円形脱毛症とは、毛包(もうほう:毛をつくる組織)が自分自身のリンパ球に攻撃される自己免疫の関与が主と考えられている病気で、ある日突然、コインのような円形・楕円形の脱毛斑があらわれるのが特徴です1。
かつては「自然に治るのを待つしかない」と感じていた方も多かったかもしれませんが、近年では脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の円形脱毛症に対して保険適用となったJAK阻害薬(飲み薬)が登場し、治療の選択肢が大きく広がっています。本記事では、ステロイド外用薬(塗り薬)を基本とした治療の流れから、JAK阻害薬(リットフーロ・オルミエント)、紫外線療法まで、皮膚科専門医・アレルギー専門医の立場から正確にご説明します。効果・経過には個人差があるため、詳しい治療方針は医師の診察でご確認ください。
目次
1. 円形脱毛症とは?原因・症状・病型
円形脱毛症は、自己免疫の関与が主体と考えられている脱毛疾患です。本来、外敵から体を守るはずの免疫システムが、誤って毛包を攻撃してしまうことで脱毛が起こります1。痛みやかゆみは乏しいことが多く、気づかないうちに脱毛斑が広がっているケースもあります。性別・年齢を問わず発症し、お子さんにもみられる病気です。
主な原因・誘因
自己免疫の関与が主体ですが、ストレスは発症や悪化の「誘因」になりうるとされており、唯一の原因とは断定されていません。アトピー素因、甲状腺疾患などほかの自己免疫疾患、家族内での発症(体質的な素因)が関わることもあるとされています。
病型(重症度)の分類
| 病型 | 特徴 | 経過の目安 |
|---|---|---|
| 単発型 | 脱毛斑が1つ | 自然に軽快することも多い |
| 多発型 | 脱毛斑が複数 | 治療が必要なことが多い |
| 蛇行型(じゃこうがた) | 生え際が帯状に脱毛 | 治りにくい傾向がある |
| 全頭型 | 頭部全体が脱毛 | 長引くことがある |
| 汎発型 | 全身の毛が脱毛 | 重症・長期化しやすい |
円形脱毛症は「うつる」病気ではありません。感染症ではないため、人から人へ感染することはありません。フケや白癬菌(カビ)による脱毛とは原因・仕組みが異なります。
2. 円形脱毛症の薬・治療法一覧
円形脱毛症の治療は、病型・重症度・経過に合わせて段階的に選択・組み合わせて行われます。以下に主な治療法を整理します。
| 治療法 | 主な対象 | 公的医療保険 |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬(塗り薬) | 軽症〜中等症 | 適用あり |
| JAK阻害薬内服(リットフーロ・オルミエント) | 脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合/12歳以上 | 適用あり(※条件あり)23 |
| 紫外線療法(エキシマライト) | 塗り薬・内服で効果不十分な部位 | 適用あり5 |
| ステロイド局所注射 | 外用薬で効果が不十分な脱毛部位 | 適用あり(※「円形脱毛症(悪性型に限る)」)4 ※当院では実施していません |
| 局所免疫療法(SADBE/DPCPなど) | 難治例 | 適用なし(自費診療) ※当院では実施していません |
※局所免疫療法に用いるSADBE・DPCPは国内で医薬品として承認されておらず、診療報酬点数表にも該当する点数が設定されていないため、実施施設では自費診療となります。
※公的医療保険適用の有無・条件は疾患の状態や薬剤によって異なります。詳細は診察でご確認ください。
3. ステロイド外用薬(塗り薬)の役割
円形脱毛症の治療において、ステロイド外用薬は基本となる治療薬です。炎症を抑え、免疫反応を局所的にコントロールすることで、毛包への攻撃を和らげる働きが期待されます。
ステロイド外用薬のポイント
- 脱毛斑に直接塗布する外用薬で、保険診療で処方されます
- 単発型など比較的軽症の場合には、まずステロイド外用薬から治療を開始するのが一般的です
- 皮膚の薄い部位への長期使用では、皮膚が薄くなる・毛細血管が浮き出るなどの副作用が生じることがあります
