(皮膚科専門医・アレルギー専門医)へお気軽にご相談ください。

千里中央でアトピーのご相談は花ふさ皮ふ科へ

アトピー性皮膚炎は、症状や重症度に応じて外用薬・内服薬・注射(生物学的製剤)・紫外線療法など幅広い治療があります。皮膚科専門医・アレルギー専門医が保険診療を中心に、お一人おひとりに合った治療をご提案します。

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FAQ(よくある質問)

Q1:アトピーの保湿剤はどのくらいの量を塗ればよいですか?

A.
クリームや軟膏の場合、「フィンガーチップユニット(FTU)」という目安があります。人差し指の第一関節分(約0.5g)が手のひら2枚分の面積に相当します。「薄く伸ばす」より「しっかりのせる」イメージで塗ることが推奨されています。ただし、適切な量は剤型や皮膚の状態によって異なるため、担当医や薬剤師にご確認ください。

Q2:市販の保湿クリームと処方の保湿剤、どちらを使えばよいですか?

A.
どちらが優れているとは一概には言えません。処方保湿剤(医薬品)は公的医療保険の適用対象となりうるため、費用面での利点があります。市販品は種類が豊富で使用感を選びやすい利点があります。アトピー性皮膚炎の治療中は、まず医師に相談のうえ処方保湿剤を基本とし、必要に応じて市販品を補助的に活用するのが一般的です。香料・アルコール・防腐剤が少ないものを選ぶと刺激になりにくいとされています。

Q3:アトピーに化粧水は使ってもよいですか?

A.
化粧水の使用自体は問題ありませんが、アルコール(エタノール)フリーで、セラミドやグリセリンなどの保湿成分を含むものが比較的刺激になりにくいとされています。ただし、化粧水だけでは油分が補えないため、その後にクリームや軟膏を重ねることが推奨されます。使用後に赤みやかゆみが出た場合は中止し、医師に相談してください。

Q4:保湿をしているのにかゆみが続きます。どうすればよいですか?

A.
保湿・スキンケアはアトピーの治療の土台ですが、炎症が起きている状態ではスキンケアだけでコントロールが難しい場合があります。かゆみや湿疹が2週間以上続く場合は、外用薬(ステロイド・タクロリムス・JAK外用薬など)や内服薬などの薬物治療との組み合わせを検討するため、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。

Q5:保湿剤はいつまで続けるべきですか?症状がよくなったらやめてもよいですか?

A.
アトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いている時期も保湿を継続することが推奨されています。バリア機能の低下は症状がない時期にも続いている場合があり、保湿をやめると再燃しやすくなる可能性があります。「良くなったからやめる」のではなく、「良い状態を維持するために続ける」という考え方が大切です。いつまで・どのくらいの頻度で続けるかは、担当医と相談しながら決めていきましょう。

Q6:子どものアトピーにも大人と同じ保湿剤を使ってよいですか?

A.
子どもの皮膚は大人より薄くデリケートなため、使用する保湿剤の成分・剤型には注意が必要です。特に乳幼児では、医師に処方された保湿剤を使うのが安心です。市販品を使用する場合も、子ども向けに設計された低刺激なものを選び、使用前に少量でパッチテストを行うことをおすすめします。不安な場合は小児の皮膚科診療経験のある医師に相談してください。