粉瘤(アテローム)の治療法をネットで調べると、「くり抜き法」が最善、最良の選択肢として紹介されているのをよく目にします。「傷跡が小さい」「日帰りで短時間」といった患者様にとって魅力的な言葉が並び、多くのクリニックが最新治療として推奨しています。

 

しかし、その華やかな宣伝の裏には、あまり語られていない事実があることをご存知でしょうか。
この記事では、皮膚科専門医が医学論文や専門医の見解を深く掘り下げ、一般には知られていない「くり抜き法」の意外な真実を5つのポイントで明らかにします。

粉瘤の「くり抜き法」による手術を検討されている患者様は是非最後まで読んでいただき、本当に「くり抜き法」でよいのか、もう一度考えてみてください。

監修者:花房崇明

監修者
理事長:花房崇明(はなふさ たかあき)

[ 資 格 ]

・医学博士(大阪大学大学院)
・日本皮膚科学会皮膚科専門医
・日本アレルギー学会アレルギー専門医
・日本抗加齢医学会専門医
・難病指定医

[ 所属学会 ]

・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会
・日本小児皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
・日本美容皮膚科学会

 

 

1. 「最新の治療法」はウソ? 実は約40年前に報告された手術法だった

多くのクリニックが「最新の手術法」と宣伝するくり抜き法ですが、その原型となる技術が初めて医学雑誌に報告されたのは、実は約40年も前のことなのです。

この手術方法は元々は「へそ抜き法」と呼ばれ、1988年に「皮膚科の臨床」誌にて報告されました。論文の内容を読むと、この方法は皮膚科医が多忙な外来診療の中で、赤く痛み、時に感染を起こした「炎症性粉瘤」に対して手軽に行える処置として考案された「工夫」でした。

当時の目的は完全な摘出ではなく、あくまで応急処置的な側面が強く、論文にも「完全に摘出する必要はない」と記されています。
つまり、当初は万能な解決策ではなく、炎症を緩和させる「対症療法」として生まれた手術だったのです。

 

2. 傷跡が小さい=キレイとは限らない

くり抜き法の最大の魅力は「傷跡の小ささ」です。しかし、皮膚の専門家の視点から見ると、必ずしも「小さい=キレイ」とは限りません。

皮膚科・形成外科専門医がシワの方向に沿って行う従来の「紡錘形切開」は、最終的に細い一本の線状になり、時間とともにシワに紛れて目立ちにくくなります。一方、くり抜き法による円形の傷跡は、小さくても「不自然に丸い瘢痕」として残ったり、凹んだりするリスクがあります。

紡錘形切開法(標準治療)

アテローマ治療法(切除)

くりぬき法

アテローマ治療法(くりぬき法)

【審美的なデメリット】

  • 粉瘤上部の皮膚が過剰に薄くなり、不自然な凹みやシワの原因になる。
  • 縫合時に皮膚が余り、「ドッグイヤー」と呼ばれる不自然な盛り上がりが生じる。
  • 1cm程度の粉瘤なら、標準治療でも傷跡は十分に小さく、くり抜き法のメリットが薄い。

3. 「くり抜き法」は再発率が高い? 語られないデメリット

くり抜き法の構造的な欠点は、小さな穴から処置するため「粉瘤の袋(壁)の一部を取り残しやすい」ことです。視野が確保しづらい穴からの作業は非常に難易度が高く、再発のリスクが決して低くありません。

特に、一度でも炎症を起こした粉瘤は周囲と癒着しているため、袋を完全に抜き取るのは困難です。実際に、2019年の論文報告では衝撃的なデータが示されています。

【再発に関するデータ】
くり抜き法による3年間の再発率は12%にのぼり、特に直径2cm以上の粉瘤では16%まで上昇したと報告されています。
(出典:日臨皮会誌 36(5), 2019)

患者様が別のクリニックで再発治療を受けるケースも多いため、宣伝されている再発率は実際よりも低く見積もられている可能性に注意が必要です。

 

4. 「誰でもできる」からこそ医師選びが重要

くり抜き法が広まった背景には、「デルマパンチ」という器具を使えば比較的容易に施行できるという側面があります。
しかし、大阪大学形成外科医局出身者が多く在籍する当グループの専門医の間で、初手として「くり抜き法」を勧める医師はほとんどいません。

なぜ標準治療(紡錘形切開)を選ぶのか?

それは、トレーニングを積んだ専門医が「確実な摘出による再発ゼロ」「傷跡の美しさ」の両立を追求しているからです。

「くり抜き法一択」と思い込まず、患者様個別の状態に合わせて最適な術式を提案・実行できる医師を選ぶことが、後悔しないための判断基準となります。

 

5. 実は医学的な裏付け(学会・論文発表)が異常に少ない

驚くべきことに、くり抜き法を支持する質の高い医学論文はほとんど存在しません。特に一部のクリニックが宣伝する「巨大な粉瘤(4〜5cm)にも有効」という主張に対する大規模な検証データは見当たりません。

リスクを十分に説明されず、手術後にすぐ再発して悲しい思いをするのは患者様本人です。
「最新」という言葉に惑わされず、メリットとデメリットのバランスを正しく理解していただく必要があります。

 

6. まとめ:最適な術式を選択するために

くり抜き法は、決して万能な手術方法ではありません。
傷を小さくできる可能性はありますが、再発リスク仕上がりの不自然さを考慮し、総合的に判断することが不可欠です。

【納得のいく治療のために】

傷の小ささだけでなく、「再発しないこと」を重視する。

専門医からメリット・デメリットの両面を詳しく聞く。

粉瘤の状態(サイズ、炎症の有無)に合わせた術式を選ぶ。

 

「くり抜き法」か標準的な「紡錘形切除」か判断に悩む場合は、まずは当グループの形成外科外来を受診ください。患者様の希望を第一に、最適な治療法をご提案させていただきます。

 

動画でも詳しく解説しています。

 

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