アトピー性皮膚炎とは
生後2〜3か月頃から顔に始まり、徐々に肘・ひざの内側、体に治りにくいかゆい湿疹ができて、慢性に長期間続きます。
アトピー性皮膚炎は、原因は解明されていませんが、遺伝的な体質(バリア機能の低下、アレルギー体質)と、環境要因(乾燥、引っ掻くなど)の2つが合わさることで発症します。日本人では約10人に1人がアトピー性皮膚炎を持っているというデータがあります。子供の頃にしっかりと皮膚科専門医の適切な治療を受けることで、重症化を防いだり、子供のうちに完治させることが可能な病気です。
アトピー性皮膚炎の診断基準
1)痒み
2)特徴的な左右対称性の湿疹病変(乳児なら顔、小児なら関節、成人なら上半身)
3)繰り返す経過(1歳未満の乳児なら2ヶ月以上、1歳以上では6ヶ月以上)
治療法
アトピー性皮膚炎はかゆみや湿疹をまず抑える事が重要です。ステロイド外用と保湿剤が基本となります。
ステロイドの塗り薬は悪いときだけ塗る(これをリアクティブ療法と言います)ではなく、徐々に塗る回数を減らし、塗る間隔を空けていく、あるいは強いステロイドを弱いステロイドに置き換えていき、最終的には予防的に週1,2度塗る(これをプロアクティブ療法と言います)ことで、上手にコントロールしていくことを目標にします。
かゆくて引っ掻くとアトピーが悪くなり、さらにかゆくなって引っ掻くという、悪循環(これをitch【かゆい】-scratch【引っ掻く】サイクルと言います)を抑えるために、補助的にかゆみ止め(抗アレルギー剤)を飲みます。処方された薬をしっかり塗り、正しいスキンケアを心掛け、お薬が無くなってからではなく、無くなる前に定期的に通院しましょう!
免疫抑制剤の塗り薬(タクロリムス軟膏)や飲み薬(シクロスポリン)を使って治療することもあります。
- 当院では、ステロイドを全く使わない治療、いわゆる脱ステロイド療法は行っておりません。
当院では、デュピリムマブ・シクロスポリン・バリシチニブを含む重症アトピー性皮膚炎の治療を行っていますが、下記の注意点をよくお読みいただき、受診してください。
- デュピリムマブ・バリシチニブによる治療は当院で6ヶ月以上デュピリムマブ以外でのアトピーの標準治療を行った場合に導入を検討します。
- 紹介状が無い場合、当院では初診時からいきなりデュピリムマブ・バリシチニブの投与は行っておりません。ステロイド外用などデュピリムマブ・バリシチニブ以外のアトピー性皮膚炎の標準治療(脱ステロイド療法は標準治療ではありません)を6ヶ月以上当院で行ってから、必要に応じて注射・処方を検討します。
- 他院様ですでにデュピリムマブ・バリシチニブを投与されていて、紹介状を持参された場合、デュピリムマブ・バリシチニブの継続治療は必要に応じて注射・処方を検討します。
アトピー性皮膚炎の黒ずみ(炎症後色素沈着)・赤ら顔(毛細血管拡張)の治療について
アトピー性皮膚炎の黒ずみ(炎症後色素沈着)
アトピー性皮膚炎では慢性的に皮膚に炎症があるので、炎症で活性化したメラノサイトがシミの元の色素である茶色から黒色のメラニンを過剰に産生してしまい、皮膚が茶色くなってしまいます。医学的には「炎症後色素沈着」と呼ばれます。子供の頃のアトピーの跡がずっと茶色いのもこれに当てはまります。
当院では茶色から黒色をターゲットにした治療をピコシュアーによるピコトーニングによって治療します。1ヶ月に一度、5回程度のレーザー照射を目安に治療します。この治療は保険診療ではなく、自費診療になります。
- かゆみがあるなど、アトピーの炎症が残っている場合はピコトーニングによる治療は、炎症を悪化させる可能性があるため、レーザー照射はできません。
アトピー性皮膚炎の赤ら顔・血管拡張
長い間ステロイドの塗り薬を患部に塗ることで、毛細血管が拡張してしまい、赤ら顔になったり、肘の内側などにチリメンのような細い血管が浮き出てしまうことがあります。またアトピーの炎症が長期間続くことで、赤ら顔になってしまうことがあります。
当院ではヘモグロビンの赤色をターゲットにしたレーザー治療をVビームプリマで行っています。1ヶ月に一度、5回程度のレーザー照射を目安に治療します。この治療は保険診療ではなく、自費診療になります。
- かゆみがあるなど、アトピーの炎症が残っている場合はVビームプリマによる治療は、炎症を悪化させる可能性があるため、レーザー照射はできません。
注意点
スキンケア
お風呂の温度はぬるめにし、石けんは控えめにし、体は低刺激の石けんをしっかり泡立てて、手でやさしく洗いましょう。肌の乾燥はアトピー性皮膚炎を悪化させます。塗り薬は毎日2回塗りましょう。爪を切り清潔にして、引っ掻かないようにしましょう。髪は束ねるなどして顔に触れないようにしましょう。汗をかいたら放置せず、濡れたやわらかいタオルで拭くかシャワーで洗い流しましょう。
環境
こまめな部屋の換気と掃除機がけをこころがけ、ダニやホコリに注意しましょう。湿度は50〜60%が理想です。
ストレス
睡眠不足や過度な飲酒などのストレスはアトピー性皮膚炎に影響を与えます。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。上記の3つの注意点のうち、まずはできることから始めましょう。