監修者
理事長:花房崇明
(はなふさ たかあき)
[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院)
・日本皮膚科学会皮膚科専門医
・日本アレルギー学会アレルギー専門医
・日本抗加齢医学会専門医
・難病指定医

[ 所属学会 ]

日本皮膚科学会
・日本アレルギー学会
・日本小児皮膚科学会
・日本抗加齢医学会
・日本美容皮膚科学会

目次

0. はじめに

何気なく耳たぶを触ったとき、ニキビのような小さな、押すと少し痛いしこりに気づいたことはありませんか?
これは多くの人が経験する症状ですが、痛みがあると「何か悪い病気では?」と不安になりますよね。
気になって、ついつい自分で潰したくなるかもしれません。
しかし、その行動はよくある間違いで、かえって症状を悪化させる可能性があります。
そのしこり、実はただのニキビではないかもしれないのです。

この記事では、耳たぶのしこりについて、
多くの人が知らない5つの重要な真実を皮膚科専門医が解説します。

正しい知識を身につけ、取り返しのつかない自体を避けましょう。

1. その正体、「ニキビ」じゃなくて粉瘤かも?皮膚の下に“皮膚の袋”が存在する

耳たぶにできるしつこいしこりの最も一般的な原因は、単純なニキビではなく、
「粉瘤(ふんりゅう、アテローム、アテローマ)」と呼ばれる良性の腫瘍です。

ニキビ粉瘤両者の決定的な違いは、その構造にあります。
ニキビは毛穴が炎症を起こしたものですが、
粉瘤は皮膚の下に皮膚と同一の成分による袋状の構造ができてしまい、
その中に古い角質や皮脂といった老廃物が少しずつ溜まっていく良性の腫瘍(できもの)です。

ニキビは自然に治ることもあります。

一方で粉瘤には、表面に黒い点(開口部)が見られることがあり、
放置しても自然に治ることはありません。この皮膚と同一の成分の「袋」が存在するため、
ニキビとは全く異なるアプローチが必要になるのです。

ただし、耳たぶのしこりは粉瘤だけではありません。
ピアスの炎症が原因の「ケロイド」や、風邪などをきっかけに起こるリンパ節の腫れ、
「リンパ節炎」なども考えられます。
それぞれ治療法が全く異なるため、自己判断せずに皮膚科専門医の診断を仰ぐことが重要です。

項目 ニキビ 粉瘤(アテローム)
原因 毛穴の炎症 皮膚の下に袋状の構造ができる
見た目 赤く腫れることが多い しこり状、黒い点が見えることも
自然治癒 治ることがある 自然には治らない
治療 外用薬・内服薬 袋ごと取り除く治療が必要

2. 潰しても治らない!粉瘤根治のカギは皮膚の「袋」の完全切除

粉瘤によるしこりを自分で強く押したり潰したりしても、根本的な治療にはなりません。
圧迫すると、独特のにおいのある白〜黄色のペースト状の内容物が出てくることがありますが、
原因となっている袋そのもの(腫瘍壁、嚢腫壁)は皮膚の下に残ったままです。
この袋が残っている限り、皮脂や角質などの老廃物は再び溜まり始め、必ず再発します。
それだけでなく、自分で圧迫して潰す行為は、そこから細菌感染などの炎症反応を引き起こして炎症を悪化させたり、
治った後も半永久的に残る瘢痕(傷跡)を残したりする大きなリスクを伴います。
粉瘤を根本的に治療する(根治させる)唯一の方法は、手術によって原因である袋を完全に取り除くことです。
この手術は一般的に健康保険が適用になります。

 

 

3. 赤く腫れたら要注意!治療が「2段階」になるサイン

粉瘤が細菌が感染したり、自分の体が粉瘤を異物と認識して炎症反応が起きると、「炎症性粉瘤」という状態になります。
こうなると、しこりは赤く腫れ上がり、痛みや熱感といった症状が現れ、触れるだけで強く痛むようになります。
ここで重要なのは、炎症を起こしてしまうと、すぐに袋を取り除く根治手術ができなくなってしまうという点です。
治療は以下の2段階のプロセスが必要になります。

1. 第一段階(応急処置):

まずは炎症を抑えることが最優先です。
皮膚科や形成外科で皮膚を少し(5mm-10mm程度)切開し、
溜まった膿を出す処置(切開排膿)を行います。
痛みを和らげるための鎮痛剤、感染や炎症を鎮めるために抗菌薬が処方されることもあります。

2. 第二段階(根治術):

炎症が完全に治まった後(通常1-3ヶ月程度後)、改めて袋を取り除くための根治手術を行います。

 

つまり、炎症を起こす前に受診すれば1回の手術で済むものが、
放置して炎症させてしまうと治療が2段階になり、時間もかかってしまい、
また一度炎症を起こした粉瘤は周囲組織と癒着してしまうので、
手術の切開創(皮膚の傷跡)が通常より大きくなってしまう可能性があります。

 

4. 原因はピアスかも?おしゃれの裏に潜むリスク

耳たぶの粉瘤は、ピアスが原因で発生することがあります。
そのメカニズムは、ピアスを開けた際に傷(ピアス創の皮膚)の一部の皮膚が皮膚の中に入り込み、
それが袋の壁を形成してしまうというものです。
また、ピアスは粉瘤だけでなく、「ケロイド」の原因にもなり得ます。
ケロイドは、傷が治る過程で線維成分が過剰に作られ、
元の傷の範囲を超えて赤く硬く盛り上がる良性腫瘍で、
痛みやかゆみを伴うこともあります。
特に、ケロイド体質の方では、金属アレルギー、ピアスの着脱時に繰り返される小さな傷、
就寝時の圧迫などが引き金となり、過剰な治癒反応が起きてしまうのです。
ピアスホール周辺の腫れやしこりが繰り返される場合は、
こうしたリスクを念頭に置き、早めに専門医に相談することが大切です。

 

5. 手術は意外とシンプル?「くり抜き法」なら傷跡も最小限に

「手術」と聞くと、大掛かりで怖いイメージを持つかもしれませんが、心配は要りません。
近年、粉瘤の治療では「くり抜き法」(へそ抜き法とも呼ばれます)という、
患者さんの負担が少ない低侵襲な手術を行うこともあります。
この方法は、粉瘤の中心に専用の器具で小さな丸い穴を開け、
そこから内容物と原因である袋を抜き取るというものです。
従来の皮膚を切開する方法に比べて傷跡が小さいという大きなメリットがあります。
多くの場合、局所麻酔による日帰り手術で、手術時間も10分〜30分程度で終わります。

ただし、この方法にも注意点があります。
くり抜き法では粉瘤の「壁」「袋」を取り残してしまうことがあり、
従来の皮膚を切開して粉瘤を摘出する場合に比べて粉瘤が再発するリスクが高いと言うことです。

 

くり抜き法を選択するか、従来の切開法を選択するかは主治医の先生と相談してください。

 

6. まとめ:気になったら、まずは専門医へ相談を

耳たぶのしこり、特に痛みを伴うものは、自己判断で潰したり放置したりせず、
皮膚科専門医に相談することが非常に重要です。
早期の相談が、きれいで簡単な治療への一番の近道です。
その小さなしこりがもたらす日々の不安を解消し、安心を手に入れるために、
まずは皮膚科専門医に診せてみませんか?

気になるお悩みのある方は、千里中央花ふさ皮ふ科・美容皮膚科の皮膚科診療をご予約ください。

 

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