- 効果・発毛の経過には個人差があり、すぐに発毛が見られるとは限りません
ステロイド外用薬は自己判断で市販品を選んで使用するのではなく、脱毛の部位・広さ・病型に応じて医師が適切な強さ・使用法を処方することが大切です。
4. JAK阻害薬(飲み薬)リットフーロ・オルミエントとは
近年、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の円形脱毛症に対してJAK阻害薬(JAKインヒビター)の内服薬が保険適用となり、治療の選択肢が大きく広がりました。千里中央・豊中・吹田エリアでも関心が高まっている治療薬です。
JAK阻害薬とは何か
JAK(ヤヌスキナーゼ)とは、免疫細胞のシグナル伝達に関わる酵素です。円形脱毛症では、このJAKを介した炎症シグナルが毛包への免疫攻撃に関与していると考えられています。JAK阻害薬はこのシグナルを阻害することで、毛包への攻撃を抑える働きが期待される内服薬です。
主なJAK阻害薬の種類
| 販売名 (一般名) | 対象年齢 | 効能・効果/特徴 |
|---|---|---|
| リットフーロ (リトレシチニブ) | 成人および12歳以上の小児2 | 円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)。JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬。1日1回内服。 |
| オルミエント (バリシチニブ) | 成人および12歳以上かつ体重30kg以上の小児3 | 円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)。JAK1/JAK2阻害薬。1日1回内服。 |
※いずれも脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の円形脱毛症に対して公的医療保険が適用されますが、上記のとおり適応には条件があります。12歳未満のお子さんは対象外です。費用・適応の詳細は診察でご確認ください。
JAK阻害薬の注意点・副作用
- 感染症(上気道炎・帯状疱疹など)のリスクが上昇することがあります
- 血液検査などの定期的なモニタリングが必要です
- 妊娠中・授乳中の方、特定の既往症がある方は使用できない場合があります
- 効果・発毛の程度・期間には個人差があります。すぐに発毛が見られるとは限りません
- 治療の継続・中止の判断は医師と相談しながら行います
【やってはいけないNG行動】
- 医師の処方なしにJAK阻害薬を入手・使用しようとする
- 副作用が疑われる症状(発熱・感染症の兆候など)が出た際に自己判断で服用を続ける
- 定期的な血液検査などのフォローアップを受けずに内服を継続する
5. 紫外線療法(エキシマライト)の位置づけ
塗り薬や内服薬で効果が不十分な脱毛部位に対しては、紫外線療法(エキシマライト)も治療の選択肢となります。特定の波長の紫外線を照射することで、局所の免疫反応を調整し、発毛を促す効果が期待されます。
- 中波紫外線療法(308nm以上313nm以下)は診療報酬点数表の算定対象疾患に円形脱毛症が含まれており、保険診療で受けられます5
- ステロイド外用薬やJAK阻害薬と組み合わせて行うこともあります
- 照射部位・回数・効果は個人差があります
- 日焼け様の赤みなどの副作用が生じることがあります
詳しくは紫外線療法(エキシマライト)の詳細もご参照ください。
6. 受診の目安・こんな症状はすぐ相談を
以下のような場合は、早めに皮膚科・アレルギー科への受診をおすすめします。
- 突然、円形・楕円形の脱毛斑に気づいた
- 脱毛斑が複数あるか、広がってきている
- 生え際・眉毛・まつ毛など、頭部以外にも脱毛が見られる
- 市販薬や民間療法を試したが改善が見られない
- お子さんに脱毛斑が見られる
- 以前に円形脱毛症と診断されたが、再発・悪化した
円形脱毛症は病型・重症度によって治療法が異なります。自己判断での放置や市販品のみでの対処は、治療開始が遅れる原因になる場合があります。気になる症状があれば、まず皮膚科専門医にご相談ください。
7. 花ふさ皮ふ科グループでの円形脱毛症診療
