ワキ汗(原発性腋窩多汗症)とは
ワキ汗(原発性腋窩多汗症)は、気温や緊張の有無に関わらず腋窩に大量のエクリン汗腺からの発汗を生じ、グレーの服が着られないなど、衣服の選択が制限されたり、頻繁に服を着替えたり、頻回のシャワーが必要になるなど、患者さんの日常生活に支障をきたす疾患です。また、ワキ汗を恥ずかしいと感じ、精神的な苦痛を受ける患者さんも多く、対人関係に支障をきたしたり、QOL(quality of life, 生活の質を低下させることも明らかになっています。日本におけるワキ汗(原発性腋窩多汗症)の有病率は5.75%とも言われています。
- 左右対称性に下着やシャツにしみができるほど多汗がみられ、時に1日のうち何回も取り替える必要があるほどの症状もみられる。
- ワキ汗(原発性腋窩多汗症)は精神性発汗(緊張したら大量に発汗する)と温熱性発汗(体温が上がると大量に発汗する)が共存する。
- 掌蹠(手の平、足の裏)の多汗を伴っていることもある。
- 制服を着用するような職業や対人関係に関わるような職業など、社会活動や精神活動に悪影響を及ぼす事もある。
【ワキ汗(原発性腋窩多汗症)の診断基準】
ワキ汗(原発性腋窩多汗症)の診断基準としては、腋窩(ワキ)に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ,以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合をワキ汗(原発性腋窩多汗症)と診断します。
- 1) 最初に症状がでるのが25歳以下であること
- 2) 対称性に発汗がみられること
- 3) 睡眠中は発汗が止まっていること
- 4) 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 5) 家族歴がみられること
- 6) それらによって日常生活に支障をきたすこと
これらの2項目以上を満たす症例や幼小児例では家族からの指摘などを参考にして、それぞれ発汗検査を行って診断を確定します。
【原発性局所多汗症の重症度分類:HDSS(Hyperhidrosis disease severity scale)】
- ① 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- ② 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- ③ 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- ④ 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
【ワキ汗(原発性腋窩多汗症)の治療】
塗り薬
- 塩化アルミニウム製剤(健康保険適応外):汗の内容物であるPAS陽性のムコ多糖類と塩化アルミニウムが凝集塊を作り汗の孔(汗孔)を塞ぐことで発汗を抑えます。
- ソフピロニウム臭化物ゲル(健康保険適応):抗コリン作動性グリコピロニウム臭化物の構造類似体であり、外用部位のエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を介したコリン作動性反応を阻害し、発汗を抑制します。
- グリコピロニウムトシル酸塩水和物ワイプ剤(健康保険適応):ソフピロニウム臭化物ゲルと同様にM3を介したコリン作動性反応を阻害し、発汗を抑制します。
飲み薬
プロパンテリン臭化物(健康保険適応):抗コリン作用により、発汗を抑えます。閉塞性隅角緑内障、前立腺肥大、重篤な心疾患、麻痺性腸閉塞がある人は内服することはできません。また抗コリン作用による眼の調節障害、口渇、便秘、排尿障害等が現れることがあり、車の運転などは禁止されています。
局所注射
ボツリヌストキシン注射
当院では自費診療としてボツリヌストキシン注射の治療をしております。
マイクロ波による治療
ミラドライ
当院では自費診療としてミラドライ治療をしております。ミラドライは肌にメスを入れずに、半永久的な治療効果を発揮する、新しい治療方法です。