ビダル苔癬(ヴィダール苔癬、Vidal苔癬、慢性単純性苔癬)とは
ビダル(Vidal)苔癬とは、慢性湿疹の一種です。
湿疹のなかでも症状が長く続くものを慢性湿疹とよび、そのなかでも共通した特徴を持つものをビダル苔癬と言います。この病気は慢性単純性苔癬や神経皮膚炎呼ばれることもあります。
この病気は中高年以降で首の後ろ側(項部)やわき(腋窩)、陰部などで症状をきたします。とくに女性で発症することが多いです。慢性湿疹の一種であり、症状も長く続いていることが一般的です。
長い期間にわたって皮膚が炎症を繰り返すことで、皮膚が分厚く硬くなってしまいます。このように分厚くなった皮膚のことを「苔癬化」とよび、ビダル苔癬で典型的な症状です。苔癬化を生じた皮膚では、皮膚がゴワゴワとしてシワが目立ち、象の皮膚のような外観となります。
湿疹では通常皮膚は赤い状態となりますが、ビダル苔癬では炎症を繰り返すことで皮膚に色素沈着が生じてしまったり、逆に色が抜ける色素脱失を伴うことがあります。またビダル苔癬では痒みが非常に強いことも特徴です。
ビダル苔癬の原因
ビダル苔癬の原因として、特定のものは明らかになっていませんが、アトピー性皮膚炎の人に多いです。髪の毛や衣服、シャンプー・リンスによる刺激、金属アレルギーなどが原因として考えられています。また痒みから皮膚を引っ掻くことが刺激となり、より一層皮膚症状が悪化してしまうという悪循環(itch(かゆい)-scratch(引っ掻く)サイクル)に陥っている場合も見られます。
なお神経皮膚炎という別名があるとおり、ビダル苔癬では通常の方よりも痒みを過敏に感じやすい状態になっているとも考えられています。
ビダル苔癬の治療
ビダル苔癬の治療としてはステロイド外用薬の使用が基本となります。ステロイド外用薬には炎症を抑え、皮膚の痒みを和らげる効果が期待できます。ビダル苔癬のように長期間の炎症を繰り返した結果生じる疾患では、比較的強めのステロイド外用薬(very strongクラスを用いることが多いです)をしっかりと比較的長期間使う必要があります。
ステロイド外用薬と聞くと副作用を心配される方もいらっしゃるでしょう。部位や症状に応じて適切な強さのステロイド外用薬を使用することが副作用を抑えるためには大切ですので、医師の指示に従って適切な使用を心がけてください。
まずは強めのステロイドを塗り、症状が落ち着いてきたら弱いステロイドに切り替えたり、アトピーの患者さんであれば、アトピーの患者さんに用いるようなデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏®)、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏®)、ジファラミスト軟膏(モイゼルト軟膏®)などに切り替えることもあります。
とくにビダル苔癬では皮膚が分厚くなる苔癬化をきたすことが多く、この場合は軟膏など一般的なタイプの外用薬よりも、貼るタイプの薬が用いられることもあります。
そのほかの治療としては、痒みを抑える作用のある抗ヒスタミン薬の内服治療が併用して行われることが多いです。
衣服による刺激などが原因となることが多いためこの原因を取り除く(たとえば首であればタートルネックを避けるなど)ことも有効です。また触ることがクセになってしまい、症状が長引く患者さんもいます。爪は短く切る、体を洗う時にこすりすぎないなど皮膚をいたわってあげることも心がけましょう。
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