花ふさ皮ふ科グループでは、千里中央・豊中・吹田・江坂・箕面エリアの患者さまの円形脱毛症に、保険診療で対応しています。
当グループの診療の流れ
- まずステロイド外用薬(塗り薬)を基本として、病型・重症度・経過に合わせた処方を行います
- 外用薬で効果が不十分な場合や、進行・重症の例にはJAK阻害薬の内服(リットフーロ〔リトレシチニブ〕・オルミエント〔バリシチニブ〕など)を検討します(12歳以上が対象です)
- 塗り薬・内服で効果が不十分な脱毛部位には紫外線療法(エキシマライト)も選択肢となります(紫外線療法(エキシマライト)の詳細)
- 複数の治療を組み合わせ・段階的に進めることがあります
理事長の花房崇明医師(皮膚科専門医・アレルギー専門医・難病指定医)のもと、外用から内服・紫外線まで段階的に対応できる体制を整えています。適応・費用・副作用については、診察の際に詳しくご説明します。
| 院名 | エリア | アクセス |
|---|---|---|
| 千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 | 豊中市上新田(千里中央・豊中・吹田) | 千里中央駅から徒歩約5分・駐車場9台完備 |
| 江坂駅前花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 | 吹田市江の木町(江坂) | 江坂駅から徒歩約1分 |
| みのお花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 | 大阪府箕面市西宿(箕面・茨木・池田) | 箕面萱野駅直結 |
円形脱毛症の診療は、花ふさ皮ふ科グループ3院で受けられます
- 千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(千里中央・豊中・吹田)
- 江坂駅前花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(江坂駅から徒歩約1分・吹田)
- みのお花ふさ皮ふ科・美容皮膚科(箕面萱野駅直結・箕面・茨木・池田)
いずれも理事長・皮膚科専門医/アレルギー専門医・難病指定医の監修のもと、ステロイド外用薬による保険診療に対応。効果が不十分な場合や進行・重症例には、JAK阻害薬の内服や紫外線療法(エキシマライト)にも対応しています。通いやすい院をお選びいただけます。
8. まとめ
まとめ|円形脱毛症の薬・治療について皮膚科専門医にご相談を
円形脱毛症は自己免疫の関与が主体とされる脱毛疾患で、病型・重症度によって治療法が異なります。近年はJAK阻害薬という新しい飲み薬の選択肢が加わり、難治例にも保険診療で対応できる幅が広がっています。
- 基本治療:ステロイド外用薬(塗り薬)が第一選択。保険診療で処方されます
- 難治例:JAK阻害薬内服(リットフーロ・オルミエント)が保険適用の選択肢に。脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合が対象で、12歳以上に限られます
- 補助療法:紫外線療法(エキシマライト)を組み合わせることもあります
- 効果・経過には個人差があり、複数の治療を段階的に組み合わせることがあります
- 感染症ではないため人にうつることはありませんが、早めの専門医受診が大切です
最終的な診断・治療方針は医師の診察によって判断されます。千里中央・豊中・吹田・江坂・箕面エリアで円形脱毛症にお悩みの方は、花ふさ皮ふ科グループへお気軽にご相談ください。
円形脱毛症についてもっと知る(関連記事)
FAQ(よくある質問)
Q1:円形脱毛症の薬(飲み薬)は保険で使えますか?
A.
JAK阻害薬(リットフーロ〔リトレシチニブ〕・オルミエント〔バリシチニブ〕)は、「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」という条件で公的医療保険が適用される内服薬です。適応には条件があり、すべての方に処方できるわけではありません。費用・適応の詳細は診察でご確認ください。
Q2:リットフーロとオルミエントはどう違いますか?
A.
