粉瘤(ふんりゅう)の手術と聞くと、「どんな方法で取るの?」「傷が小さいほうがいいの?」と気になる方が多いものです。粉瘤の手術には主に「くり抜き法」「切除法」の2つがあります。結論として、どちらが優れているということはなく、粉瘤の状態に合った方法を選ぶことが大切です。この記事では、2つの術式の違い・メリット・デメリット・どちらが向いているかを、報告されている比較試験のデータもふまえて皮膚科専門医が解説します。

監修者:花房 崇明

監修医師

理事長:花房 崇明(はなふさ たかあき)

[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院) / 日本皮膚科学会皮膚科専門医

・日本アレルギー学会アレルギー専門医 / 日本抗加齢医学会専門医

・難病指定医

[ 所属学会 ]

・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会 / 日本臨床皮膚科医会 / 日本美容皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会 等

目次

1. 粉瘤の手術方法は2種類【結論】

粉瘤の手術方法(結論)

  • 主な術式は「くり抜き法」と「切除法」の2つ
  • いずれも原因である袋(嚢腫壁)を取り除く手術
  • くり抜き法は傷が小さい/切除法は袋を確実に取りきりやすい
  • 粉瘤の大きさ・部位・炎症の有無で適した方法が変わる
  • 赤く腫れている「炎症性粉瘤」は、まず炎症を鎮めてから摘出するのが一般的

「傷が小さいくり抜き法が常にベスト」というわけではありません。大切なのは、その粉瘤に合った方法を選び、袋を残さず取りきることです。袋が残ると再発の原因になることが指摘されています4

2. くり抜き法とは

くり抜き法(へそ抜き法・最小切開法)は、専用の円筒状の器具(パンチ)で数mmの小さな穴をあけ、そこから粉瘤の中身と袋を取り出す方法です1

  • 傷が数mmと小さく済む
  • 縫合しない、または最小限の縫合で済むことが多い
  • 比較的小さく、炎症のない粉瘤に向いている

傷が小さいため傷跡が目立ちにくいのが大きな利点ですが、どんな粉瘤にも使えるわけではありません。

3. 切除法とは

切除法(切除縫合術)は、粉瘤を含む皮膚を紡錘形(細長い形)に切開し、袋ごと取り除いて縫合する方法です。

  • 袋の全体をしっかり確認しながら取り除ける
  • 大きい粉瘤や、炎症を起こしたことのある粉瘤にも対応できる
  • 線状の傷跡が残るが、袋を確実に取りきりやすい

傷跡は線状に残りますが、形成外科の技術で丁寧に縫合することで、目立ちにくく仕上げることを目指します。

4. メリット・デメリット比較

項目 くり抜き法 切除法
傷の大きさ 数mmと小さい 線状(粉瘤の大きさによる)
向いている粉瘤 小さく炎症のない粉瘤 大きい粉瘤・炎症を起こしたことのある粉瘤
袋の取りきりやすさ 小さな穴から行うため、状態によっては取り残しのリスク 全体を確認でき、確実に取りきりやすい
縫合・抜糸 不要〜最小限のことが多い 縫合あり・後日抜糸

報告されているデータ

小さく炎症のない粉瘤を対象とした複数の比較試験では、くり抜き法(最小切開法)と切除法とで再発率に大きな差はなく、くり抜き法のほうが手術時間が短く、傷跡も小さいと報告されています1,2,3

ただし、注意が必要な点があります。これらの試験は、いずれも「破れていない・炎症を起こしていない」粉瘤に限って行われており、対象の大きさもおおむね3cm以下でした2,3大きい粉瘤や炎症した粉瘤にも同じように使えることを示したデータはありません。これが、粉瘤の状態によって術式を選び分ける理由です。

くり抜き法のデメリットは、大きい粉瘤・炎症した粉瘤には不向きで、無理に行うと袋の取り残し=再発につながりうることです。再発してもう一度手術になれば、かえって傷跡も増えてしまいます。再発については粉瘤の再発・予防の記事もご覧ください。

5. どちらの手術が向いている?

どちらの術式が適しているかは、粉瘤の大きさ・部位・炎症の有無によって決まります。

  • 小さく、炎症のない粉瘤……くり抜き法が向いていることが多い
  • 大きい粉瘤、炎症を起こした(起こした経験のある)粉瘤……切除法で確実に取りきるのが向いている
  • 顔など目立つ部位……傷跡を考慮し、部位に応じて適した方法を選択

赤く腫れているとき(炎症性粉瘤)の考え方

粉瘤が赤く腫れて痛みが出ている状態では、その場ですぐに袋を摘出するのではなく、まず切開して膿や内容物を出し(切開排膿)、必要に応じて抗菌薬などで炎症を落ち着かせるのが一般的です4。炎症が治まってから、あらためて袋を摘出する手術を行います。