リットフーロ(リトレシチニブ)はJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬、オルミエント(バリシチニブ)はJAK1/JAK2阻害薬で、作用機序が異なります。いずれも1日1回内服で、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の円形脱毛症に保険適用となっています。対象年齢はどちらも12歳以上ですが、オルミエントには体重30kg以上という条件もあります。どちらが適しているかは、患者さまの状態・既往症・他の治療歴などを踏まえて医師が判断します。
Q3:円形脱毛症は人にうつりますか?
A.
円形脱毛症は感染症ではないため、人から人へうつることはありません。白癬菌(カビ)による脱毛(白癬)とは原因・仕組みが全く異なります。家族やパートナーへの感染を心配する必要はありません。
Q4:ストレスが原因で円形脱毛症になりますか?
A.
ストレスは円形脱毛症の発症や悪化の「誘因」になりうるとされていますが、唯一の原因とは断定されていません。円形脱毛症の主な原因は自己免疫の関与と考えられており、アトピー素因・甲状腺疾患などほかの自己免疫疾患・体質(家族内発症)なども関わることがあります。
Q5:子どもの円形脱毛症にも薬(JAK阻害薬)は使えますか?
A.
円形脱毛症は子どもにも起こりうる病気ですが、JAK阻害薬の内服(リットフーロ・オルミエント)はいずれも12歳以上が対象で、12歳未満のお子さんは対象外です(オルミエントは体重30kg以上という条件もあります)。12歳未満の場合はステロイド外用薬などによる治療が中心となります。年齢・体重・症状を踏まえて医師が適切な治療法を判断しますので、まず皮膚科専門医にご相談ください。
Q6:円形脱毛症の治療はどのくらいの期間かかりますか?
A.
治療期間・発毛の経過には個人差が大きく、病型や重症度によっても異なります。単発型の小さな脱毛斑は自然に軽快することもありますが、多発型・全頭型・汎発型は長期にわたる治療が必要になることがあります。「いつまでに治る」と断言することは難しく、定期的な診察で経過を確認しながら治療方針を調整していきます。
Q7:脱毛斑が1つだけの場合も受診すべきですか?
A.
単発型の小さな脱毛斑は自然に軽快することもありますが、放置している間に脱毛斑が増えたり広がったりするケースもあります。円形脱毛症かどうかの正確な診断(白癬など他の脱毛疾患との鑑別を含む)のためにも、気になる脱毛斑に気づいた際は早めに皮膚科専門医を受診することをおすすめします。
参考文献
1. 円形脱毛症診療ガイドライン策定委員会. 円形脱毛症診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌. 2024;134(10):2491-2526. doi:10.14924/dermatol.134.2491
▶ 日本皮膚科学会による最新の診療指針。自己免疫の関与、単発型・多発型・蛇行型・全頭型・汎発型といった病型分類、各治療法の推奨度が示されている。
2. ファイザー株式会社. リットフーロカプセル50mg(リトレシチニブ)電子添文. https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070919
▶ 効能・効果は「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」。用法・用量に「成人及び12歳以上の小児」と明記されている。
3. 日本イーライリリー株式会社. オルミエント錠(バリシチニブ)電子添文. https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00072022
▶ 円形脱毛症に対する効能・効果は「ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る」。用法・用量は「成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児」。
4. ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL(トリアムシノロンアセトニド)電子添文. https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052573
▶ 局所皮内注射の効能・効果に「円形脱毛症(悪性型に限る)」があり、「外用剤を用いても効果が不十分な場合あるいは十分な効果を期待し得ないと推定される場合にのみ用いること」と限定されている。
5. 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について(医科診療報酬点数表 J054 皮膚科光線療法). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
▶ 中波紫外線療法(308nm以上313nm以下)の算定対象疾患として「円形脱毛症」が挙げられている。一方、局所免疫療法(SADBE・DPCP)に該当する点数は設定されていない。
最終確認日:2026年8月18日(各出典はDOIまたは発行元サイトで内容を確認済み)