炎症を起こしている最中は、周囲の組織との境目が分かりにくく、袋も破れていることが多いため、無理に摘出しようとすると袋が残りやすくなります。炎症が落ち着いたあとの摘出では、癒着があることを考慮して袋を確実に取りきれる切除法が選ばれやすくなります。

腫れて痛むときは、我慢せず早めにご相談ください。放置すると炎症が広がり、結果として傷跡が大きくなることがあります。

当院では、診察と超音波(エコー)検査で袋の大きさや深さ・範囲を確認したうえで5、一人ひとりに適した術式をご提案します。傷跡について詳しくは粉瘤の手術跡・傷跡の記事をご覧ください。

6. 粉瘤手術の流れ

当院の粉瘤手術(日帰り・保険適用)のおおまかな流れです。

ステップ 内容
1. 診察・エコー検査 粉瘤の診断、大きさ・深さ・範囲の確認、術式の決定
2. 局所麻酔 手術部位に麻酔。痛みを感じるのは主にこのとき
3. 手術(袋の摘出) くり抜き法または切除法で袋ごと取り除く。10〜30分程度が目安
4. 縫合・処置 必要に応じて縫合。当日は帰宅可能
5. 通院・抜糸 切除法では後日抜糸。経過を確認

※所要時間は粉瘤の大きさ・部位・状態によって異なります。目安としてお考えください。

手術の痛みや費用については、粉瘤の手術は痛い?の記事粉瘤手術の費用の記事で詳しく解説しています。

7. 大阪・千里中央で粉瘤治療なら花ふさ皮ふ科

千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科グループでは、皮膚科医と形成外科医によるハイブリッド診療で粉瘤を治療しています。

  • エコー検査で袋の範囲を確認し、適した術式を選択
  • くり抜き法・切除法の両方に対応
  • 傷跡に配慮した日帰り手術・形成外科専門医が在籍
  • 大阪府内に3院・24時間WEB予約に対応
医院 アクセス 電話
千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 「千里中央」駅より徒歩約5分 050-5212-5052
江坂駅前花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 「江坂」駅より徒歩約1分 06-6368-1200
みのお花ふさ皮ふ科・美容皮膚科 「箕面萱野」駅直結 072-737-9912

8. まとめ

まとめ|手術方法は、粉瘤の状態に合わせて選ぶ

  • くり抜き法:傷が小さい。小さく炎症のない粉瘤向き
  • 切除法:袋を確実に取りきりやすい。大きい・炎症した粉瘤向き
  • 小さく炎症のない粉瘤では再発率に大きな差はないとの報告がある一方、大きい粉瘤・炎症粉瘤での比較データはない
  • 「傷の小ささ」だけで選ばない:取り残し=再発を防ぐことが大切
  • 赤く腫れているときは、まず炎症を鎮めてから摘出するのが一般的
  • エコー検査で状態を確認し、医師と相談して術式を決める

最終的な診断・治療方針は必ず医師の診察を受けたうえでご判断ください。本記事は花房 崇明 理事長(医学博士・皮膚科専門医)の監修のもと作成しています。

当院の特徴:皮膚科専門医と形成外科専門医の連携

千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科では、皮膚科専門医と形成外科専門医が連携して粉瘤の診療にあたります。皮膚科専門医が診断・他疾患との鑑別(脂肪腫や悪性腫瘍など)を行い、手術が必要な場合は形成外科専門医が整容面(傷跡を目立ちにくくする縫合)に配慮した切除を担当します。顔など目立つ部位・大きい粉瘤・炎症を繰り返す例では、両科の連携が特に有用です。最終的な診断・治療方針は医師の診察のうえで判断します。

粉瘤について、当院の医師が動画で解説しています

FAQ(よくある質問)

Q1:粉瘤の手術にはどんな方法がありますか?

A.
粉瘤の手術には主に「くり抜き法(へそ抜き法)」と「切除法(切除縫合術)」の2つの方法があります。いずれも原因である袋を取り除く手術で、粉瘤の大きさ・部位・炎症の有無に応じて適した方法を選びます。

Q2:くり抜き法とはどんな手術ですか?

A.
くり抜き法は、専用の円筒状の器具(パンチ)で数mmの小さな穴をあけ、そこから粉瘤の中身と袋を取り出す方法です。傷が小さく済むのが特長で、比較的小さく炎症のない粉瘤に向いています。

Q3:くり抜き法と切除法、どちらがよいですか?

A.
どちらが優れているということではなく、粉瘤の状態によって適した方法が異なります。小さく炎症のない粉瘤を対象とした比較試験では、くり抜き法(最小切開法)と切除法で再発率に大きな差はなく、くり抜き法のほうが手術時間が短く傷跡も小さいと報告されています。一方、これらの試験は破れていない・炎症のない、おおむね3cm以下の粉瘤を対象としており、大きい粉瘤や炎症した粉瘤には袋を確実に取りきれる切除法が向いています。診察のうえ医師が適した方法を提案します。

Q4:くり抜き法のデメリットは何ですか?

A.
くり抜き法は傷が小さい一方で、大きい粉瘤や炎症した粉瘤には不向きです。小さな穴から袋を取り出すため、無理に行うと袋の取り残しが起こり、再発のリスクが高まることがあります。粉瘤の再発を防ぐうえでは袋(嚢腫壁)を残さず取りきることが重要とされており、粉瘤の状態に合っていることが前提の方法です。

Q5:粉瘤の手術は縫いますか?抜糸は必要ですか?

A.
切除法では傷を縫合するため、後日抜糸が必要です。くり抜き法は傷が小さく、縫合しない・最小限の縫合で済むことが多く、抜糸が不要な場合もあります。部位や大きさによって異なるため、診察時にご説明します。

Q6:手術方法は自分で選べますか?

A.
ご希望はお伺いしますが、粉瘤の大きさ・部位・炎症の有無によって適した術式は異なります。傷の小ささだけで選ぶと袋の取り残しにつながることもあるため、診察・エコー検査の結果をふまえ、医師とご相談のうえ決めることをおすすめします。

Q7:赤く腫れて痛い状態でも、その日に袋を取る手術はできますか?

A.
赤く腫れて痛みがある「炎症性粉瘤」の状態では、その場で袋を摘出するのではなく、まず切開して膿や内容物を出す処置(切開排膿)を行い、必要に応じて抗菌薬などで炎症を落ち着かせるのが一般的です。炎症が治まってから、あらためて袋を摘出する手術を行います。炎症時は周囲との境目が分かりにくく、無理に摘出すると袋が残りやすくなるためです。腫れて痛むときは我慢せず早めにご相談ください。

Q8:粉瘤の手術は保険適用ですか?時間はどれくらいかかりますか?

A.
粉瘤の摘出手術は健康保険が適用されます。手術自体にかかる時間は、粉瘤の大きさや部位によって異なりますが、おおむね10〜30分程度が目安です。日帰りで受けていただけます。費用は粉瘤の大きさや部位、保険の負担割合によって変わりますので、詳しくは診察時にご確認ください。

参考文献

  1. Lee HE, Yang CH, Chen CH, Hong HS, Kuan YZ. Comparison of the Surgical Outcomes of Punch Incision and Elliptical Excision in Treating Epidermal Inclusion Cysts: A Prospective, Randomized Study. Dermatologic Surgery. 2006;32(4):520-525.
    doi:10.1111/j.1524-4725.2006.32105.x
    ▶ パンチ(くり抜き)法と紡錘形切除法を直接比較した無作為化比較試験。手技の具体的な内容もあわせて記載されている。
  2. Alijanpour A, Alijanpour K, Alijanpour K. Comparison of the Surgical Outcomes of Minimal Excision and Elliptical Excision Techniques in Treating Epidermal Inclusion Cysts: A Prospective Randomized Study. Shiraz E-Medical Journal. 2018;19(3):e55936.
    doi:10.5812/semj.55936
    ▶ 最小切開法と紡錘形切除法の無作為化比較試験。再発率は2.8%対3.3%で有意差なし、手術時間は最小切開法が短かった。対象は破れていない・炎症のない3cm未満の粉瘤に限られる。
  3. Kim KT, Sun H, Chung EH. Comparison of complete surgical excision and minimally invasive excision using CO2 laser for removal of epidermal cysts on the face. Archives of Craniofacial Surgery. 2019;20(2):84-88.
    doi:10.7181/acfs.2018.02152
    ▶ 顔面の粉瘤における低侵襲摘出と完全切除の比較。再発率に有意差はなく(8.3%対3.3%)、低侵襲法は手術時間・瘢痕長で優れた。対象は直径0.5〜2.2cmの粉瘤。
  4. Weir CB, St.Hilaire NJ. Epidermal Inclusion Cyst. StatPearls. StatPearls Publishing; 2023年8月8日更新.
    NCBI Bookshelf NBK532310
    ▶ 「再発を減らすには嚢腫壁全体の摘出が最も重要」と明記。感染・波動を伴う場合はまず切開排膿を行うとされる。
  5. Hoang VT, Trinh CT, Nguyen CH, Chansomphou V, Chansomphou V, Tran TTT. Overview of epidermoid cyst. European Journal of Radiology Open. 2019;6:291-301.
    doi:10.1016/j.ejro.2019.08.003
    ▶ 粉瘤(表皮嚢腫)の画像診断の総説。超音波検査での典型的な所見と鑑別を示す。

最終確認日:2026年8月18日(各文献はDOI・PubMed・発行元サイトで実在および書誌情報を照合済み)

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